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「はやぶさ」の川口淳一郎氏が語る、奇跡のチームビルディング

栄光をつかんだチームに日本再生のヒントを探る in 日本元気塾

日本元気塾キャリア・人教養
更新日 : 2011年08月16日 (火)

第3章 共同研究中にNASAにアイディアを盗られ、発想を切り替えた

川口淳一郎氏

川口淳一郎: 「はやぶさ」の構想が立ち上がったのは今(2011年)から26年前、1985年のことです。この年、「小惑星サンプルリターン小研究会」が開かれました。米ソがさんざん探査機を送った火星や金星に、我々が小さな探査機を打ちあげたところで一体何が得られるか疑問だということで、我々はオリジナルな成果にこだわり、地球の起源の手がかりになる小惑星に着目したのです。

しかし、当時はロケットエンジンしかありませんでしたので、燃費が悪く、とても実用になるものを設計することはできませんでした。そこで「はやぶさ」よりも3段階ぐらい簡単な「小惑星ランデブー計画」を立ち上げました。これは小惑星に接近して観測するだけですので、着陸するわけではないので高い自律性は要りません。往復するわけでもないのでイオンエンジンも要りません。試料のカプセルを大気圏に再突入させるわけでもありません。

しかし「小惑星ランデブー計画」は、NASAにアイディアをとられるという結果に終わってしまいました。我々は経験不足を補うために、NASAと一緒に勉強会を開いて経験を教えてもらおうとしたのですが、途中でNASAがこれを自分たちの計画として立ち上げてしまったのです。

NASAにアイディアをとられてしまい、どうしたら自分たちの計画ができるか悩みました。そして、自分たちのオリジナル計画にこだわるためには、「NASAもためらう計画をやらなければならない」と思ったのです。いわば開き直り、やぶれかぶれ、はったりで始めたのが「はやぶさ(MUSES-C=ミューゼス・シー)計画」でした。

ちなみに、イトカワに「はやぶさ」が着地できる場所の幅は40mぐらいしかありませんでした。40mというのは実に狭いんです。往復の通信に2,000秒かかりますから、仮に毎秒1cm違うと、電波が往復している間に±20mずれてしまいます。ですから「はやぶさ」が着地できたということは、「横方向の速度の管理精度が1cm/秒あった」という証拠です。今後、諸外国が「はやぶさ」の後を追ってくるかもしれませんが、一番苦労するのは多分この横方向の管理精度です。NASAからは「このとき使った一連の画像を提供してくれ」と言われていますが、絶対に渡しません(笑)。

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関連書籍

はやぶさ、そうまでして君は—生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話

川口淳一
宝島社


該当講座

小惑星探査機「はやぶさ」奇跡のチームビルディング
川口淳一郎  (独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 月・惑星探査プログラムグループ プログラムディレクタ 宇宙科学研究所 教授)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

川口淳一郎(JAXA)教授×米倉誠一郎教授 
2010年6月、小惑星探査機「はやぶさ」が「イトカワ」への7年間の旅を終えて奇跡の帰還—。今年最初の日本元気塾セミナーは、「はやぶさ」プロジェクトマネージャとしてミッションを指揮し、類稀なるリーダーシップ、的確な判断力で、奇跡の帰還に導いた川口淳一郎氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授)をゲストにお迎えし、ミッション達成のために目指すべき、理想的な“チーム”の姿を、皆さんと一緒に考えていきます。


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