記事・レポート

吉田カバンの社長が語る「メイド・イン・ジャパン」ブランド

変わらないけど変わり続ける“ぶれない経営”に迫る

更新日 : 2010年02月03日 (水)

第1章 創業者・吉蔵が築いた吉田カバンの歴史

1935年の創業以来、国内生産を貫き、職人を大切にしてきた株式会社吉田。
「一針入魂」という不変の精神を堅持しつつ、時代の変化には柔軟に対応し、積極的に海外の革や金具を取り入れ、新たな鞄づくりに挑戦しています。
変わらないけど変わり続け、世界に誇る日本ブランドを確立した同社の「ぶれない経営」に迫ります。

講師:吉田輝幸(株式会社吉田 代表取締役)
モデレーター:首藤明敏(株式会社博報堂ブランドコンサルティング 代表取締役社長)

吉田輝幸氏

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吉田輝幸: 創業者であり父の吉田吉蔵は、明治39年に神奈川県に生まれ、大正7年、12歳のときに鞄職人の修行に東京・上野に出ました。最初は親方の子どもの世話など雑用から始め、カバンづくり自体は2年ぐらいさせてもらえなかったと聞いています。

2年後、革を裁断する包丁の研ぎ方を教わり始め、さらに2年後にやっと針と糸を持たせてもらえたそうです。そして昭和10年に一人前の職人となり、親方から独立の許可が出て、東京・秋葉原のすぐそばの神田須田町に小さな家を借りて、吉田鞄製作所を設立しました。

しかし、すぐに日中戦争、太平洋戦争と続けて召集。帰国後、仕事を再開しました。ものづくりには非常に厳しい人で、自分の気に入らない物は売らずにご近所さんに差し上げていたそうです。創業者の判断基準に適った物だけを、銀座の闇市でリヤカーを引いて売り歩いたのです。

物がない時代でしたので、飛ぶように売れたそうです。でも、値段を高くすることはせずに、きちんとした原価計算のもとで価格を決めたと聞いております。東京が復興してきた昭和26年、神田須田町から現本社がある東神田に移り、株式会社吉田に改組しました。

創業者は時代に合ったものをつくることも徹底して行っていました。団地ができ始めた頃、「家が狭いから大きなカバンは置けない」という声に応えるべく、当時のYKKの社長、吉田忠雄氏と話し合い、ファスナーでサイズが変えられるカバン「エレガントバッグ」をつくりました。

爆発的な売上を記録しましたが、この特許は当時の鞄協会に寄贈しています。当時、まだまだ小さかった鞄業界を少しでも活性化しようという意図でした。協会はその特許料で随分いろいろなことができるようになりました。

昭和37年、プライベートブランド「PORTER」を発表しました。翌年、黒澤明監督の製作チームから、映画『天国と地獄』の中でカバンを使いたいと、父宛てに製作依頼がありました。その出来が黒澤監督から大変褒められたという話も聞いております。現在、そのファーストサンプルは会社に保管してあります。

創業者はとにかくものづくりに関しては絶対に他に負けない、そして、日本の職人さんをとにかく大事にするといった意思のもとで、カバンや鞄業界の発展を一所懸命努力して行っていきました。その努力が評価され、昭和51年に国から「勲五等双光旭日賞」を頂戴しました。

平成6年には「ミモザ賞」という名誉ある賞にも選ばれました。受賞者は吉田吉蔵だったのですが、父がどうしても「『吉田吉蔵並びに吉田カバンの職人衆』と書いてほしい」と主張し、実現しました。自分だけではなく全職人衆がこの賞をもらったんだという証にしたかったのだと思います。

その年、創業者は病に倒れ、亡くなりました。しかし創業者の残してくれた全てが、今現在も続いております。

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首藤明敏 (株式会社博報堂ブランドコンサルティング代表取締役社長)

吉田輝幸(株式会社吉田代表取締役社長)
首藤敏明(博報堂ブランドコンサルティング社長)
本セミナーでは、独自の輝きを放つ日本発のブランドを育てた経営者の一人である、吉田カバンの吉田輝幸氏をお招きします。1935年の創業以来一貫して変わらない鞄づくりに対する技術のこだわりと、長く愛され続けるブランドをどのように確立してきたか、その手法に迫ります。


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