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「はやぶさ」の川口淳一郎氏が語る、奇跡のチームビルディング

栄光をつかんだチームに日本再生のヒントを探る in 日本元気塾

日本元気塾キャリア・人教養
更新日 : 2011年08月18日 (木)

第4章 困難の連続のなかで、臨機応変なプロジェクト判断ができた理由

川口淳一郎氏

川口淳一郎: イトカワへのタッチダウンは簡単ではありませんでした。タッチダウンする前に3回の降下試験をしたのですが、結果は惨憺たるもの。しかし、地球に帰還するにはタイムリミットがあったので、降下試験からわずか1週間後にはタッチダウンしなければなりませんでした。失敗は許されない、必ずやタッチダウンさせなければいけない、でもそのめどがない——。

そこでどうしたかというと、若手・ベテラン、JAXA・関連メーカーを問わず、よい意見をただちに採用するようにしました。分野を超えて意見を積極的に提案してもらえるように心がけたことで、臨機応変なプロジェクト判断ができたと思います。実際、着陸が専門だったわけではない、メーカーの中堅エンジニアの案を採用しました。この案のおかげで爆発的に処理が早くなり、精度が飛躍的に向上したのです。

しかし2回のタッチダウンを行った後、「はやぶさ」は燃料漏れを起こしました。帰りの飛行は瞬発力が全くないイオンエンジンだけで帰って来なくてはいけなくなったのです。そのうえ燃料漏れの影響で、探査機の姿勢が不安定になってソーラーパネルに光が当たらなくなってしまいました。このままでは電力がなくなってしまいます。通信も途絶え、どん底の状態だったのですが、これをさらにどん底にしたものがありました。

実はこの数日前に、JAXAは「2回目のタッチダウンで弾丸を発射して、試料採取に成功した」と発表していたのです。しかしその後、新たに読み出されたデータを見ると、弾丸を発射した記録がなかったのです。これには背筋が凍る思いでした。発表の訂正を余儀なくされました。我々を苦しめたのは、「科学技術はリスクのみで役に立たない」という印象を与えてしまい、宇宙開発のみならず科学技術全体の信用を落としかねないということでした。

このどん底状態から脱出できたのは、プロジェクトチーム全員が「『はやぶさ』のゴールは地球だ、イトカワは折り返し点だ!」ということを、打ち上げのときから共有していたからです。ですから、遙か3億kmの彼方で完全に消息を絶った探査機の救出に乗り出したのです。

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関連書籍

はやぶさ、そうまでして君は—生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話

川口淳一
宝島社


該当講座

小惑星探査機「はやぶさ」奇跡のチームビルディング
川口淳一郎  (独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 月・惑星探査プログラムグループ プログラムディレクタ 宇宙科学研究所 教授)
米倉誠一郎 (日本元気塾塾長/法政大学イノベーション・マネジメント研究科教授/ 一橋大学イノベーション研究センター名誉教授)

川口淳一郎(JAXA)教授×米倉誠一郎教授 
2010年6月、小惑星探査機「はやぶさ」が「イトカワ」への7年間の旅を終えて奇跡の帰還—。今年最初の日本元気塾セミナーは、「はやぶさ」プロジェクトマネージャとしてミッションを指揮し、類稀なるリーダーシップ、的確な判断力で、奇跡の帰還に導いた川口淳一郎氏(宇宙航空研究開発機構(JAXA)教授)をゲストにお迎えし、ミッション達成のために目指すべき、理想的な“チーム”の姿を、皆さんと一緒に考えていきます。


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