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『日本最悪のシナリオ』に学ぶ危機管理とリーダーシップ

“想定外”の危機を乗り越える方法とは?

経営戦略政治・経済・国際キャリア・人
更新日 : 2014年02月18日 (火)

第2章 危機におけるリーダーシップ (1)Assessment(状況把握)

塩崎彰久(パートナー弁護士 長島・大野・常松法律事務所)
塩崎彰久(パートナー弁護士 長島・大野・常松法律事務所)

 
危機を定義する3つの要素

塩崎彰久: 危機には、突然訪れる危機と、緩やかに訪れる危機があります。本日は、ビジネスにおける危機管理、特に突然訪れる危機への対応について紹介します。

危機の種類は様々です。企業を対象とすれば、不祥事による危機、情報漏洩などの危機。地震や洪水、台風といった自然災害による危機。さらに、グローバルに起こる経済的な危機。私たちは普段、こうしたものをすべてまとめて危機と呼んでいます。しかし本来、危機を定義する際には3つの要素があります。1つ目は、重大な害悪が迫っていること。2つ目は、緊急性が高いこと。3つ目は、情報不足です。これら3つの要素が満たされた場合を本当の「危機」と呼びます。

Crisis LeadershipのABC

塩崎彰久: 危機管理におけるリーダーのあり方には、基本となる3つの原則があります。Assessment(状況把握)。Bold Action(決断・行動)。Communication(危機広報)。私はこれらをCrisis LeadershipのABCと呼んでいます。3つの原則を常に念頭に置くことで、自分たちはいま、危機のどのフェーズにいるのかを俯瞰・整理できるようになります。まずはAssessment(状況把握)の留意点から見ていきましょう。いかなる危機においても、ここが出発点となります。

<多くの危機には予兆がある>
多くの場合、危機は何らかの予兆を経てから到来します。たとえば、米国のスペースシャトル・チャレンジャー号の爆発事故。事故は突然起こったわけではありません。シャトルが飛び立つ前、現場の技術者は「当日の気温が低すぎれば、部品が破損して爆発する可能性がある」と警告していました。しかし、NASAの幹部はスケジュールを優先し、警告を無視したため、あの悲しい事故が起こったのです。まずは、目の前にある予兆を見逃さない、あるいは、様々な情報から予兆を読み取ることが大切になります。

<危機を宣言するのはリーダーの責任>
危機の宣言は、状況が平時から有事へと切り替わったことを広く知らしめ、周囲の意識を変えていくことです。どのようなタイミングで危機を宣言すればよいのか。その判断はリーダーに委ねられています。

<物理的な司令塔室の早期設置を>
危機が起きれば、必ずパニックが起こります。皆が勝手な行動をとり、情報も錯綜します。したがって、危機発生時に人とモノを集める特定の場(司令塔室)を、平時から決めておくことが肝心です。危機発生時において、メールや電話は意味をなしません。顔を付き合わせて行う情報交換が、迅速な対応につながります。

<危機発生時には情報伝達の低層化を>
情報伝達の階層が多いと、個々の階層で検討や判断が行われるため、時間だけが過ぎていき、貴重な判断のタイミングを逃してしまいます。危機時は、情報伝達の階層をできる限り圧縮する。可能であれば1層に、少なくとも2層、3層に留めることが望ましいでしょう。

<情報バイアス(先入観、安全神話、隠ぺい)に注意せよ>
危機発生時に集まる情報を見る際は、「バイアスがかかっていないか」と、一度疑ってみる。たとえば問題が起きた際、担当部署から「問題ありません」という情報が上がってきたとしても、その部署は情報を隠ぺいする動機を持っているかもしれません。また、常識や先入観、安全神話の妄信により、重要な情報を見落としてしまう可能性もあります。危機管理における重要なチェックポイントです。

<完璧な状況判明を期待しない>
「詳細な状況が分からない段階では判断できない。もう少し待とう」と言うリーダーがいます。しかし、危機発生時において、すべての状況を完璧に把握することは非常に難しいことです。たくさんの情報を得ようとすれば、対応は遅れます。不確実性の高い状況でも判断を下し、次のステップに進んでいかなくてはなりません。

関連書籍

『日本最悪のシナリオ 9つの死角』

日本再建イニシアティブ
新潮社


該当講座

“日本最悪のシナリオ”に学ぶ「危機管理」と「リーダーシップ」
竹内幹 (一橋大学大学院経済学研究科 准教授)
塩崎彰久 (パートナー弁護士 長島・大野・常松法律事務所)
荻原国啓 (ピースマインド・イープ株式会社 代表取締役社長)
船橋洋一 (一般財団法人日本再建イニシアティブ理事長 慶應義塾大学特別招聘教授)

船橋洋一(一般財団法人日本再建イニシアティブ理事長)他
一つの危機はどのような経緯で最悪な状況を迎えるのか、何がトリガーになり、負の連鎖の生み出すのか、危機悪化の原因とは何なのか、最悪シナリオの例より検証します。最悪の状況を考えることにより、リスクを認知し、最悪から逆算することで、今すべきこと、将来に向け備える必要があることを明確にしていきます。後半は、「危機の本質を理解するためのアジェンダ設定力」「リーダーシップ・組織のあり方」など議論を深めます。


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