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「はやぶさ」の川口淳一郎氏が語る、奇跡のチームビルディング

栄光をつかんだチームに日本再生のヒントを探る in 日本元気塾

日本元気塾キャリア・人教養
更新日 : 2011年08月25日 (木)

第8章 マトリクス組織のメリットとデメリット

米倉誠一郎氏(左)川口淳一郎氏(右)

米倉誠一郎: トラブルを解決するために、全部オープンにして「臨機応変のプロジェクト対応をした」とおっしゃっていましたね。

川口淳一郎: はい、やはりプロジェクトとしては、いろいろな人が積極的に提案できる雰囲気をつくらなければいけませんから。「誰の発言でも、いい意見は反映する」ということを実際に示すために、運用会議ではそういう意見を積極的に採用するようにしました。

米倉誠一郎: 「俺は機械だから、あんまり化学のことに口出ししちゃいけないかな」とかいう垣根を超えて、どんどん言ってくれと。

川口淳一郎: そういうことです。実際、追跡担当の人がイオンエンジンの運転について意見を言うこともありました。

米倉誠一郎: 著書『はやぶさ、そうまでして君は』の中で、マトリクス組織はいいと書いていらっしゃいますね。僕もマトリクス組織はいいと思うんです。けれど、例えば企業でアジア担当が「今年はマーケティングに力を入れたい」と言っても、ヨーロッパ担当が「いや、マーケティングより研究開発だ」というように、2つの分野がぶつかるようなマトリクス組織は運営しにくいと言われています。宇宙開発にとって、マトリクス組織のいい点というのはどこですか?

川口淳一郎: マトリクス型というのは、プロジェクトに特化した人はあまり多くはいないけれど——例が挙がったのでマーケティングでお話ししますが——マーケティング担当が複数のプロジェクトを持つんですね。これのどこがいいのかというと、マーケティング担当者同士で情報共有できることです。すると、あるプロジェクトで問題が発生しても、別のプロジェクトで似たような問題を解決した例があるかもしれない、そうした情報を共有することができるわけです。

プロジェクトチームが縦割りになってしまうと、そこから出て行かなくなります。すると、ほかのプロジェクトの情報が聞こえてこなくなって、解決策もそのプロジェクトの中だけで考えるようになってしまうんです。

米倉誠一郎: これは我々のキャリアプランでも大事なことですね。「T型人間」として、プロフェッショナルな縦軸を1本持つと同時に、横軸を多様に持っていなければいけない。横軸だけだと「○○会社の米倉です」というように、会社の名前でしか生きていけない。「私はマーケティングのプロです。どこの会社でも行けます」というのがいい。

いろいろな情報を持っていて、いろいろな部門のことを知っている、そういう組織をつくらないとプロジェクトはうまくいかないですね。

川口淳一郎: そう思います。けれど、マトリクスにはマトリクスの欠点がありますね。プロジェクト単位で見たとき、責任の所在が不明確になりがちです。ですから参加する人がきちんとモチベーションを持っていないと、なかなか維持できません。

米倉誠一郎: やはりゴール共有が大事だということですか?

川口淳一郎: そうだと思います。チームのベクトルをそろえることに労力を使ってしまっては、肝心なプロジェクトができなくなってしまいますから。

米倉誠一郎: なるほど。マトリクス組織というのは分野のプロを呼んでくるわけだから、個々の責任の所在は、例えば「俺のボスはマーケティング部長であって、川口さんじゃないよ」となってしまいがち。でもゴールをそろえておけば、「俺はここを優勝させるために来たプロフェッショナルなんだから」となる。これは結構大事ですね。

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関連書籍

はやぶさ、そうまでして君は—生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話

川口淳一
宝島社


該当講座

小惑星探査機「はやぶさ」奇跡のチームビルディング
川口淳一郎  (独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 月・惑星探査プログラムグループ プログラムディレクタ 宇宙科学研究所 教授)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

川口淳一郎(JAXA)教授×米倉誠一郎教授 
2010年6月、小惑星探査機「はやぶさ」が「イトカワ」への7年間の旅を終えて奇跡の帰還—。今年最初の日本元気塾セミナーは、「はやぶさ」プロジェクトマネージャとしてミッションを指揮し、類稀なるリーダーシップ、的確な判断力で、奇跡の帰還に導いた川口淳一郎氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授)をゲストにお迎えし、ミッション達成のために目指すべき、理想的な“チーム”の姿を、皆さんと一緒に考えていきます。


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