記事・レポート
東日本大震災復興チャリティーセミナー
新しいニッポンを創るために!
アカデミーヒルズセミナー政治・経済・国際文化教養
更新日 : 2011年06月02日
(木)
第1章 今こそTPP、エコタウン、道州制の実現を!
TPPの結論先送り、法人税の引き下げ見送り、復興税の導入…よかれと思ってしようとしていることが、実は自粛同様に間違った対応だとしたら?竹中平蔵・アカデミーヒルズ理事長と米倉誠一郎・日本元気塾塾長が、今本当に必要な政策と、私たち一人ひとりにできることを考えます。目から鱗の日本“新生”論です!
スピーカー:竹中平蔵 アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長
スピーカー:米倉誠一郎 日本元気塾塾長/一橋大学イノベーション研究センター長・教授

竹中平蔵: 本当に大変なことが起きました。きょうは私たち一人ひとりに何ができるのかを考えると同時に、今回の経験を踏まえて日本という社会をどのように変えていかなければいけないかという政策論を皆さんと一緒に議論したいと思っております。最初にキックオフの問題提起として、私と米倉先生のほうからお話しさせていただきます。
地震、津波、原子力、食品安全——日本が自信を持って対応していた分野が、今、危機に瀕しています。これは「複合連鎖危機」と考えて対処する必要があります。地震と津波により多くの方が犠牲になりました。それに加えて原子力発電所の問題、電力不足、計画停電による混乱などが起きました。財政措置のやり方を間違えると国債市場が暴落するかもしれません、ひょっとしたら円が暴落するかもしれません。複合連鎖危機というのはバリュー・オブ・ジャパンの危機であり、日本のバリューそのものが損なわれる可能性があるということです。
政策論に入る前に、事実を整理しておきます。50人以上の死者・不明者が出た地震を「被害地震」と呼ぶそうですが、過去210年間にこの国で発生した被害地震は34回です(※1800~2009年)。単純計算すれば、6年に一度私たちはこういう地震を経験し、それを乗り越えてきたことになります。
今回大変痛ましいことに2万を超える犠牲者が出る可能性があります。しかしその一方で、過去の大地震を乗り越えて私たちが培ってきたことによって、多くの方が命を救われた面もあったということも認識する必要があると思います。例えば、地震から3分後に出た津波警報を聞いて、すぐに山に駆け上がったために助かった私の友人がいます。震度6でも仙台の市街地は壊れませんでしたし、震度5の東京も壊れませんでした。あの地域を走っていた新幹線は緊急停止したので脱線しないですみました。また、都市ガスは各戸のマイコンメーターが地震を感知してガスを止めたので大きな火災は起こりませんでした。気仙沼で発生した火災は、津波でLPGガス施設のタンクから重油が流れて燃え上がったものだったのです。
2万人という犠牲者の数は大変痛ましいのですが、2004年に起きたスマトラ島沖地震では、20万人以上の方が亡くなっています。私たちが今までやってきたことは不十分だったかもしれませんが、それでも辛抱強く防災対策を繰り返してきたことが活かされているのです。そうした思いの上に、さらに今回、私たちは何をやるべきかを考えなければいけないのだと思います。
では、私たちは一体何をやるべきなのでしょうか。政策論として1つ申し上げたいのは、今回は「複合連鎖危機」ですので、復旧・復興、その後の改革を一体化してシームレスで行う必要があるということです。下手をするとバリュー・オブ・ジャパンが損なわれますが、例えば東北の農業を復興する際にTPP対応型の強い農業をつくることができれば、バリュー・オブ・ジャパンを高めることにもなるのです。東北の街を世界に類を見ないようなエコタウンや防災タウンにつくり変えれば、世界からうらやましがられるような地域になれます。
たくさんの市町村が打撃を受けました。その復興にあたっては、思いきって市町村合併を進めて強い財政基盤の自治体をつくる。東北を1つの道州制にして霞が関の機能を仙台に移し、道州制特区のような形で東北全体の地方組織をつくり変える。そういう構想力が求められていると思います。
それなのに菅総理は、大変な状況なので6月に出す予定だったTPPの結論を先送りすると言いました。そうではなく、TPP対応型の強い農業にして、バリュー・オブ・ジャパンを守り、高めなければならないと思います。
地震、津波、原子力、食品安全——日本が自信を持って対応していた分野が、今、危機に瀕しています。これは「複合連鎖危機」と考えて対処する必要があります。地震と津波により多くの方が犠牲になりました。それに加えて原子力発電所の問題、電力不足、計画停電による混乱などが起きました。財政措置のやり方を間違えると国債市場が暴落するかもしれません、ひょっとしたら円が暴落するかもしれません。複合連鎖危機というのはバリュー・オブ・ジャパンの危機であり、日本のバリューそのものが損なわれる可能性があるということです。
政策論に入る前に、事実を整理しておきます。50人以上の死者・不明者が出た地震を「被害地震」と呼ぶそうですが、過去210年間にこの国で発生した被害地震は34回です(※1800~2009年)。単純計算すれば、6年に一度私たちはこういう地震を経験し、それを乗り越えてきたことになります。
今回大変痛ましいことに2万を超える犠牲者が出る可能性があります。しかしその一方で、過去の大地震を乗り越えて私たちが培ってきたことによって、多くの方が命を救われた面もあったということも認識する必要があると思います。例えば、地震から3分後に出た津波警報を聞いて、すぐに山に駆け上がったために助かった私の友人がいます。震度6でも仙台の市街地は壊れませんでしたし、震度5の東京も壊れませんでした。あの地域を走っていた新幹線は緊急停止したので脱線しないですみました。また、都市ガスは各戸のマイコンメーターが地震を感知してガスを止めたので大きな火災は起こりませんでした。気仙沼で発生した火災は、津波でLPGガス施設のタンクから重油が流れて燃え上がったものだったのです。
2万人という犠牲者の数は大変痛ましいのですが、2004年に起きたスマトラ島沖地震では、20万人以上の方が亡くなっています。私たちが今までやってきたことは不十分だったかもしれませんが、それでも辛抱強く防災対策を繰り返してきたことが活かされているのです。そうした思いの上に、さらに今回、私たちは何をやるべきかを考えなければいけないのだと思います。
では、私たちは一体何をやるべきなのでしょうか。政策論として1つ申し上げたいのは、今回は「複合連鎖危機」ですので、復旧・復興、その後の改革を一体化してシームレスで行う必要があるということです。下手をするとバリュー・オブ・ジャパンが損なわれますが、例えば東北の農業を復興する際にTPP対応型の強い農業をつくることができれば、バリュー・オブ・ジャパンを高めることにもなるのです。東北の街を世界に類を見ないようなエコタウンや防災タウンにつくり変えれば、世界からうらやましがられるような地域になれます。
たくさんの市町村が打撃を受けました。その復興にあたっては、思いきって市町村合併を進めて強い財政基盤の自治体をつくる。東北を1つの道州制にして霞が関の機能を仙台に移し、道州制特区のような形で東北全体の地方組織をつくり変える。そういう構想力が求められていると思います。
それなのに菅総理は、大変な状況なので6月に出す予定だったTPPの結論を先送りすると言いました。そうではなく、TPP対応型の強い農業にして、バリュー・オブ・ジャパンを守り、高めなければならないと思います。
東日本大震災復興チャリティーセミナー インデックス
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第1章 今こそTPP、エコタウン、道州制の実現を!
2011年06月02日 (木)
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第2章 原理原則に反する「復興税」には反対です
2011年06月03日 (金)
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第3章 3つの政策で脱原発・脱炭素社会のリーダーに
2011年06月06日 (月)
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第4章 既存企業を超えて、若者が日本をひっくり返すチャンス!
2011年06月07日 (火)
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第5章 経団連の善意「法人税引き下げ見送り」は自粛同様に罪が深い
2011年06月09日 (木)
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第6章 ここで中国にとられる程度のモノなら、事業から手を引くこと
2011年06月10日 (金)
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第7章 役所の縦割り権限を排除しなければ、復旧・復興・改革はできない
2011年06月13日 (月)
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第8章 電力会社はなければ困る。でも、東電である必要はない
2011年06月14日 (火)
該当講座
アカデミーヒルズセミナー 東日本大震災復興チャリティー
新しいニッポンを創るために!
竹中平蔵(アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学)米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学)
アカデミーヒルズセミナー東日本大震災復興チャリティー「新しいニッポンを創るために」では、この度の震災から日本が復興し、進むべき方向、そして新しい日本を創るためには、我々は何をしなければならないのか、について考えます。またセミナーの収益は被災地復興のために寄付する予定です。
アカデミーヒルズセミナー
政治・経済・国際 文化 教養

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