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本当にエコカーは環境負荷を低減するのか。生き残るエコカーの条件とは?

『日経エコロジー』提携講座:過熱するエコカー市場の真相

更新日 : 2010年03月11日 (木)

第2章 クリーンディーゼルと燃料電池車は風前の灯

木野龍逸氏

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木野龍逸: では、こうした問題に対処していくためのエコカーとはどんなものなのかというと、目的として地球温暖化の防止があるので、「温室効果ガスの排出量が少ないこと」というのが1つあります。それから、二酸化炭素の排出量を減らすために「エネルギー効率をよくすること」、エネルギー問題に対処するために「ある程度のエネルギー転換が可能なこと」、「過去の公害問題を再発生させないこと」が求められます。

ここ数年、エコカーの代表のようにいわれていたクルマのひとつが、ディーゼル車でした。ディーゼルエンジンの熱効率はガソリン車より2、3割良いため、CO2削減に効果的というのが理由です。また低速域でとてもトルクがあるので、特にトラックのように重い物を乗せて走る車だと、運転しやすく使いやすいということがあります。さらに、軽油は生物由来の代替燃料や天ぷら油で作ることもできますから、脱化石燃料にもなるとされています。

しかし、ディーゼル車にはデメリットもあります。ガソリン車よりもパワーが出にくいため、ガソリン車と同パワーにしようとすると、ガソリン車よりも2、3割、排気量を大きくする必要があるのです。それに、ガソリン車のように触媒を使って規制物質を浄化するのが難しく、日本では大気汚染の元凶のようになってしまいました。

2000年以降は各社ともクリーンディーゼル車開発に力を入れていたのですが、デメリットを解決しようとすると、排ガスを浄化するだけでコストが高くなることもあり、ホンダがディーゼル車開発をストップしたように、もしかしたら各社とも撤退する方向にいくかもしれません。ただしヨーロッパでは、走っている車の半分くらいがディーゼル車ですし、マーケットとしても大きいので、そう簡単にやめるというわけにはいかないと思います。

とはいえ、これからはヨーロッパでも排ガス規制が今よりも厳しくなっていきます。排ガス規制の強化は燃費にも影響しますから、一概にディーゼルの方がエンジン車に比べてCO2の排出が少ないとは言えなくなる部分も出てくると思います。

燃費をよくするためにお金をかけ、排ガスの浄化にもお金をかける——こうなると、これから先もディーゼル車がマーケットで受け入れられる価格のままでいられるのか、疑問です。

燃料電池車(水素と空気中の酸素を化学反応させ、電気を発生させてモーターを回す車。充電は不要)は、最近下火になっています。1台2億円とか3億円とか言われている製造コストが下がるのか、システムとしての効率が本当にいいのか、水素のインフラを本当に整備できるのか、という問題があるからです。

コストに関しては、燃料電池にはいろいろな貴金属が多量に使われていて、技術者いわく、「使う量を減らすのは難しい」ということです。それから、今のところ水素は化石燃料からつくっているので脱化石燃料にはなりません。たとえば水を電気分解して水素をつくれば脱化石燃料にはなります。けれども、電気を使うなら電気自動車でそのまま使った方がよっぽど効率がいいと思うのですが、「電気自動車より水素の方が長い距離を走れる」という考え方は根強く、開発理由の最後の砦になっているようです。

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過熱するエコカー市場の真相

~本当にエコカーは環境負荷を低減するのか。5年後に生き残るエコカーの条件とは~

過熱するエコカー市場の真相
木野龍逸 (フリーランス ライター兼カメラマン )

木野 龍逸(フリーランス ジャーナリスト・カメラマン)
いま、エコカーが注目されています。トヨタやホンダのハイブリッドカーが市場を席巻し、三菱自動車、富士重工、日産自動車が電気自動車を発表するなど、各社がしのぎを削る中、政府もエコカー減税を実施してバックアップします。
多岐に渡る環境対応車の「いま」と今後のエコカー市場の展望について木野氏が解説します。


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