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「東京オンリーピックができるまで」

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更新日 : 2009年02月12日 (木)

第3章 経験も実績もバラバラな個性派クリエーターを集めた理由


「開会式&閉会式」
(c)2008 東京オンリーピック連盟/国際オンリーピック委員会
亀田卓: 1つの映画を15人のクリエーターがパートパートでつくるというのは新しい、と僕は感じました。この作品でスターを生み出す要素があると思うのです。陽の当たらなかったクリエーターの作品を真島理一郎の名前でいろいろな人が買う、あるいは劇場に行って見る。そのあたりを真島監督は狙っていたのですか?

真島理一郎: 実は当初から、それがやりたかったというところがあります。短編映画際に出したりして、いろいろな人と知り合ったのですが、みんな苦労されているのですね。短編というのはなかなかビジネスにならない。

亀田卓: 面白くても、見てくれなければ伝わらないですものね。

真島理一郎: 面白いことをやっている個性的な人たちにスポットを当てたいな、というのが僕の中の大きなテーマとしてありましたね。

オムニバス映画みたいなものは、今までにもいくつもあるんですけれども、どちらかというとアート寄りとか、映画好きな人が見ていた。『スキージャンプ・ペア』を見てくれた一般の人たちに見てほしいな、というのがどうしてもありました。

今回15人のクリエーターには、主に僕が独断と偏見で声をかけていったんですが、アニメーションやCGだけじゃなくて、実写などいろいろな手法でやっている人をゴチャ混ぜにしたいということと、実績とかもバラバラにしたいということにこだわってます。

カンヌ国際映画祭で賞をとられている中野裕之さんもいるし、無名の澤田裕太郎君というデジタルハリウッドの現役の学生までいる。活躍の場もさまざまで、テレビでCMをやっている人もいれば、インディペンデントでアニメーションやっている方もいます。

亀田卓: そこは真島さんにお任せしたのですが、それなりにレギュレーションは、はめていったわけですよね?

真島理一郎: そうですね。基本は好きなことやって個性を出してくださいということなのですが、全体でスポーツの大会観を出したかったので、必ず競技のシーンを入れてくれとか、人間を主人公にしてくれとか、テロップやサイン、TV中継のフォーマットを統一させてくれとか、そういうところで若干のレギュレーションをつくって、その中で好きに遊んでくださいという感じでしたね。

亀田卓: それに関しては、皆さん、快く受け入れてくれた。

真島理一郎: 本当にどんな作品が出てくるか、僕自身、楽しみでした。まずは自分が楽しまないと人を楽しませられないだろうなというのは、『スキージャンプ・ペア』のときから思っていたので、楽しんでやりましたね。

亀田卓: 真島さん自身も、『開会式』『閉会式』、『男子親離れ』『男子ヒューマニズム』などの作品をつくっているわけですね。

真島理一郎: 僕が一番やりたかったのは『開会式』なんですよ。今回、五輪の開会式の日が映画の公開日だったから、本当の五輪が見られなかったというのが一番残念でしたね。僕の記憶にあるのは小学校の頃見たロス五輪からで、いわゆる商業オリンピックの始まり。

商業オリンピックになって批判もありますが、僕はどんどんエスカレートするのが面白いんですよ。ロスで空飛んで来たじゃないですか。あれで衝撃を受けて。毎回聖火のつけ方ひとつにしても趣向を凝らしていて、「今回は何をやってくれるんだろう」というのが楽しみなんです。世界一お金と才能が集まった舞台劇だと思ってます。
(その4に続く、全8回)

※この原稿は、2008年9月30日にアカデミーヒルズで開催した「東京オンリーピックができるまで」を元に作成したものです。

該当講座

東京オンリーピックができるまで
真島理一郎 (映像作家/IDIOTS代表)
亀田卓 (デジタルハリウッド大学大学院教授 広告会社勤務/映画プロデューサー )

「only」+「pictures」=「onlypic」唯一無二のスポーツ映像。世界中を熱狂と興奮の渦に巻き込み、DVD販売累計50万枚を記録した大ヒット作「スキージャンプ・ペア」。その生みの親・真島理一郎待望の最新作「東京オンリーピック」。 本作では真島総監督のもと、国内外で活躍する個性派トップク....


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