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「はやぶさ」の川口淳一郎氏が語る、奇跡のチームビルディング

栄光をつかんだチームに日本再生のヒントを探る in 日本元気塾

日本元気塾キャリア・人教養
更新日 : 2011年08月22日 (月)

第6章 「はやぶさ」にふるさと地球の姿を見せてやりたい

「はやぶさ」の川口淳一郎氏が語る、奇跡のチームビルディング 会場の様子

川口淳一郎: 地球への帰還を2カ月後に控えたとき、JAXAの特設ページに『「はやぶさ」、そうまでして君は。』という文章を書きました。そこに寄せた思いは、『「はやぶさ」はイオンエンジンが止まったとき、「帰るのは嫌だ」と言ったのではないか」というものでした。

カプセルを地球に投下するためには、「はやぶさ」は大気圏への再突入軌道に入らねばなりません。もしロケットエンジンの燃料が残っていたら、カプセルを分離した後、再突入軌道から脱出して飛行を延長できました。しかし、行方不明になった「はやぶさ」を我々が救出したときには、既に燃料はなくなっていたので、そのときから「はやぶさ」の運命は決まっていたのです。イオンエンジンが停止したのは、「はやぶさ」が大気圏に再突入して燃え尽きるのを嫌がったからではないか——そう思ったのです。

でも、最終的には「はやぶさ」は運命を受け入れて、我々の指令に応えてエンジンを動かしてくれました。複雑な気持ちでしたが、カプセルを地球に戻すことが「はやぶさ」自身にとっても最良の道だと、みんなで気持ちを切り替えて運用しました。

2010年6月13日、「はやぶさ」はカプセルを分離。母船「はやぶさ」の運用は、もう必要ありません。しかし母船「はやぶさ」の大気圏突入までには2時間余り残されていました。我々プロジェクトチームは残された時間内で、「はやぶさ」にふるさと地球を見せてやろうと決めていました。けれど、4年の予定が7年に延びた飛行で太陽電池はボロボロ、節電のためにヒーターを切っていましたからカメラは氷漬け。なかなかうまく撮れません。本当に最後の1枚で、あの、一部かすれた地球の写真が撮れたのです。文字通りのラストショットでした。

NASAの飛行機から大気圏再突入の様子を写した写真には、順調に大気圏に突入しているカプセルと、その後ろに爆発してバラバラになっていく「はやぶさ」の姿がありました。「はやぶさ」はその身を挺してカプセルを守り、自らはふるさと地球の空に輝いて散っていったのです。「まほろばに 身を挺してや 宙繚(そらまと)う 産(うぶ)の形見に 未来必ず」——得られた成果は必ず次のミッションに活かしてやると心に決めました。

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関連書籍

はやぶさ、そうまでして君は—生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話

川口淳一
宝島社


該当講座

小惑星探査機「はやぶさ」奇跡のチームビルディング
川口淳一郎  (独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 月・惑星探査プログラムグループ プログラムディレクタ 宇宙科学研究所 教授)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

川口淳一郎(JAXA)教授×米倉誠一郎教授 
2010年6月、小惑星探査機「はやぶさ」が「イトカワ」への7年間の旅を終えて奇跡の帰還—。今年最初の日本元気塾セミナーは、「はやぶさ」プロジェクトマネージャとしてミッションを指揮し、類稀なるリーダーシップ、的確な判断力で、奇跡の帰還に導いた川口淳一郎氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授)をゲストにお迎えし、ミッション達成のために目指すべき、理想的な“チーム”の姿を、皆さんと一緒に考えていきます。


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