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環境政策キーパーソンが語る環境外交と国内政策

~『日経エコロジー』提携講座:「25%削減」への道筋

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更新日 : 2010年08月19日 (木)

第8章 温暖化対策を経済成長につなげる戦略、の一例

福山哲郎氏

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福山哲郎: 個別の政策で企業の環境投資や技術革新を促したり、関連財やサービスに対する需要を創出したりすることで、新産業を創出・育成することが重要です。そのためには経済の成長戦略が必要です。

例えば、太陽光パネルを固定価格買取制度で普及させ、太陽光で電気をつくり、電池に蓄え、駐車場の家庭用ソケットで電気自動車の充電ができるようにする。あるいは全国のコンビニの屋根に太陽光パネルをつけて、車の充電場所にする。こうしていけば、間違いなく新しいライフスタイルが生まれます。

それから地方には空いている工業団地があります。電気等の設備は整っているので、そこに巨大な太陽光パネルを張り巡らせば、その地域にひょっとしたらお金が落ちるようになるかもしれません。

ドイツは、家庭の省エネのために、リフォーム工事への補助金制度を設けました。早く申し込めば申し込むほど補助率が高くなるので、みんなリフォームしようとします。さらに、固定価格買取制度では、早期に太陽光パネルをつけた方が買取額が高くなります。すると省エネ家電メーカーや工務店が潤うし、雇用の確保にもなるのです。

これは短期間にマーケットを拡大し、集中的に投資を呼び込むのに効果的です。日本もこうした工夫をすることが重要です。地球温暖化の個別政策としては、キャップ&トレード方式の国内排出量取引制度の創設、環境税の導入、固定価格買取などの再生可能エネルギーの普及促進策の導入、住宅の省エネ・断熱化の推進、CO2の「見える化」、革新的な技術開発の促進などがあります。

いつまでも抽象的に「日本は世界でトップレベルの低炭素経済社会だ」などと言っていると道を間違えます。日本は90年代に入って成長のスピードが止まりました。技術革新のレベルでいうと、世界に追いつかれようとしています。

気候変動対策をテーマに世界中が競争をして、マーケットのシェアを拡大していこうとしています。途上国は日本の技術や資金に期待しています。これからは日本が持つトップレベルの技術を技術要素だけではなく、どうトータルなパッケージとして提示するかというのが重要になってきます。

「コペンハーゲン合意は法的拘束力がないので、日本は25%削減をやらずに済むのではないか」という議論がありますが、とんでもない話です。これは「2050年80%削減」という世界的な約束にいく道のりの1つです。

それから「2020年25%削減は無理だ」という議論がありますが、まだ10年もあります。2050年までは、40年もあるのです。大きなライフスタイルの変化が求められる中、我々は中心的なプレイヤーとして立っています。そして世界の中で、日本は鳩山政権の25%削減スピーチで認められつつあるのです。ぜひ皆さんには、気候変動をめぐる可能性を積極的に探っていただきたいと思います。

最後に宣伝で恐縮ですが『民主主義が一度もなかった国・日本』という新書を宮台真司先生と共著で出しました。対談の中で、政権交代の意味や民主党のマニフェストにある政策の意味、それからきょう申し上げた気候変動の問題などについて語っております。要点がギュッと詰まっておりますので、お手にとっていただけましたら幸いです。きょうはどうもありがとうございました。(終)

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福山哲郎外務副大臣に聞く「25%削減」への道筋

~鳩山政権の環境政策キーパーソンが語る環境外交と国内政策~

福山哲郎外務副大臣に聞く「25%削減」への道筋
福山哲郎 (外務副大臣/民主党参議院議員)

福山 哲郎(外務副大臣/民主党参議院議員)
民主党きっての環境政策通である福山議員。「CO2を2020年までに1990年対比で25%削減する」という鳩山イニシアチブを草案した人物であり、国際交渉の最前線で日本の環境行政の舵取りをしています。難航するポスト京都議定書の国際交渉における日本の方針と、国内環境政策について、鳩山政権の環境政策キーパーソンに直接伺うまたとない貴重なセッションです。


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