記事・レポート

為末大の「自分軸」のつくりかた

軸が決まれば、自分の存在を最大化できる

カルチャー&ライフスタイルキャリア・人文化グローバル
更新日 : 2013年05月16日 (木)

第8章 「幸せ」の捉え方

写真左:竹中平蔵(アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長)写真右:為末大(元プロ陸上選手)
写真左:竹中平蔵(アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学教授 グローバルセキュリティ研究所所長)写真右:為末大(元プロ陸上選手)

 
竹中平蔵: 本日は「成功」「勝利」といった言葉から始まりましたが、人生を語る上では「幸せ」という概念も重要になります。為末さんはこの言葉をどのように位置づけられていますか?

為末大: 2001年の世界陸上(カナダ・エドモントン大会)で初めて銅メダルをとった時、最初の数カ月間は本当に幸せでした。しばらくするとメディアの方々から「次は何色のメダルですか?」という質問が飛んでくるようになってきました。賞賛と期待を集めることは、そもそも僕が望んでいたことなのでうれしくも感じました。しかし、その一方で、“山登り”は終わることがないのだと感じました。山登りと表現するのは、僕がそんな人生観だからですが。

山に登り始めた時は、山頂まで行けば、すべてを解決する素晴らしい答えがあると思っていました。でも、実際にそんなものは見当たりませんでした。さらに言うと、これは逆説的な表現かもしれませんが、実は山登りのプロセスを充実させるために、あえて自分は山頂を高く設定しているのではないかと思うようになりました。競技生活を終えた現在は、幸せとは登頂した喜びもそうですが、山に登っているプロセスの双方から得られるものだと感じています。

竹中平蔵: なるほど。僕の好きな言葉に「The dream is impossible dream.(夢とは見果てぬ夢である)」という言葉があります。見果てぬ夢であっても、それに登っていくプロセスそのものに対する喜びや達成感のようなものが、人間が生きていく上ではとても重要な意味を持っているわけですね。

為末大: メダルを2つとりましたが、目指していたものとは少し色が違っていたため(笑)、達成感という意味では少々難しいところがあります。しかし、別の側面から考えると、僕はとても幸せ者だった。「絶対に金メダルをとってやる」と、全身が野心に染まっていた時期があり、あの時の興奮は、誰にも経験できないものだったと思います。

竹中平蔵: 「大切なものが多くなると、手段はぶれる」という発言がありました。それを聞いていて、行動経済学の「損失回避傾向」を思い出しました。これは同程度の利益と損失があった場合、人間は相対的に損失のほうを大きく評価してしまう、というものです。つまり、損得勘定をする際に人間は何かを得ることよりも、失うことに対して敏感になる。だから、所属する会社や組織を簡単に変えられない、という保守的な感情も起こるわけです。

そうした意味でも、為末さんがお話しされていた「マジョリティの評価」から距離を置く、ということが、“個の時代”においてはとても重要になるのだと思います。人生は有限なのだから、もっと自由に選択していこう。そうすれば、自分の可能性は最大化していける、と。本日のお話は、本当に魅力的なキーワードに満ちていたように思います。

為末大の「自分軸」のつくりかた インデックス


該当講座

自分軸で挑む~21世紀“個の時代”に必要なこと~
為末大 (Deportare Partners代表)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)

為末大氏×竹中平蔵氏
選択肢が広がり、価値観も多様化する今の時代、後悔しないため、よりよく生きるためにも、既成概念にとらわれることなく、自分の価値基準を持ち、自分で判断することが大切ではないでしょうか。『走る哲学』、『走りながら考える』等の著書を出版し、twitterでは14万以上のフォロアー、そして「為末大学」を立ち上げる等、常に自身の考えを発信し続ける為末氏に、「自分の軸を持つ」とは何かをお話いただきます。


キャリア・人 グローバル 文化