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どうすれば日本人は、一流のインベスターになれるのか?

三田紀房、松本大が語る「投資の意義」

更新日 : 2014年04月24日 (木)

第6章 どうすれば運を引き寄せられるのか?


 
佐渡島庸平: 成功を導くために必要な努力とはどのあたりになるでしょう?

三田紀房: 漫画でも投資でも、綿密な情報収集といった努力は重要ですが、漫画は運の要素も大きいと思います。面白いアイデアがあれば、すべてうまくいくかと言えば、意外とそうでもない。編集長や編集者の好みに合わなければ、ボツになります。あるいは、すでに似たような漫画が世に出ていてもダメで、社会の流れに合致しない漫画も、読者に受け入れられません。良いアイデアはありながらも、なかなか運がついてこないケースは結構多いように思うのです。

運を味方につけるためには、いま挙げたようなことを少しずつ改善する必要があります。編集長や編集者の好みを分析し、味付けを調整する。現在の社会の流れを把握し、数年後の社会の流れをイメージしながら、オリジナリティを見つけていく。運があると思われる方向に、自分からアクションを起こしていくのです。やはり、運は何かにチャレンジした人にこそ訪れるものですから、そうした努力が必要になると思います。



リスク管理で運の浪費を防ぐ

松本大: 「運」という言葉は、投資の世界でも非常に重要なポイントとなります。どれほど頑張っても、運が悪ければダメ。反対に、運だけで儲かる人もいます。その場合は「運で勝った」とは言わず、「実力で勝った」と言います(笑)。

ジョージ・ソロスやウォーレン・バフェットなど、巨大投資家と呼ばれる人たちは、世界規模で20人ほどの小さなコミュニティをつくり、経済情勢などの情報を交換しています。このコミュニティのなかに運の悪い人が現れれば、たちまち弾き出されてしまいます。巨大投資家でさえ、運を重視するのです。私も、運の重要性については「運は寂しがり屋なので、常に寄り添いたがる。だから、運の良い人と付き合い、運の悪い人とは付き合わないこと」と様々な場でアドバイスしています。

最近、私が考えていることは、運とリスク管理の関係です。一般的に、運はフワフワとしてつかみ所がないものであり、リスク管理とはまったく別物だと考えられています。けれども、きちんとリスク管理を行っていなければ、知らぬ間に運を浪費してしまい、むしろ、悪運すら引き寄せてしまうかもしれません。運を引き留め、育てていくためには、リスク管理を通じて運の浪費を防いでいくことが重要だと思うのです。

運を引き寄せるための努力という点では、もう1つあります。ソロモン・ブラザーズに入社した直後の私は「運がなかった」と考えていました。猛者揃いの社内では、面白そうな仕事は自分にはやってこない。さらに、プラザ合意後の急激な円高の影響が直撃し、米ドル建ての給料は下がり続けるばかり。「もうダメだ」とまで考えていました。しかし、わずか2週間で考えを改めました。物事には必ず、流れやバイオリズムがあると思ったからです。

野球にたとえるのならば、いつか来る良い球をジャストミートし、遠くに飛ばすためには、普段から素振りをしていなければいけない。私はそのように考え、ひたすら素振りを繰り返しました。やがて、入社1年ほどでチャンスが訪れたのです。もちろん、ジャストミートしました。

運が巡って来たときに、俊敏かつ正確に反応できなければ、たちまち運は逃げてしまいます。だからこそ、チャンスが訪れたときのために普段から鍛錬しておくことが大切なのです。

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インベスターZ(1)

三田紀房
講談社