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どうすれば日本人は、一流のインベスターになれるのか?

三田紀房、松本大が語る「投資の意義」

更新日 : 2014年04月21日 (月)

第5章 一流のインベスターが注目する情報とは?


 
運をつかむ人、逃してしまう人

佐渡島庸平: 株式投資の世界では、「あのとき買って(売って)おけば……」というケースが多々生じると思います。運をつかむ人と、逃してしまう人。何らかの違いはあるのでしょうか?

松本大: 動物が獲物を狙うときは、前傾姿勢になります。同様に、いつでも飛び出せる姿勢で常に状況を見ていなければ、目の前をチャンスが通り過ぎても気づくことができません。しかし、前傾しすぎて冷静さを失ってしまえば、判断を誤ります。常に冷静な状態で、前傾姿勢をとる。バランスのとり方が難しいのですが……。

佐渡島庸平: 松本さんがトレーダーだった当時、どのような情報に注目されていましたか?

松本大: 債券や金利に絡む仕事が中心でしたから、景気の浮沈には常に注意を払い、国内外のニュースやレポートにはたえず目を通していました。特に国内の状況を知るうえでは、若い頃から続けていることがあります。タクシーに乗った際、必ず運転手さんに「最近、景気はどうですか?」と尋ねるのです。乗客の増減や、他のお客さんの会話の内容。また、景気が良くなれば物流が増えるため、途端に道路が混み始めます。常に街を走っている運転手さんだからこそ、知り得る情報がある。そのなかに景気の動向を示す大きなヒントがあるのです。



情報には上流と下流がある

佐渡島庸平: 債券と株式投資では、情報を見るポイントは変わりますか?

松本大: 債券はマーケット自体が巨大で、景気という大きな流れに左右されますから、景気の先行きを読み解くことがポイントになります。流れが大きいだけに、分かりやすい部分もあります。景気が良ければ債券価格は下がり、金利が上がる。景気が悪ければ債券価格は上がり、金利が下がる。本来は上がっていくべきなのに下がる、というねじれ現象はほとんど起きません。

ところが株式の場合は、企業の業績だけでなく、人事や新規事業、不祥事など様々な要素によって価格が左右され、マーケット全体の流れに関係なく上下動します。先行きを予測するために大切になるのは、正確な情報をいち早く入手することです。

私はよく「情報には上流と下流がある」と言っています。自分の手元にある情報が、ファーストハンド・データ(一次情報)なのか、セカンドハンド・データ(二次情報)なのかで、判断も結果もまったく変わります。ファーストハンドの情報を持つ人が投資し、価格が動いてしまった後に自分が投資する可能性もあり、その場合、思うような結果は得られません。株式の場合は、手にする情報の鮮度が重要になるのです。

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インベスターZ(1)

三田紀房
講談社