記事・レポート
本当にエコカーは環境負荷を低減するのか。生き残るエコカーの条件とは?
『日経エコロジー』提携講座:過熱するエコカー市場の真相
更新日 : 2010年04月22日
(木)
第7章 世界の電気自動車事情

木野龍逸: 世界的に見ると、電気自動車の数は、日本で思っているほど少ないものではありません。例えば中国では電動自転車、といっても自走できるので電動バイクのような乗り物ですが、これが年間に1000万台以上も売れています。地方都市に行けば、汎用モーターを積んだ自家製電気自動車が大量に走っています。
もう10年以上前になりますが、「ネパールで電気自動車が走っている」という話を聞き、カトマンズまで見に行きました。工業用の汎用モーターに鉛の電池を組み合わせた、非常にシンプルなものなのでしたが、こういうものであればつくれるのです。
カトマンズはディーゼル車が多くて公害がひどいので、自分たちでつくれる電気自動車があるというのは、いろいろな部分で可能性が広がるのではないかと思います。サファテンプーという電気自動車は、私が訪れた当時は5、60台だったのが、今は600台ぐらいが走っているというようなレポートが出ています。
アメリカでもヨーロッパでも街中を電気自動車が走っています。パリではプジョーとシトロエンが、10年ほど前にフランス国内で電気自動車の普及実験をしたことがあり、街なかに電気自動車専用の無料駐車場と充電のスタンドが立てられました。それはいまも撤去されていないようなので、電気自動車の普及には大きなメリットがあると思います。
インドのREVA(レバ)という電気自動車メーカーは、2009年9月のフランクフルト国際モーターショーで新しい車を発表しました。このご時世、日本のメーカーでも出展しないところもあることを考えると、インドの小さな電気自動車の会社がブース出しているというのは、マーケットとして可能性があると考えているのでしょうし、自分たちの車に自信もあるのだと思います。
レバの本社はITの盛んなバンガロールにあります。4年ほど前に訪れたときには、車をつくるラインは本当に原始的なものでしたが、社長は先行きの不安を全く感じていない明るい声で、「これまでちょっと時間が掛かったけれど、これからはちゃんと売っていく」と言っていました。
レバの電気自動車は、爆発的普及とまではいきませんが「5年間で3,000台販売した」というプレスリリースが出ていました。イギリスやイタリア、日本では富山にあるタケオカ自動車工芸というところが輸入販売しています。ヨーロッパではある程度売れているようで、これからも拡販に力を入れていくようです。
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http://www.academyhills.com/note/opinion/10030307EcoCar.html
本当にエコカーは環境負荷を低減するのか。生き残るエコカーの条件とは? インデックス
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第1章 エコカー開発の背景には、環境問題とエネルギー問題がある
2010年03月03日 (水)
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第2章 クリーンディーゼルと燃料電池車は風前の灯
2010年03月11日 (木)
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第3章 ハイブリッド車への期待と今後の展開
2010年03月18日 (木)
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第4章 “街なかの充電コンセント”は電気自動車の普及のカギにならない?
2010年03月26日 (金)
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第5章 EUのCO2規制が電気自動車の開発に拍車をかける
2010年04月02日 (金)
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第6章 アメリカでは、ベンチャー企業が電気自動車を開発している
2010年04月12日 (月)
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第7章 世界の電気自動車事情
2010年04月22日 (木)
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第8章 日本ではほとんど見かけない電気自動車が、世界を走っている理由
2010年04月30日 (金)
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第9章 環境精神論だけでは、日本に電気自動車は普及しない
2010年05月13日 (木)
該当講座
過熱するエコカー市場の真相
~本当にエコカーは環境負荷を低減するのか。5年後に生き残るエコカーの条件とは~
木野龍逸 (フリーランス ライター兼カメラマン
)
木野 龍逸(フリーランス ジャーナリスト・カメラマン)
いま、エコカーが注目されています。トヨタやホンダのハイブリッドカーが市場を席巻し、三菱自動車、富士重工、日産自動車が電気自動車を発表するなど、各社がしのぎを削る中、政府もエコカー減税を実施してバックアップします。
多岐に渡る環境対応車の「いま」と今後のエコカー市場の展望について木野氏が解説します。
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