オピニオン・記事

『日本最悪のシナリオ』に学ぶ危機管理とリーダーシップ

“想定外”の危機を乗り越える方法とは?

経営戦略政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2014年02月21日 (金)

第4章 危機におけるリーダーシップ (3)Communication(危機広報)

塩崎彰久(パートナー弁護士 長島・大野・常松法律事務所)

 
クライシス・コミュニケーション

塩崎彰久: 危機におけるコミュニケーションには、「クライシス・コミュニケーション」と、「リスク・コミュニケーション」があります。クライシス・コミュニケーションは、パニックを避け、人々に適切な行動をとってもらうために、危機の情報や行動指針を伝達することです。まずはクライシス・コミュニケーションの留意点を見ていきましょう。

<危機の意味づけはリーダーの最重要課題>
説明不足や不明瞭なメッセージを発信していれば、不信感は瞬く間に広がり、パニックはますます深まってしまいます。危機広報のゴールは、他者(外部)から信頼を勝ち取ることです。リーダーは社会的批判を浴びる中でも、危機についてウソのない明確な情報を開示し続け、最終的に外部から好意的な信頼を得なければなりません。

<内容と話し手への信頼が大切>
後日、リーダーが自身の発言を撤回するようでは、発言への信頼性は失われていきます。信頼の低下は、危機時の最初のコミュニケーションに起因するケースが多いのです。最初に何をどのように伝えるのか。それが肝心です。

<最初のメディアサイクルを逃すな>
危機の発生を確認した後は、24時間以内に何らかの形で情報発信を行わなければなりません。そうしなければ、「問題の根源は○○にある」「まだ問題を隠ぺいしているのではないか」などと、他者が勝手な意味づけを行ってしまい、状況は余計に悪化してしまいます。素早い情報発信こそ、危機を最小限に抑える方法なのです。

リスク・コミュニケーション

塩崎彰久: リスク・コミュニケーションは、危機がもたらす害悪の程度を広く伝え、相互理解を促すためのコミュニケーションです。このとき、様々の部署が各々の発言をしていたら、混乱はますます深まってしまいます。情報発信を行う部署は、平時から一元化しておきましょう。

<迅速かつ正確のジレンマ>
正確な情報を発表するためには、内容を検証する時間が必要です。同時に、情報発信のスピードも求められます。どのようにこれらのバランスを保つのか。リスク・コミュニケーションにおいて、リーダーが最も頭を悩ませる問題です。

<ソーシャルメディアを通じた情報収集と反応分析>
従来のリスク・コミュニケーションは、発信だけの一方通行でした。しかし、現在は発信に対して人々がどのように反応したのか、そこまで把握する必要があります。ソーシャルメディアを通じて、新たな危機の発生をキャッチするのです。たとえば、ツイッター上で自社の情報を検索し、結果をモニターするだけでも非常に有効な情報が得られます。

最悪のシナリオを排除するな

塩崎彰久: 危機を想定し、平時から行うべき事柄をご紹介します。まず、緊急連絡リストは常に持ち歩きましょう。手帳でもスマホでも構いません。いざという時、重要な人物と連絡がとれないことは、状況を悪化させてしまう大きな要因となります。

トレーニングは、危機を想定し徹底的に行いましょう。予定調和では、いざという時に役に立ちません。危機管理の成功ポイントは、多様な経験によりパターン認識を増やすことです。平時から複数の危機レベルのシナリオを想定し、実際のトレーニングには必ず、臨機応変な判断が求められる場面を組み込んでおくのです。日頃から様々なケースを想定し、経験値を高めていれば、危機発生時も冷静かつ柔軟な対応ができるようになります。

最後に1つ。最悪のシナリオは、絶対に排除しないでください。こんなことは起きないだろう。ここまでは想定しなくてもいいだろう。危機に対して、これらの言葉は当てはまりません。日頃から最悪のシナリオまで含めて対策を講じておくことで、「想定外」の数は減らせるのです。

関連書籍

『日本最悪のシナリオ 9つの死角』

日本再建イニシアティブ
新潮社


該当講座

“日本最悪のシナリオ”に学ぶ「危機管理」と「リーダーシップ」
竹内幹 (一橋大学大学院経済学研究科 准教授)
塩崎彰久 (パートナー弁護士 長島・大野・常松法律事務所)
荻原国啓 (ピースマインド・イープ株式会社 代表取締役社長)
船橋洋一 (一般財団法人日本再建イニシアティブ理事長 慶應義塾大学特別招聘教授)

船橋洋一(一般財団法人日本再建イニシアティブ理事長)他
一つの危機はどのような経緯で最悪な状況を迎えるのか、何がトリガーになり、負の連鎖の生み出すのか、危機悪化の原因とは何なのか、最悪シナリオの例より検証します。最悪の状況を考えることにより、リスクを認知し、最悪から逆算することで、今すべきこと、将来に向け備える必要があることを明確にしていきます。後半は、「危機の本質を理解するためのアジェンダ設定力」「リーダーシップ・組織のあり方」など議論を深めます。


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