記事・レポート
異色の大ヒットビジネス書『もしドラ』はこうして生まれた
~仕掛け人が語るミリオンセラーへの軌跡と、売れる企画の法則~
BIZセミナーマーケティング・PRコンテンツビジネス
更新日 : 2011年05月31日
(火)
第8章 電子書籍はコンテンツのつくり方が紙とはまったく違う

田中洋: 加藤さん、貴重なお話をありがとうございました。さらにいくつか聞いてみたいことがあるのですが、『もしドラ』の著者の岩崎さんという方は、もともとは東京芸大で建築を勉強していた方で、でも建築の道には進まずにエンターテイメントの世界にいって、秋元康さんの事務所でAKB48のプロデュースをされていたという、ちょっと変わった経歴の方だそうですね。
加藤貞顕: アシスタントプロデューサーのような形で携わっていらっしゃったそうです。岩崎さんは「彼女たちの横にいつもいて仕事をしていたから、女の子がどういう言葉遣いをするのかとか、悲しんでいる友達をどうやって慰めるのかとか、そういうのが本当に勉強になった」とおっしゃっていました。
田中洋: AKB48のメンバーの1人が、本のみなみちゃんのモデルだそうで。
加藤貞顕: そうなんです。峯岸みなみさんというメンバーをモデルにしたそうです。実は登場人物には、全員モデルがいるんですよ。全員がAKB48というわけじゃないんですけど。
田中洋: この物語にとてもリアリティを感じるのは、背景にそういう具体的なバックグラウンドがあるからなのですね。
最後に、「コンテンツビジネスの将来は明るい」とおっしゃっていましたが、今、加藤さんは電子書籍も手がけていらっしゃるということですので、これから電子書籍で手がけたい本、あるいは手がけたいことは何になるか、という話で締めていただけますか。
加藤貞顕: 電子書籍は「全然もうからない」ってみんな言っていますが、我々は電子書籍に関しては、もうけるためというよりは、実験というかトライアルでやっています。だから、電子書籍で得た利益はプロモーションなどにかなり気前よくつぎ込んでいます。そうしていろいろなプロモーションを端から順番に試して、どれが効くのか、どれが効かないのか、それを見極めるみたいなことをしています。
電子書籍を手がけてみると、プロモーションや売り方、コンテンツのつくり方が、紙のときとまったく違うということがわかります。例えばコンテンツの長さは、もっと短くするべきだとか。ネットで動画を見るようになると、映像は2、3分、長くても10分程度の短いものがどんどん欲しくなりますよね。同じように、テキストもそういうふうになっていくと思います。そういうことを、実際につくってみると感じますね。
そういうふうに、感覚をアジャストしながら、何か新しいものをつくろうと思っています。例えば、サンマーク出版の『一歩を超える勇気』(栗城史多)という本は、ダイヤモンド社が開発したDReaderという電子書籍ビューアで読めますが、それには動画や写真が収録されています。こういう新しいチャレンジをいろいろしたいと思っています。電子化が目的じゃなくて、よりいろいろな人に、いろいろなことを伝える手段としてチャレンジしています。
ただ、電子書籍ならではな素晴らしい点というのもあって、それは国境を簡単に越えられることです。だから、世界に向けてコンテンツビジネスができるのです。僕は日本の編集力は世界に誇れるレベルだと思っているので、我々はこれから紙でも電子でも、世界に向けていろいろやるといいと思っています。
田中洋: 期待の持てるご発言、ありがとうございます。きょうの加藤さんのお話しは、出版やコンテンツビジネスだけでなく、いろいろなことに応用できる貴重なものだったと思います。どうもありがとうございました。
加藤貞顕: ありがとうございました。(終)
加藤貞顕: アシスタントプロデューサーのような形で携わっていらっしゃったそうです。岩崎さんは「彼女たちの横にいつもいて仕事をしていたから、女の子がどういう言葉遣いをするのかとか、悲しんでいる友達をどうやって慰めるのかとか、そういうのが本当に勉強になった」とおっしゃっていました。
田中洋: AKB48のメンバーの1人が、本のみなみちゃんのモデルだそうで。
加藤貞顕: そうなんです。峯岸みなみさんというメンバーをモデルにしたそうです。実は登場人物には、全員モデルがいるんですよ。全員がAKB48というわけじゃないんですけど。
田中洋: この物語にとてもリアリティを感じるのは、背景にそういう具体的なバックグラウンドがあるからなのですね。
最後に、「コンテンツビジネスの将来は明るい」とおっしゃっていましたが、今、加藤さんは電子書籍も手がけていらっしゃるということですので、これから電子書籍で手がけたい本、あるいは手がけたいことは何になるか、という話で締めていただけますか。
加藤貞顕: 電子書籍は「全然もうからない」ってみんな言っていますが、我々は電子書籍に関しては、もうけるためというよりは、実験というかトライアルでやっています。だから、電子書籍で得た利益はプロモーションなどにかなり気前よくつぎ込んでいます。そうしていろいろなプロモーションを端から順番に試して、どれが効くのか、どれが効かないのか、それを見極めるみたいなことをしています。
電子書籍を手がけてみると、プロモーションや売り方、コンテンツのつくり方が、紙のときとまったく違うということがわかります。例えばコンテンツの長さは、もっと短くするべきだとか。ネットで動画を見るようになると、映像は2、3分、長くても10分程度の短いものがどんどん欲しくなりますよね。同じように、テキストもそういうふうになっていくと思います。そういうことを、実際につくってみると感じますね。
そういうふうに、感覚をアジャストしながら、何か新しいものをつくろうと思っています。例えば、サンマーク出版の『一歩を超える勇気』(栗城史多)という本は、ダイヤモンド社が開発したDReaderという電子書籍ビューアで読めますが、それには動画や写真が収録されています。こういう新しいチャレンジをいろいろしたいと思っています。電子化が目的じゃなくて、よりいろいろな人に、いろいろなことを伝える手段としてチャレンジしています。
ただ、電子書籍ならではな素晴らしい点というのもあって、それは国境を簡単に越えられることです。だから、世界に向けてコンテンツビジネスができるのです。僕は日本の編集力は世界に誇れるレベルだと思っているので、我々はこれから紙でも電子でも、世界に向けていろいろやるといいと思っています。
田中洋: 期待の持てるご発言、ありがとうございます。きょうの加藤さんのお話しは、出版やコンテンツビジネスだけでなく、いろいろなことに応用できる貴重なものだったと思います。どうもありがとうございました。
加藤貞顕: ありがとうございました。(終)
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第8章 電子書籍はコンテンツのつくり方が紙とはまったく違う
2011年05月31日 (火)
該当講座
異色の大ヒットビジネス書『もしドラ』はこうして生まれた
~仕掛け人が語るミリオンセラーへの軌跡と売れる企画の法則~
加藤 貞顕(ダイヤモンド社 書籍編集局 第三編集部)
田中 洋(中央大学大学院ビジネススクール教授)
本講座では発行部数が150万部を突破し、社会現象化している『もしドラ』の担当編集者であり、さまざまな販促プランニングにも携わったダイヤモンド社の加藤貞顕氏をお招きします。過去にも多くのヒット書籍を担当してきた加藤氏に、独自の「眼」で「企画の芽」を見つける方法から、Twitterを活用した新たなプロモーションの工夫、電子書籍版ヒットの裏側と今後の戦略までをお伺いします。
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