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本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2026年4月~

更新日 : 2026年04月21日 (火)

毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の“いま”が見えてくる。
新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介します。

今月の10選は、『誰もがデザインする時代のデザイン』や『生物とAIのあいだで哲学する』など。あなたの気になる本は何?

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 誰もがデザインする時代のデザイン
日々の営みからソーシャルイノベーションを生み出すための思想と実践
エツィオ・マンズィーニ / ビー・エヌ・エヌ


「デザイン」という言葉からどんなことが思い浮かぶでしょうか。

プロダクトデザイン、グラフィックデザインのような、モノやイメージをつくることから、組織デザイン、サービスデザインなど人の動きやプロセスをつくることまで、「デザイン」という言葉がついた概念は世の中に多く存在します。

本書でいう「デザイン」は、上記のようなデザインとは少し違っています。つまり、何かデザインする対象が外部にあり、それに働きかけるための後天的に獲得される技術、というようなものではなく、人間の資質として誰にでも備わった能力としてデザインを捉え直します。

加えて本書では、近現代の社会において、あらゆる組織や個人は伝統的な文化や風習に従って生きることを意味する“慣習モード”から、実現可能なものごとを自ら考え、実践していくことが通常になった“デザインモード”に移行している、と指摘します。言い換えれば、デザインが専門家の元だけにとどまらず、あらゆる領域に偏在していることを意味します。

本書を読みながら、あらためて「デザインとはなにか」と問いかけると、それは「人と人が協働して何かを成し遂げる力」と言えるように思います。
刊行から10年経って翻訳された本書ですが、異なる価値観を持った人々がどのように共に生きるかがますます重要な課題となる今こそ、示唆に富む内容となっています。

 
 

「いまどきの若者」の150年史 
パンス / 筑摩書房 
タイトルの通り「いまどきの若者」の語られ方の歴史を追っていきます。「〇〇世代」という通俗的な世代の括りを敢えて入り口として、明治時代の「青年」に始まり、昭和の「しらけ世代」、平成の「ゆとり世代」など、時代ごとの「若者論」を追っていきます。繰り返し語られる若者論は、その時のメディア環境や政治・経済状況などの社会の変化を写す鏡のようなもの。最終章では「今やあらゆる人が『若者化』した」と書かれていますが、その真意とは?
 

風土建築をつくる旅
自然・人・技術をめぐるフィールドワークと実践
小林 広英 / 学芸出版社 
日本、アジア、南太平洋、アフリカなどの地域で取り組んできた15の“風土建築”の調査・再建について、建築家である著者がまとめた一冊。風土建築とは、地域の素材や気候、文化様式を反映しながら、そこに暮らす人の手で建てられた建築物やその工法のことを指します。遠い国や地域の事例だけでなく、日本の古民家を活用した事例(本書では“新風土建築”と呼ばれる)も掲載。建築は地域の人が協力しながら建てることもできる、という事実は、現代の都市計画やまちづくりにも新たな視点をもたらしてくれます。
 

フェイクニュースの免疫学
信じたくなる心理と虚偽の構造
サンダー・ヴァン・リンデン / みすず書房 
蔓延するフェイクニュースをウイルスに、それへの対処法(予防法)をワクチンになぞらえ、脳科学や社会心理学の知見から誤情報との向き合い方を説く本書。人間の脳は信じたいものを信じやすい上に、大量の情報が流れ込み、一つ一つの真偽を熟考する間もなくなっている現在の情報環境では、誰もが誤った情報を信じ、それに基づいた行動をとってしまうリスクがあります。情報の制作や加工が容易になり、インターネットで流通し続ける以上、フェイクニュースはずっとつきまとう問題。病気のように「自分は大丈夫」と思い込まないことが、誤情報の感染を防ぐ一歩目の対策となりそうです。 
 

フロイトの灯
現代精神分析入門
西 見奈子 / 筑摩書房 
多くの人がその名を知る精神分析の創始者ジークムント・フロイト。本人の著書やその功績を紹介する入門書は多くありますが、フロイトの周りにいた人々にもスポットを当てながら、エッセイに近い書き方で綴られた今までにない一冊です。人間の精神の奥底にあるものを見つめ続けたフロイトですが、なぜそのような研究に進んでいったのか、また、それがどのようにして可能だったのかが浮かび上がってきます。「フロイトの灯」というタイトルは、まるでフロイトが築いた精神分析論と現在のケアの時代との架け橋のようです。
 

ことばを学ぶとはどういうことか
外国語学習の本質
松田 真希子/ 筑摩書房 
外国語を学ぶことは、無条件に「良いこと」だと考えられがちですが、この本ではその“副作用”を指摘することから始まります。特に大人になってからの外国語学習は、「正しい言葉」を「インストール」して「武器」や「道具」のように使う、というようなイメージが流通していますが、本書ではそのような規範的なイメージを“言語学習の呪い”と呼び、批判的に検討していきます。終盤には「ことばを学ぶことは、社会を変えること」という章があるように、言葉と社会の密接な関係に思い至ります。
 

生物とAIのあいだで哲学する
「不器用で中途半端な人間」を理解するために
高木 駿、清水 颯 /青弓社 
2人の研究者が、「生物と人間」(高木)、「ロボット・AIと人間」(清水)というテーマについて書いた二章で構成される本書。人間とは異なる姿形をした生物(動物、微生物、植物など)と人間が作り出したロボットやAI、それぞれ人間と“違う”ことはわかりますが、何がどこまでどう違うのか、それを哲学的に説明することは意外なほど難問です。動植物やロボット・AIに対する人々の捉え方が変わっていくとき、「人間とは何か」という問いについて人々が考えることもまた変わっていくようです。
 

軍民両用化する技術
「デュアルユース問題」とは何か?
大庭 弘継 / 光文社 
「デュアルユース技術」とは、軍事と民生の両方に利用できる技術のこと。これが抱える問題をクリアにするために、本書では「(広義の)兵器にも転用され得る技術」としています。例えば、GPSは地図アプリなど日常のさまざまな場面で活用されていますが、アメリカの軍事システムとして開発された宇宙技術であり、ミサイルの誘導にも使われることがあります。デュアルユース問題は、テクノロジーが駆動する現代社会において、倫理学や哲学、経済学や地政学などにもまたがる簡単に答えの出ない問いを投げかけています。
 

鶏まみれ
繁延 あづさ/ 亜紀書房 
長崎県在住の写真家・文筆家である著者。もともと長男の希望で自宅の庭で鶏を育て卵を採ることを日常にしていましたが、ある日リストラで失職した夫が本格的な養鶏を始めることを思い立ち、著者自身も資格取得のために食鳥処理場でアルバイトを始めます。そこで体験したことをきっかけに「食」をめぐる壮大な人間の営みにまで思いをめぐらせていきます。「食べること」「生きること」を支えているのは何なのか。小さな家族史から、人間社会のあり方まで考えさせられる秀逸なノンフィクションです。
 

2時間 de 資源史
村山 秀太郎 / 秀和システム 
「スタディサプリ」などで世界史の講義を担当する予備校教師である著者が、「資源」を軸に国際社会の動向を読み解きます。「石炭」「石油」「天然ガス」「水」「半導体とレアメタル」という5つの資源にスポットを当て、現在の世界における影響力だけでなく、発見から実用化、現在の覇権に至るそれぞれの歴史から振り返るのが本書の特徴です。資源の獲得が、戦争や気候変動のようなグローバルな問題ともわたしたちの日常生活とも深く結びついていることがクローズアップされる昨今。まさに“今”読んでおきたい一冊です。
 
 

誰もがデザインする時代のデザイン

エツィオ・マンズィーニ 
ビー・エヌ・エヌ

「いまどきの若者」の150年史 

パンス 
筑摩書房

風土建築をつくる旅 

小林広英 
学芸出版社

フェイクニュースの免疫学 

サンダー・ヴァン・リンデン 
みすず書房

フロイトの灯 

西見奈子 
筑摩書房

ことばを学ぶとはどういうことか 

松田真希子 
筑摩書房

生物とAIのあいだで哲学する

高木駿、清水颯 
青弓社

軍民両用化する技術

大庭弘継 
光文社

鶏まみれ

繁延あづさ 
亜紀書房

2時間 de 資源史 

村山秀太郎 
秀和システム