記事・レポート

どうすれば日本人は、一流のインベスターになれるのか?

三田紀房、松本大が語る「投資の意義」

更新日 : 2014年04月18日 (金)

第4章 漫画も投資も結果がすべて


 
数字が悪ければ即、戦力外通告

佐渡島庸平: 松本さんは「マーケットで自分のアイデアを試す」ことが一番の魅力だと言われていました。いっぽう、三田さんはサラリーマンなどを経て、30歳で漫画の世界に入り、20年以上続けてられています。漫画を描くことの魅力とは何でしょうか?

三田紀房: 私も松本さんと同様です。自分のアイデアを漫画として表現して、リアクションを得ることが楽しいからです。アイデアが出続ける限り、死ぬまで続けるでしょう。生涯現役で好きなことができるのは、幸せなことだと思います。

もう1つは、漫画は完全な実力主義、数字がすべての世界だという点です。極端に言えば、編集者は数字しか見ません。読者アンケートは何位か、単行本は何冊売れているのか。評価基準は、読者の「面白い」「つまらない」です。評価が芳しくなければ、すぐに戦力外通告を受けます。『インベスターZ』に登場する投資部のキャプテンも、「とにかく数字だ。結果を出せ!」としか言いません。このセリフと僕の心理状態はシンクロしています。結果ですべてが決まるというシンプルさが、漫画家という仕事の魅力です。



自信と謙虚さのバランス

松本大: トレーダーもまったく同じです。儲かるか、損をするか。結果により、評価がハッキリと分かれます。ただし、成功しないトレーダーには特徴があります。損をしたときに「自分は間違っていない。マーケットが間違っているのだ」と考えてしまうのです。本当はマーケットが常に正しいのですが。

佐渡島庸平: 漫画も同じです。「面白い漫画なのに、理解しない読者はおかしい!」と言う人がいます。

三田紀房: そうした考え方もあながち間違いではないと思います。アシスタントから独立できるかどうかの分岐点は、自信の有無にあります。自分の漫画に対して自信を持てない人は、なかなかデビューできません。松本さんが指摘されたのは過信だと思いますが、自信については多少なりとも持つことは悪くはないと思います。

佐渡島庸平: トレーダーの場合、どの程度自信を持っていたほうがよいのでしょう?

松本大: 個性の問題になります。自信満々で優れた結果を出すトレーダー、自信はなさそうでも結果が出ているトレーダーなど、様々なタイプが存在します。したがって、どちらが成功しやすいとは一概に言い切れないと思います。

1つだけ言えることは、謙虚さを持たない人は大成しないことが多いですね。自分を過信せず、「マーケットは自分の理屈とは違う動き方をする場合がある」という前提で物事を考えることが大切です。謙虚な視点で物事を見て、丹念に研究し、経験と知識を蓄積してきた人は、他人から見ても自信や余裕が感じられます。それはほかの分野においても共通することだと思います。

関連書籍


インベスターZ(1)

三田紀房
講談社