記事・レポート

伊藤穰一:逸脱からはじまる「学び」の実践

MIT Media Lab CREATIVE TALK「Learning Creative Learning」より

キャリア・人グローバル
更新日 : 2013年07月29日 (月)

第5章 新たな学びを生むオンライン・コミュニティ

伊藤穰一(MIT(米マサチューセッツ工科大学)メディアラボ所長)

 
Learning Creative Learning

伊藤穰一: 現代のネット上には、互いに教え合い、学び合うコミュニティが無数に存在しています。特に高等教育の分野では、大学の講義をネット上で無償公開するOCW(Open Course Wear)、無償のオンライン講座を提供するMOOC(Massive Open Online Course)などが注目を集めています。

こうした流れから生まれたのが、P2PU(Peer to Peer University)。ウェブ上に双方向性を持った無料の大学をつくろうというプロジェクトです。オンライン学習用に作成されたシラバスをもとに、受講者同士がネット上でコミュニティをつくり、課題やプロジェクトについて共同で学習を進めていくものです。先生がいなくても、個人対個人で大学レベルの教育を学び合う場となっています。

MITメディアラボではこのほど、P2PUを立ち上げたラボの卒業生フィリップ・シュミット氏と一緒に「Learning Creative Learning」をスタートさせました。これは、時間や国境にとらわれない、万人による、万人のための学びの場です。誰もが先生になり、生徒になる。ときには共同研究者になることもあります。

純粋に学びたい人たちがいる

伊藤穰一: 世界に向けてスタートを宣言したところ、1万以上の人々が参加してくれました。ここでは単位は提供していません。学位をとるための試験もありません。人々は単位や学位を目的に参加しているのではなく、子どもと同じように純粋に何かを学びたいと思い、参加しているのです。純粋に学びだけを求めている人は、確かに存在している。1万人という数字は、そのことを証明していると思うのです。

実際の講義の様子はYouTubeやUstreamで提供しており、並行してチャットも行っています。講義を始めると、世界中の人々から書き込みが行われますが、その中に「講義の映像を見ていたけれど、途中からチャットのほうが楽しくなり、映像に集中できなかった」というコメントがありました。実は、ここには重要な示唆があります。

講義の映像はどちらかと言えば受動的なもので、いつでも見ることができます。チャットはリアルタイムで、かつ自分が主体的に参加するものであり、双方向性もある。つまり、講義の映像とチャットには、まったく別の学びがある。私たちが学びの場を用意したことで、そこに集まる人々の間に別の学びが生まれているわけです。

Learning Creative LearningはMITメディアラボによる、新しい学び方の実験です。人々の興味を刺激し、コラボレートさせることで、どのような新しい学びが生まれるのか。まだ始まったばかりですが、今後はまったく想像できないことが起こるような気がしています。

該当講座

Learning Creative Learning

~MITメディアラボで実践している「学び」への挑戦~

Learning Creative Learning
伊藤穰一 (MIT(米マサチューセッツ工科大学)メディアラボ所長)

伊藤 穰一(MITメディアラボ所長)
MITメディアラボとアカデミーヒルズがコラボレーションしてお届けする"CREATIVE TALK" シリーズ第1回は、MITメディアラボ所長の伊藤穰一(Joi Ito)氏をお招きして、MITメディアラボの"Learning Creative Learning"プログラムを題材に、「教わる」から「学ぶ」をどう実践していくかについて考えます。


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