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環境政策キーパーソンが語る環境外交と国内政策

~『日経エコロジー』提携講座:「25%削減」への道筋

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更新日 : 2010年07月12日 (月)

第4章 日本の25%削減スピーチがアメリカと中国の威信に火をつけた

福山哲郎氏

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福山哲郎: 2009年7月、驚くことがありました。それまで日本政府は、2020年までの中期目標として、温暖化ガスの削減率を「2005年比でマイナス15%、1999年比でマイナス8%」としか約束していませんでした。それが2009年7月のラクイラG8サミットで突然「2050年までに先進国で80%以上削減する」という目標を受け入れたのです。これは非常に高い目標で、私は「よく、これをのんだな」と思ったのですが、残念ながらマスコミではあまり報道されませんでした。

政権交代して新しい政権が発足したのが2009年9月16日、その翌々日に私は外務副大臣を拝命しました。最初の仕事として、外務省の総合外交政策局の局長に電話しました。「(9月)22日に開かれる国連気候変動サミットで、オバマ大統領や胡錦濤国家主席が演説する予定ですね。日本の総理に演説の機会はありますか?」と聞いたのです。すると「いえ、ありません」と返ってきました。

私は鳩山総理が強い意志を持ってこの気候変動サミットに臨むということを前から伺っていたので、「何とか総理のスピーチの場面をつくるように」と指示しました。サミットまでわずかな時間しかありませんでしたが、外務省がきちんと仕事をして、総理の演説を組み込んでくれました。

それがあの25%削減の演説です。冒頭に「(1990年比で2020年までに)25%削減を目指す」と言ったあと、「すべての主要国の参加による意欲的な目標の合意が前提」と入っていました。なぜなら気候変動対策は、2カ国で世界のCO2排出量の40%を占めるアメリカと中国が加わらないことには意味がないからです。

国内排出量取引市場については「国際競争力への影響や、各国間のリンケージを念頭に置いて議論していく」と表現しました。影響への配慮はもちろん必要ですし、共通のルールをつくることが非常に重要だという認識です。さらに「鳩山イニシアティブ」として、途上国に対する資金支援をうたうことによって、途上国を何とか参加の枠組みに入れたい、というのが鳩山総理のスピーチでした。

このスピーチの後、日本国内は大変な騒ぎになりましたが、国際社会からはかなり高い評価をいただきました。

その後、2009年12月のCOP15(コペンハーゲン)までにいろいろな綱引きがあり、各国の利害がぶつかって、なかなか前に進まないという状況になりました。そんななかアメリカは「中国などの新興国が緩和策を講じるなら、COP15で、2020年までに温室効果ガスを2005年比で17%削減すると表明する用意がある」ということを明らかにしました。中国もCOP15前に、「2020年までにGDP当たりCO2で、2005年比で40~45%削減する」という目標を明らかにしました。

これはCOPの歴史上、大きな変化です。コペンハーゲンでの国際交渉が始まる前に、アメリカと中国が自国のポジションを明示して交渉に乗り込んできたというのは、これまでではあり得ないことでした。鳩山総理の「25%削減と全員参加」のスピーチが、アメリカと中国に対し「何もメッセージを出さないで交渉に乗り込むわけにはいかない」という空気を醸成したのは間違いない——そのように私は思っています。

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福山哲郎外務副大臣に聞く「25%削減」への道筋

~鳩山政権の環境政策キーパーソンが語る環境外交と国内政策~

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福山哲郎 (外務副大臣/民主党参議院議員)

福山 哲郎(外務副大臣/民主党参議院議員)
民主党きっての環境政策通である福山議員。「CO2を2020年までに1990年対比で25%削減する」という鳩山イニシアチブを草案した人物であり、国際交渉の最前線で日本の環境行政の舵取りをしています。難航するポスト京都議定書の国際交渉における日本の方針と、国内環境政策について、鳩山政権の環境政策キーパーソンに直接伺うまたとない貴重なセッションです。


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