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これからの東京~ビジネスと感性が融合する都市像~

更新日 : 2008年03月04日 (火)

第13章 人的交流のゲートウェイを目指すなら、東大の民営化を

米倉誠一郎: 日本の高等教育機関については僕も言いたい。スタンフォード大学のフーバータワーの広場に立っていると肌で感じますよ。『ここには、世界中から「俺は何かやりたい」という人間が集まっているんだな』と。三四郎池に座っていても寒いだけ(笑)。なぜかというと、世界を相手にしてないからなんです。

隈研吾: 残念ながら、デザインや建築を勉強するために日本の大学に留学する人はいない。でも、「日本の設計事務所で働きたい」という人間はいっぱいいるんですよ。日本の建築家は世界で高く評価されているから、「そこで働きたい、技を磨きたい」という人間はいっぱいいる。

アメリカの建築は今は全然駄目なんです。国家の知恵が映像とかITに流れてしまって、アメリカの建築文化自体はガクンと落ちちゃっている。けれど、建築の大学だけは健在。それはアジアから先生を呼んでくるからです。中国人や日本人の先生をバンバン呼ぶ。自国の先生がいるというんで、その国の学生が留学する。

アメリカの大学は受講生が減ると責任を追及されるから、大リーグで各国から選手を集めてくるみたいに「今年は日本から誰君、中国から誰君を呼んでやろう」とチーム編成する。そして「こんな凄いレクチャーシリーズをやるんだよ」と世界中にPRして、ポスターを配りまくる。そういう戦略なんて、日本の大学で見たことないですよね。

竹中平蔵: ずいぶん前ですが、慶応大学のゼミ生を台湾国立大学に連れて行き、合同のゼミナールをしました。台湾国立大学のゼミ生に「あなたのライバルはどこだ」と聞いたら、全員が「シンガポール国立大学だ」と答えました。日本の大学生にはこういう答えはできないでしょうね。慶応大学のライバルは早稲田じゃない。そんな狭い了見じゃダメなんです。

六本木ヒルズのライバルは東京ミッドタウンじゃない。世界のもっと別の所にあるはずなんです。我々自身がすべての分野で「僕の競争相手は世界だ」という発想を持たなきゃいけない。

「ゲートウェイ国家構想」においても、人的交流のゲートウェイになるには高等教育機関が重要です。そのための1つの方策は、東大の民営化だと思います。

東大は日本では一番いい大学だと言われているけれども、世界の大学ランキングでは20位。5位以内に入るには、文部科学省の制約から解き放って世界と競争させることです。郵政の民営化に賛成した東大の教授は、東大民営化には反対できないはずですよ(笑)。

米倉誠一郎: 賛成です(笑)。

竹中平蔵: 東大の民営化がいろいろな改革の突破口になる。だから大事なんです。

もう1つだけ申し上げておきたいのは、スタンフォード大学とシリコンバレーは大変いい教訓を日本に与えました。「自分の国にもシリコンバレーをつくりたい」と思っている国はたくさんあるでしょう。重要な点は、本場アメリカでは「シリコンバレーをつくるのに、政府は何もしていない」ことです。税制とか規制緩和といった枠組みをつくっただけで、政府自身がシリコンバレーをつくったわけではない。だからできたともいえます。

日本のメディアは「政府は何をやっているんだ。何かやれ」と騒ぐけれど、政府が具体的に何かやったら駄目なんです。政府の役割は枠組みをつくることであって、実際につくることじゃない。そういう冷静な見方が必要だと思います。

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