記事・レポート

CATALYST BOOKS vol.6

理解を深める1冊

更新日 : 2023年01月23日 (月)
社会における様々な「つながり」を見直し、常識を再構築するカタリスト・トーク』。
ここでは、毎回トークの中でゲストの方々にご紹介いただいた「テーマの理解促進につながる1冊」を振返ります。

イベントに参加した方は「より深く知る」ために、イベントに参加していない方は「良質な書籍に出会う場」として、このページをご活用ください! <各イベント開催日の翌週に公開予定>

Index

 CATALYST BOOKS vol.1理解を深める1冊
 CATALYST BOOKS vol.2理解を深める1冊
 CATALYST BOOKS vol.3理解を深める1冊
 CATALYST BOOKS vol.4理解を深める1冊
 CATALYST BOOKS vol.5理解を深める1冊
 CATALYST BOOKS vol.6理解を深める1冊

石田英敬さんが紹介するカタリスト・ブックス
~オンラインがデフォルトになった現代世界の原理を知る~

高梨直紘さんのカタリスト・トークでは、普段の生活では触れることのないアカデミアの研究テーマに触れることで自分が無意識のうちに日常的に囚われている思考の枠組みを外し、新しい発想や創造的なアイデアを得るために凝り固まった思考をほぐすことを目指しています。

シリーズ第4回は「新記号論」を研究する石田英敬さんをお迎えし、私たちが現在当たり前のように生きる情報化社会の原理となった17~18世紀のライプニッツなどの哲学者が確立させた「記号論」を振り返り、スマホの登場によってコンピューターといつでも接続することが当たり前となった私たちの世界がどのように規定されているのかを俯瞰して辿りました。

そもそも、いまの人工知能に繋がるコンピューターの仕組みの原理を発案したのが、哲学者ライプニッツだったということはヨーロッパでは誰もが当たり前に知っている常識ですが、アジアでは知られていません。

いまの世界の基になる設計図を描いたのは誰なのか?現代のスマホを始めとしたコンピューター文明の原理を作った側のことを知らずして、将来に向けて技術を発展させていくことはできない、と説く石田さん。ご紹介くださったカタリスト・ブックスは、人間の知能の発達と道具の関係を原理から考えるものから現代、そして未来のコンピューターと人間の関係までを見通した3冊です。

1冊目は人類の進化の本質を太古から現代に至るまでの生物学的、文化的な進化実証的、理論的に提示しようとする『身ぶりと言葉』(アンドレ・ルロワ=グーラン著)です。二足歩行によって脳と手足を発達させた人類が、どのように道具を作り、使い、知性を育んでいったかが描かれています。
現代に生きる私たちが当たり前のように使うスマホやパソコン、デジタルツールの根本を考える上で、太古からの人類の進化の過程そのものに迫ることが、その本質を理解することを可能にするのだと考えさせられます。

2冊目は石田さんご自身の研究に関連する『新記号論』(石田英敬、東浩紀 著)です。石田さんはイベント当日の解説で17世紀の哲学者ライプニッツらが確立した記号論を「バロック記号論」、20世紀のラジオ・テレビの出現により発展したマスメディアと大衆文化の時代の記号論を「現代記号論」と呼び、21世紀の時代に記号論をアップデートするご自身の研究を「新記号論」と呼びました。本書では、石田さんが東浩紀さんに「新記号論」を講義する形で展開されています。

コロナ禍で普及したリモートワークのように、リアルに場所を共有していなくても、コンピューターのインターフェース上で人々が生活するようになった現代。人間の動き(精神と身体)と、その裏で動くプログラム(機械)の情報処理の両面関係が成り立っているのが21世紀の私たちの生活のデフォルトになっていて、それを詳しく研究していくのが新記号論だといいます。

3冊目は、『クララとおひさま』(カズオ・イシグロ著)です。ノーベル文学賞受賞者のカズオ・イシグロ氏によるこの小説は、人工知能を搭載したロボット(Artificial Friend, AF:人工友だち)のクララと病弱な少女が出会い、一緒に生活をする中で友情をはぐくんでいく様子が描かれています。現代の私たちの生活では、車はドライバーをアシストする機能・自動運転化が進み、スマホに話しかけると音楽をかけてくれるなどのSiriを活用する場面も当たり前になってきています。近い将来、この本が主題としているような、ロボット(アンドロイド)と人間が愛情関係を築き、共に生活をしていくことも現実のものとなるのではないか、と石田さんは言います。

実生活にいながらも、インターフェース上でオンラインと繋がることが大半になったときに、実時間とリアルな存在や場所の意味はどうなっていくのでしょうか?過去から捉え直して未来を考えるのに適した3冊です。


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 CATALYST BOOKS vol.2理解を深める1冊
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 CATALYST BOOKS vol.5理解を深める1冊
 CATALYST BOOKS vol.6理解を深める1冊

身ぶりと言葉

ルロワ=グーラン,アンドレ
ちくま学芸文庫

新記号論—脳とメディアが出会うとき

石田英敬 : 東浩紀
ゲンロン

クララとお日さま

カズオ・イシグロ
早川書房