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為末大の「自分軸」のつくりかた

軸が決まれば、自分の存在を最大化できる

カルチャー&ライフスタイルキャリア・人文化グローバル
更新日 : 2013年05月09日 (木)

第5章 選択の悩みの背景にあるもの

為末大(元プロ陸上選手)

 
なりふり構わない自分でいられるか

為末大: 人生の進路の選択について悩む。それは往々にして、自分の人生で本当に大切なものについて悩んでいることが多いように感じます。

僕も企業に所属しながら競技を続けていこうか、それともプロになろうかと悩んでいた時期がありました。当時、本当に悩んでいたのは、純粋に速さを追い求めるアスリートとしての人生と、会社員として生活を保障されながら走り続ける人生、どちらを選ぶのか? それを必死に考えていたのだと思います。カッコ良く表現すると、挑戦と安定の間で揺れていたわけです。

アスリートが最も力を発揮するのは、1つの目的のためにすべてを注ぎ込んでいるとき。つまり、なりふり構わないときなのです。そうなるためには、2つも3つも大きな目的があってはいけないのです。実際には結構大変なのですが(笑)、トップを目指していく上ではこれが重要なポイントになると、プロになってみてから気がつきました。

仮決めでもいい。大切なものを絞る

為末大: アスリートと異なり、これがまた人生となれば、大切なものは複数出てきてしまいます。あれもこれもとある中で、「人生の中で大切なものを明確に順位づけしろ」と言われたら、テーマが重すぎてしまい、選ぶのはとても難しいと思います。

その時の仮決めでも良いから、ひとつ決めてみる。これが「自分軸」を考えていくプロセスの入口になると思います。最初から本当に大切なものを決めなくてもいい。少しずつ人生を進み、途中で違うと思ったら、他に変えてみる。進みながら仮決めを繰り返していくのです。

僕自身もいま、漠とした形ながらも仮決めしていることがあります。そうやって進んでいくうちに、自分の人生において大切なものが見えてくると考えています。また、自分が決めたものを評価するのは、世の中ではなく、あくまでも自分自身。それだけは見失わないようにしていきたいと思っています。


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該当講座

自分軸で挑む~21世紀“個の時代”に必要なこと~
為末大 (Deportare Partners代表)
竹中平蔵 (アカデミーヒルズ理事長/慶應義塾大学名誉教授)

為末大氏×竹中平蔵氏
選択肢が広がり、価値観も多様化する今の時代、後悔しないため、よりよく生きるためにも、既成概念にとらわれることなく、自分の価値基準を持ち、自分で判断することが大切ではないでしょうか。『走る哲学』、『走りながら考える』等の著書を出版し、twitterでは14万以上のフォロアー、そして「為末大学」を立ち上げる等、常に自身の考えを発信し続ける為末氏に、「自分の軸を持つ」とは何かをお話いただきます。


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