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環境政策キーパーソンが語る環境外交と国内政策

~『日経エコロジー』提携講座:「25%削減」への道筋

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更新日 : 2010年07月01日 (木)

第3章 世界が主導権争いに火花を散らす、気候変動マーケット

福山哲郎氏

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福山哲郎: CO2に対する経済界の認識の変化も起きています。08年2月、バンク・オブ・アメリカは融資の際に「CO2の大量排出企業は将来的に企業価値が落ちることを考慮し、負債とみなして審査する」という検討を始めました。またアメリカの機関投資家は、連邦レベルでの省エネ・再生可能エネルギー政策に関する意見書をまとめました。

世界の再生可能エネルギーへの投資額の推移は、04年の275億ドルから、08年は1,550億ドルになりました。リーマンショックはあったものの、09年・10年はおそらくこれを上回るのではないかと思います。

クリーンエネルギー関連企業の新規上場は05~07年に欧米では130件ありました。これは日本は残念ながら0件です。

このように国際的には、単に「気候変動、CO2の増加が生態系の破壊をもたらすから環境を守ろう」というだけではなく、気候変動をマーケットとするルールづくりの主導権争いと、技術革新に伴うライフスタイルの転換モデル競争との、両方の競争が進んでいるのです。

国際情勢における一番の変化は、オバマ政権の誕生によってもたらされました。オバマ大統領はグリーン・ニューディールを掲げ、10年間で約15兆円の投資を表明しました。これは企業に対して「経営戦略や投資戦略をちゃんと立てれば、国がバックアップをする」というメッセージにほかなりません。

さらに新興国のBASIC(ブラジル、南アフリカ、インド、中国)という、大きな経済成長の可能性がある国々の台頭があります。こうした国々はこれまで“途上国”として京都議定書の議論に参加していましたが、今では“経済成長”を目指す立場になり、「途上国」と「経済成長国」という2つの顔を持って交渉に臨んできています。これらの新興国は、先進国から見ると環境技術を輸出する大きなマーケットです。

これまで気候変動の問題で中心になってきたEU諸国にも変化があります。EUは年々拡大し、各国の事情が多様になり、EUの中での意思決定が難しくなってきています。

こうした各国の動きがある中で、鳩山総理が温室効果ガスの25%の削減目標を国連で掲げたのは、決して突然ではありません。わが党の地球温暖化対策本部は、岡田克也外務大臣が本部長、私が事務総長をやらせていただきました。ここでいろいろな方のご意見を伺いながら「25%削減」という議論を2年かけて党内でまとめ上げ、法案をつくって提出し、マニフェストに掲げたのです。

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福山哲郎外務副大臣に聞く「25%削減」への道筋

~鳩山政権の環境政策キーパーソンが語る環境外交と国内政策~

福山哲郎外務副大臣に聞く「25%削減」への道筋
福山哲郎 (外務副大臣/民主党参議院議員)

福山 哲郎(外務副大臣/民主党参議院議員)
民主党きっての環境政策通である福山議員。「CO2を2020年までに1990年対比で25%削減する」という鳩山イニシアチブを草案した人物であり、国際交渉の最前線で日本の環境行政の舵取りをしています。難航するポスト京都議定書の国際交渉における日本の方針と、国内環境政策について、鳩山政権の環境政策キーパーソンに直接伺うまたとない貴重なセッションです。


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