記事・レポート
本当にエコカーは環境負荷を低減するのか。生き残るエコカーの条件とは?
『日経エコロジー』提携講座:過熱するエコカー市場の真相
更新日 : 2010年05月13日
(木)
第9章 環境精神論だけでは、日本に電気自動車は普及しない

木野龍逸: 電気自動車は、先ほど述べたように現状ではあまり使い勝手のいい車ではないので、普及のためには行政の補助や政策が必要です。市民の意識といったボトムアップだけでは、簡単に普及するものではないと私は思っています。
環境負荷が下がっても、「電気自動車で生活がすごく便利になったり、電気自動車がすごく楽しいものだったりするのか?」と問われると、一般的には、多分そうではありません。急にライフスタイルを「変えろ」と言われても、簡単に変えられるものではないので、インセンティブを設けながらやっていかないと、そう簡単にものが入れ替わるということにはならないと思います。
そういう意味では、周辺のビジネスや社会システムの変革、創造を含めてやっていかないといけません。日本は、物があふれていて、しかも車が便利に使える社会ですから、転換していくには、精神論だけでは難しいと思います。「プラス何か」というのが、普及の必須条件だと思います。
メーカーの技術者に聞くと、「トップダウンであれ何であれ、状況、方針が固まれば、僕たちはやりますよ」と複数の人が言います。自動車メーカーがなかなか一歩を踏み出せないのは、もちろんメーカーの方針もあるのですが、国としての方針がはっきりしないからです。
現場の技術者はフラストレーションを感じているようでした。彼らの中には危機意識もあるし、もちろんやる気もある。それに加えて技術もあるので、社会の形がちゃんと整えば、できないものではないと思います。
先ほど紹介したテスラ・モーターズは、グリーン・ニュー・ディールの一環で、500億円ほどの低利融資を受けています。ほかにも、プラグインハイブリッド車を量産するといっているフィスカー・オートモーティブというカリフォルニア州にあるベンチャーなど、申請をしている電気関係のベンチャーがいくつかあるようです。
日本はうかうかしていられないと思います。そういう意味では、鳩山政権が「CO2を25%削減」という方針を出したのは、とても大きなバックアップになると思います。これで動きが加速するのではないかと、個人的には期待しています。(終)
記事をシェアする

ブログに書く
この記事のURLはこちら。
http://www.academyhills.com/note/opinion/10030309EcoCar.html
本当にエコカーは環境負荷を低減するのか。生き残るエコカーの条件とは? インデックス
-
第1章 エコカー開発の背景には、環境問題とエネルギー問題がある
2010年03月03日 (水)
-
第2章 クリーンディーゼルと燃料電池車は風前の灯
2010年03月11日 (木)
-
第3章 ハイブリッド車への期待と今後の展開
2010年03月18日 (木)
-
第4章 “街なかの充電コンセント”は電気自動車の普及のカギにならない?
2010年03月26日 (金)
-
第5章 EUのCO2規制が電気自動車の開発に拍車をかける
2010年04月02日 (金)
-
第6章 アメリカでは、ベンチャー企業が電気自動車を開発している
2010年04月12日 (月)
-
第7章 世界の電気自動車事情
2010年04月22日 (木)
-
第8章 日本ではほとんど見かけない電気自動車が、世界を走っている理由
2010年04月30日 (金)
-
第9章 環境精神論だけでは、日本に電気自動車は普及しない
2010年05月13日 (木)
該当講座
過熱するエコカー市場の真相
~本当にエコカーは環境負荷を低減するのか。5年後に生き残るエコカーの条件とは~
木野龍逸 (フリーランス ライター兼カメラマン
)
木野 龍逸(フリーランス ジャーナリスト・カメラマン)
いま、エコカーが注目されています。トヨタやホンダのハイブリッドカーが市場を席巻し、三菱自動車、富士重工、日産自動車が電気自動車を発表するなど、各社がしのぎを削る中、政府もエコカー減税を実施してバックアップします。
多岐に渡る環境対応車の「いま」と今後のエコカー市場の展望について木野氏が解説します。
BIZセミナー
環境 政治・経済・国際

注目の記事
-
05月23日 (火) 更新
アートは新しい資本主義を作ることができるのか?
アートを通じて資本主義の先を見据えるアーティスト・長坂真護氏、アートと資本主義の関係を考察されてきた社会学者・毛利嘉孝氏、スイスのビジネスス....
~サステナブル・キャピタリズムの可能性~
-
04月10日 (月) 更新
フィジカルな紙の魅力を再考する「ブックデザイン・アーカイヴス」
美しい書物とは、どのようなものなのでしょうか。 今回は「フィジカルな紙の魅力を再考する~ブックデザイン・アーカイヴス」と題し、私たちが日常....
-
02月13日 (月) 更新
CATALYST BOOKS vol.6
イベント「カタリスト・トーク」の登壇者が紹介する「理解を深める1冊」。今回は、東京大学の小野塚知二さんに3冊ご紹介いただきました。
現在募集中のイベント
-
開催日 : 06月30日 (金) 18:30~20:00
内田和成の『アウトプット思考』新刊イベント
元ボストン・コンサルティング・グループ日本代表、早稲田大学ビジネススクール教授として「知的生産」の最前線で活躍してこられた内田和成さん。最新....
最小のインプットで最大の成果を得る情報活用術
-
開催日 : 06月26日 (月) 19:00~22:00
森美術館開館20周年記念展「ワールド・クラスルーム:現代アートの国語・算数・理科・社会」
今年20周年の節目を迎える森美術館。その記念企画「ワールド・クラスルーム展」を監修したアシスタント・キュレーターの熊倉晴子による展覧会の解説....
アーティストトーク+自由鑑賞
-
開催日 : 06月21日 (水) 19:00~20:00
「懐かしい」をシェアする夜
「青春時代のヒーローは?」「あの時欠かさず見ていたテレビ番組は?」懐かしいものにスポットを当てた交流会を開催!多種多様なメンバーと、それぞれ....