記事・レポート
東日本大震災復興チャリティーセミナー
新しいニッポンを創るために!
アカデミーヒルズセミナー政治・経済・国際文化教養
更新日 : 2011年06月09日
(木)
第5章 経団連の善意「法人税引き下げ見送り」は自粛同様に罪が深い
竹中平蔵: 実は今、一番問われているのは「民間部門」の復興です。非常に意図的な政策論議がなされていて「財政が大変だ」と言われていますが、客観的な数字としてどれぐらいの被害があったのか。これは内閣府が震災から2週間後ぐらいに出しています。ラフな試算ですが、直接被害が最大25兆円です。そのうち公的部門の被害は9兆円で、民間部門の被害が16兆円です。明らかに民間のほうが被害が大きいわけです。「財政が大変だ」と言っていますが、民間のほうがもっと大変なんです。
今年(2011年)は法人税が引き下げられる予定だったのですが、経団連会長が「復興の財源が大変だから法人税の引き下げの見送りを容認する」ということを言いました。これは自粛同様、よかれと思ってやったことが正しいとは限らないという典型的な例です。民間の資本が毀損したのですから、民間の資本をもっと呼び込まなければいけないんです。本来ならば「法人税の引き下げは5%の予定だったけれど、10%下げてくれ」と主張するのが経団連のとるべき態度です。
今回の震災でグローバル・サプライチェーンの中での日本の位置づけはすごいということがわかりました。例えば、世界シェアが極めて高い、自動車のさび止めの亜鉛をつくっている会社が被災したので、日本だけでなくGMのケンタッキー工場など、世界中の自動車メーカーが機能しなくなってしまったのです。ほかにも大阪の電車が間引き運転になるという事態が起きました。これは電車のモーターに使う部品メーカーが被災したために、供給が止まったからだそうです。東京の電車が節電で間引きになると思っていたら、関西も間引きになったのです。
「ナンバーワンじゃなくてオンリーワンになろう」とみんな言っていましたが、本当にオンリーワンになっていた企業がたくさんあったのです。日本の企業はやっぱりすごいんだということに、改めてみんな気づきました。それをどのように復興していくかが重要なのですが、部品の供給を受けていた側は当座をしのぐために代替部品を調達することになります。すると工場が復活しても、そのときには既に注文のシステムが変わってしまっているので、注文が戻ってこない可能性があります。実際、阪神・淡路大震災のときは神戸の機能を釜山にとられ、復興後もその機能は戻ってきませんでした。
それなのに今、「民間の復興をどうするか」という議論はほとんどなされていません。復興構想会議では、どのようにファイナンスをつけるかという議論が重要なのですが、メンバーにはマクロ経済と金融の専門家が一人もいないのです。それで議長がいきなり「増税する」と言っている。すごい構想会議です。でも皆さん、アンケート調査によると国民の約7割が「復興税はやむを得ない」と言っています。これもよかれと思って言っているわけですね。私は今、国民一人ひとりの志とリテラシーが問われていると思います。
そこで米倉先生に伺います。民間部門の復興のやり方について、一橋大学イノベーション研究センターの所長さんとしてのご見解をぜひ聞かせてください。
今年(2011年)は法人税が引き下げられる予定だったのですが、経団連会長が「復興の財源が大変だから法人税の引き下げの見送りを容認する」ということを言いました。これは自粛同様、よかれと思ってやったことが正しいとは限らないという典型的な例です。民間の資本が毀損したのですから、民間の資本をもっと呼び込まなければいけないんです。本来ならば「法人税の引き下げは5%の予定だったけれど、10%下げてくれ」と主張するのが経団連のとるべき態度です。
今回の震災でグローバル・サプライチェーンの中での日本の位置づけはすごいということがわかりました。例えば、世界シェアが極めて高い、自動車のさび止めの亜鉛をつくっている会社が被災したので、日本だけでなくGMのケンタッキー工場など、世界中の自動車メーカーが機能しなくなってしまったのです。ほかにも大阪の電車が間引き運転になるという事態が起きました。これは電車のモーターに使う部品メーカーが被災したために、供給が止まったからだそうです。東京の電車が節電で間引きになると思っていたら、関西も間引きになったのです。
「ナンバーワンじゃなくてオンリーワンになろう」とみんな言っていましたが、本当にオンリーワンになっていた企業がたくさんあったのです。日本の企業はやっぱりすごいんだということに、改めてみんな気づきました。それをどのように復興していくかが重要なのですが、部品の供給を受けていた側は当座をしのぐために代替部品を調達することになります。すると工場が復活しても、そのときには既に注文のシステムが変わってしまっているので、注文が戻ってこない可能性があります。実際、阪神・淡路大震災のときは神戸の機能を釜山にとられ、復興後もその機能は戻ってきませんでした。
それなのに今、「民間の復興をどうするか」という議論はほとんどなされていません。復興構想会議では、どのようにファイナンスをつけるかという議論が重要なのですが、メンバーにはマクロ経済と金融の専門家が一人もいないのです。それで議長がいきなり「増税する」と言っている。すごい構想会議です。でも皆さん、アンケート調査によると国民の約7割が「復興税はやむを得ない」と言っています。これもよかれと思って言っているわけですね。私は今、国民一人ひとりの志とリテラシーが問われていると思います。
そこで米倉先生に伺います。民間部門の復興のやり方について、一橋大学イノベーション研究センターの所長さんとしてのご見解をぜひ聞かせてください。
東日本大震災復興チャリティーセミナー インデックス
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第1章 今こそTPP、エコタウン、道州制の実現を!
2011年06月02日 (木)
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第2章 原理原則に反する「復興税」には反対です
2011年06月03日 (金)
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第3章 3つの政策で脱原発・脱炭素社会のリーダーに
2011年06月06日 (月)
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第4章 既存企業を超えて、若者が日本をひっくり返すチャンス!
2011年06月07日 (火)
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第5章 経団連の善意「法人税引き下げ見送り」は自粛同様に罪が深い
2011年06月09日 (木)
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第6章 ここで中国にとられる程度のモノなら、事業から手を引くこと
2011年06月10日 (金)
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第7章 役所の縦割り権限を排除しなければ、復旧・復興・改革はできない
2011年06月13日 (月)
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第8章 電力会社はなければ困る。でも、東電である必要はない
2011年06月14日 (火)
該当講座
アカデミーヒルズセミナー 東日本大震災復興チャリティー
新しいニッポンを創るために!
竹中平蔵(アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学)米倉誠一郎(日本元気塾塾長/一橋大学)
アカデミーヒルズセミナー東日本大震災復興チャリティー「新しいニッポンを創るために」では、この度の震災から日本が復興し、進むべき方向、そして新しい日本を創るためには、我々は何をしなければならないのか、について考えます。またセミナーの収益は被災地復興のために寄付する予定です。
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