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おとな絵本

好きな本がみつかる、ブックトーク

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2013年12月16日 (月)

第1章 おとな絵本とは?

ふつう「絵本」と言えば、幼児や児童向けの本で、物語が幾つかの連なっている絵で描かれており、それぞれの絵に物語の展開が文章で簡潔に書かれているもののことを思い浮かべます。その中には大人が読んでも感動を覚えたり、新しい発見がある読み応えのあるものも少なくありません。こういったものを‘おとな’絵本とし、お話いたします。

講師:澁川雅俊(ライブラリー・フェロー)
※本文は、六本木ライブラリーのメンバーイベント『アペリティフ・ブックトーク第28回 おとな絵本』(2013年4月12日開催)のスピーチ原稿をもとに再構成しました。



澁川雅俊:  「おとな絵本」とは大人が見たり、読んだり、時には眺めたりして愉しむ絵本のことです。中には人目に触れずに見て一人でニヤニヤする類の大人の絵本があることは事実ですが、それらはここでは取り上げません。
絵本は、絵でもって内容の趣意を表現するわけですが、大概はその趣意を読み手に正確に伝えるために短くて簡潔な文章テキスト(「ことばがき」と言うこともある)が挿入されています。物語絵本のほかに、エッセイ絵本や詩の絵本もあります。ここではそれらの文学的作品に絞って紹介することにしました。
ところで、挿絵本と呼ばれる本があります。絵本との境界線は文章と絵の割合で決められていますが、挿画数が多いものや絵本の雰囲気の濃い絵入り物語本は含めることにしました。また、絵本と似て非なるものに漫画がありますが、いささか気ままな選択で幾つか拾い上げたものもあります。

●創作絵本

創作絵本とは文字通り新しく創作された絵本で、神話や伝説、あるいは名作古典などを絵本化した作品のことではありません。画家である絵本作家が単独で創作することもありますが、多くは物語作家と画家がコラボレートして制作しています。

最近もっとも評判が高かった創作絵本は、『アライバル』(ショーン・タン、小林美幸・訳/河出書房新社) でしょう。一人の男が見知らぬ土地に移住し、そこで生まれ変わり、成熟していく、という内容です。過去を一切捨てる哀感と新しい人生を拓いていく喜びを、文字言語を一切使わず絵のみで表現しています。

この本が評判になったのは実はことばがきのない絵本だからなのですが、その種の絵小説は、このオーストラリアの絵本作家の発想が最初ではありません。木版画120枚で綴られた『狂人の太鼓』(リンド・ウォード/国書刊行会)があります。これは80年ほど前に米国で出された本で、10年ほど前に日本で復刻出版されました。その時この本もちょっとばかり評判になりましたが、完璧に読み下した人はいないようです。解説によると、奴隷商人がアフリカから持ち帰った太鼓が、その後の一家に次々と恐るべき死と災厄をもたらす、という内容のようです。またいまから30年ほど前に国内出版された『アンジュール』〔バンサン〕は、野の道を疾走する車の窓から投げ捨てられた子犬の長いさすらいを鉛筆で描いた文字のない絵本で、これも話題になりました。これは基本的には‘こども’絵本ですが、大人にもたくさんのファンがいます。


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