記事・レポート
グローバル・アジェンダ・シリーズ
2人の起業家に学ぶブレークスルーを生み出す力
個人の思いとつながりから始まる21世紀の地球貢献
ビジネススキルキャリア・人政治・経済・国際グローバル
更新日 : 2013年06月21日
(金)
第9章 ソーシャルビジネスの実際

会場からの質問: ソーシャルビジネスの目的の中には、人々の経済的な自立も含まれると思います。最初に援助金をつけた形から、徐々にビジネス化して自立を促していく。コペルニクにもそうしたビジョンはあるのでしょうか?
中村俊裕: もちろん、その形は当初から目指しているものです。実は最近、うれしい事例がありました。ジャワ島の東にある村で、携帯型浄水ストローを普及させるプロジェクトを行っていました。最初は貧困層の人でも買えるよう、定価の7割くらいの価格で販売しました。その後、2年ぐらいかけて徐々に値段を上げていき、最後は市場価格と同じになりました。その間、私たちも色々な形でジョブトレーニングをしていて、最終的に現地の女性たちが小さいながらも会社を設立しました。私たちが離れた今でもうまく回っています。ビジネスや雇用の創出という意味でも、こうしたケースをもっと増やしていきたいと思っています。
ただし、全部のケースで同様のことができるわけではありません。値段を上げたら、結局はお金を持っている人しか買わなくなったというケースもあるので、このあたりのバランスの判断は非常に難しいですね。
会場からの質問: お二人のビジョンを社会に広げていくための今後の展望や抱負があればお伺いしたいのですが。
中村俊裕: まずは、コペルニクという活動できちんと成果を出していくことが最重要だと思います。我々の分野は貧困削減ですが、具体的にどれほど成果が出ているのか、他と比べてどれほど効率的なのか。そのデータを集めて、社会に一つひとつ証明していく。それを繰り返していけば、おのずと世の中のシステムや潮流も、私たちが思い描いている方向に進んでいくと考えています。
大澤亮: 私が日本で活動していて感じるのは、何でもかんでもリスクだと捉えてしまう社会的な空気があり、結果的に起業家が育たなくなっているということ。例えば欧米のように、ある程度のリスクを許容してくれる社会を日本でも実現できるよう、そのための教育やサポート体制が広がっていってほしいと思います。私も、起業を恐れるような風潮が少しでもなくなるように頑張りたいと思います。
また、私としては「チャリティだから買ってください」という営業・販売の仕方は絶対にしたくないのです。一流のデザイナーがこだわり抜いて作った商品を購入して喜んでいただく、その傍らにチャリティもある、というスタンスを大切にしています。Piece to Peaceの事業は、常に新しい消費のあり方、楽しくワクワクするような地球貢献のあり方を提案するものでありたいと考えています。
石倉洋子: お話を伺い、社会的課題を解決する方法は本当に多様になったと感じました。最も印象に残ったのは、自分がやりたいことを人にどんどん話すということ。いかに多くの人に話して、そこからネットワークを広げていくか。つまり、自分のストーリーを語り続ければ、人のつながりが増えていく。その中から、自分たちが見えていなかったリソースが見えはじめ、やがてブレークスルーが生まれていく。自身の経験の積み重ねと、つながりの積み重ね、それが新たな枠組みを生み出す原動力になるということですね。(了)
<気づきポイント>
●起業のコツは、とにかくできる範囲のことから始めてみること
●個人と個人の思いをつなげるのが、21世紀の地球貢献のカタチ
●ストーリーを語り続ければ、つながりとブレークスルーが生まれる
●個人と個人の思いをつなげるのが、21世紀の地球貢献のカタチ
●ストーリーを語り続ければ、つながりとブレークスルーが生まれる
グローバル・アジェンダ・シリーズ
2人の起業家に学ぶブレークスルーを生み出す力 インデックス
-
第1章 国連の中で感じた途上国支援の限界
2013年06月03日 (月)
-
第2章 ラストマイルにテクノロジーを届けたい
2013年06月05日 (水)
-
第3章 企業と現地のニーズを踏まえたビジネスモデルづくり
2013年06月07日 (金)
-
第4章 原点はタンザニアで覚えた違和感
2013年06月10日 (月)
-
第5章 ファッションを通じて世界と個人をつなぐ
2013年06月12日 (水)
-
第6章 新しいビジネスを生み出すためのステップ
2013年06月14日 (金)
-
第7章 起業に求められるものとは? —パネルディスカッション—
2013年06月17日 (月)
-
第8章 思いを語り続けることが広がりとつながりを生む
2013年06月19日 (水)
-
第9章 ソーシャルビジネスの実際
2013年06月21日 (金)
該当講座
2人の起業家に学ぶブレークスルーを生み出す力
~既存の枠組みから飛び出し、たどり着いた地球貢献のかたち~
中村 俊裕(米国NPOコペルニク共同創業者・CEO)
大澤 亮(㈱Piece to Peace代表)
石倉 洋子(慶應義塾大学大学院教授)
今回のセミナーでは、過去に伝統的な途上国支援の現場に携わり、そこからブレークスルーを生み出した2人の若き起業家にゲストとしてお越しいただきます。BOPビジネスに熱い視線を送る日本企業との関係や、グローバル人材育成、ファッション大国の日本ができること等にも触れながら、2人のスピーカーを通じて既存の枠組みを超えて活動するために必要な力について考えます。
グローバル・アジェンダ
政治・経済・国際 キャリア・人 ビジネススキル

注目の記事
-
11月21日 (火) 更新
六本木アートカレッジ
2022-2023年の六本木アートカレッジ <未来を拡張するゲームチェンジャー>」では、新しい価値を生み出す5名のゲストを招き、トークイベン....
<未来を拡張するゲームチェンジャー>イベントレポート
-
11月21日 (火) 更新
動的書房 ~生物学者・福岡伸一の書棚
目利きの読み手でもある生物学者の福岡伸一が、六本木ヒルズライブラリーのために、特別に選んだ“これだけは読んでおきたい本”“ いま読むべき本”....
-
11月21日 (火) 更新
もっとも書物らしい書物—西洋中世写本の魅力に触れる書籍案内
今回は「もっとも書物らしい書物—西洋中世写本の魅力に触れる書籍案内」と題し、手書きから印刷、そしてデジタルへと変遷してきた「書物」の歴史を辿....
現在募集中のイベント
-
開催日 : 12月13日 (水) 19:30~21:00
World Report 第6回 アメリカ発 by 渡邊裕子
いま世界の現場で何が起きているのかを、海外在住の日本人ジャーナリスト、起業家、活動家の視点を通して解説し、そこから何が見えるのかを参加者の皆....
「投開票まであと1年!米国大統領選挙を読み解く」
-
開催日 : 12月06日 (水) 18:30~20:00
シリーズ「編集者の視点〜時代を共に創る〜」
本の背景にあるストーリーから仕事のエッセンスを学ぶ「編集者の視点」シリーズ。第5回ゲストは、日本の翻訳出版界のマーケットシェア60%を占める....
第5回 世界とつながる共通言語を求めて
-
開催日 : 12月08日 (金) 18:30~20:00 読書体験会 第3回 / 09月13日 (水) 18:00~19:30 トークイベント ※終了いたしました / 10月18日 (水) 18:30~20:00 読書体験会 第1回 ※終了いたしました / 11月13日 (月) 18:30~20:00 読書体験会 第2回 ※終了いたしました
『スマホ時代の哲学』読書体験会
スマホ時代の課題を哲学の視点を使って考えていく本書『スマホ時代の哲学〜失われた孤独をめぐる冒険〜』。著者の哲学者・谷川嘉浩さんと、人材・組織....