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本から「いま」が見えてくる新刊10選 ~2026年5月~

更新日 : 2026年05月26日 (火)

毎日出版されるたくさんの本を眺めていると、世の中の“いま”が見えてくる。
新刊書籍の中から、今知っておきたいテーマを扱った10冊の本を紹介します。

今月の10選は、『技術の思想史 哲学者は技術をどう考えてきたのか』や『人文知は武器になる』など。あなたの気になる本は何?

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 技術の思想史
哲学者は技術をどう考えてきたのか
中山元 / 平凡社


カント、ニーチェ、フーコー、アーレント...など、数々の西洋哲学を代表する書物の翻訳を手掛けてきた著者が、一つのテーマを軸に哲学者が何を語ってきたのかを辿るシリーズの最新刊。本書は、古代ギリシアでアリストテレスが提唱した「テクネー」から、ユヴァル・ノア・ハラリが語る現代のAIまで、「技術」を縦軸にした哲学史です。 現代において “技術” というと、横文字の “テクノロジー” 、つまり最先端のデジタル機器、ロケットなどの工学技術、バイオテクノロジーなどを思い浮かべがちですが、哲学者たちが思考の対象としてきた “技術” を歴史的に追っていくと、職人的な技法、手の延長としての道具、統治のシステム、人間を隷属させるかのような巨大な機械など多岐にわたり、それぞれの時代で “技術” と人間の関わり方、捉え方が大きく変化してきたことがわかります。

「新たな技術は常にわたしたちの能力を高めると同時に、わたしたちがそれまで想像していなかったような新たな生活形態と新たな脅威を生み出すものである」と本書に書かれているように、新たな技術は常に可能性と脅威の両面を持っています。 人間の文明の進歩と共に発展してきた「技術」とは、わたしたちの分身であり、なにをするかわからない他者のようでもあります。「そもそも技術とは何か?」と問いかけてみることは、テクノロジーが駆動する時代に技術と人間の関係を新たに結び直していく契機になるのではないでしょうか。

 
 

僕たちは伝統とどう生きるか 
小倉 ヒラク / 講談社 
「発酵デザイナー」という肩書きで活動し、食の領域にとどまらず広く注目を集める著者が、自身の活動を通じて「伝統」という概念について語り直します。著者は、茶道や能のような芸能や神事など、教科書に出てくるような伝統を “大文字の伝統” 、地域ごとの発酵食のように人々の手から手へ受け継がれてきた文化や技術を “小文字の伝統” と呼び、後者に目を向け受け継いでいくことにこれからの社会の可能性を見出します。軽快な語り口ながら哲学者や経済学者が提唱した概念も数多く引用され、多方面に学びの多い一冊です。
 

超知能AIをつくれば人類は絶滅する
エリーザー・ユドコウスキー / 早川書房 
人間の能力を遥かに超えたASI(Artificial Super Intelligence)が誕生した時、世界に何が起こるのか。そんな問いに最も悲観的なシナリオ、つまり最も高いリスクを提示する本書。一部専門用語も登場しますが、寓話や現実に起こった事例を交え、AIと人間の知能(知性)がいかに異質であり、いかに制御するのが困難かつ危険を孕んでいるかが描かれています。すでに日常的に利用され、今この瞬間も進歩を止めることのないAIは、数年後、数十年後にどんな存在になっているのか。刊行直後から賛否が飛び交う話題書です。
 

日本文学の翻訳者たち
金原 瑞人(編著) / 平凡社 
数多くの英語圏の児童文学・ヤングアダルト作品の翻訳者として知られる著者による、日本文学を別の言語に訳してきた翻訳者たち7名へのインタビュー集。それぞれの日本文学との出会いや、翻訳者同士の対話ならではの苦労や工夫が垣間見える興味深い内容です。昨今欧米圏で日本人作家の作品が人気を集めている背景には、翻訳者たちの活躍が欠かせません。それぞれの語りから、新たな視点での日本の文学作品の捉え方、読み方にも気付かされるとともに、日本文学のブックガイドとしても読むことができます。 
 

女性たちのデザイン史
アン・マッシー / ビー・エヌ・エヌ 
主に20世紀のデザイン史の中に、女性デザイナーたちの功績を位置付け直すことを試みた本書。欧米出身の白人男性が中心になっているデザイン史を批判的に捉え直し、デザイン史に個人名が出てくることはなくても、後に大きな影響を与えた女性デザイナーや、著名な男性デザイナーの元で重要な役割を果たした女性たちの姿が描かれます。歴史を語り直すことは過去を振り返ることではなく、未来に新たな可能性を描くことでもある、と気付かされます。
 

人文知は武器になる
山口 周、深井 龍之介/ 文藝春秋 
「人文知」、つまりは歴史学や哲学、社会学や人類学など人文科学の知見が今のビジネスパーソンにとっても重要である、ということを説く本書。AIによる作業の効率や正確性、予測力が、人間以上の能力を発揮するようになってきた昨今、人間の仕事は「アジェンダの設定」、言い換えれば「問いを立てる力」であるとされます。その力を養うために、どのように人文知は役立つのか。AI時代の知のあり方のダイナミックな変化を洞察する、まさに今読んでおきたい一冊です。
 

歴史学者、ガザに潜入する
ジャン=ピエール・フィリユ /河出書房新社 
40年以上ガザに取材や研究で通い続け、現在はパリ政治学院で教鞭を取る中東現代史の研究者である著者による、2024年12月からの1ヶ月間国境なき医師団の一員としてガザに潜入した滞在記。「私がガザで目撃し経験したことにとって、まえもって心の準備に役立つものは何ひとつとしてなかった」という書き出しで始まる本書は、著者が見聞きした包囲下のガザの実情を当時のガザ関連の報道も交え抑制的な筆致で描いていきます。現代の戦争の姿を生々しく伝える、衝撃的なルポルタージュ。
 

ふだんづかいの人類学
気づきと観察力を磨く19の練習
ニコラ・ノヴァ / 世界文化社 
フランスの人類学者が指南する「観察」のエクササイズ・ブック。「気づく」「関わる」「集める」という3章で構成され、著者自身や人類学にとどまらず他の研究者が実践してきた、日常の風景をよく見る方法、捉え直す方法が、小さなワークと共に紹介されています。見過ごされがちなことに目をむけ、小さな違和感に気づくことは、ビジネスシーンにも役立ちそう。街中では目はスマホ、耳にイヤホンで急ぎ足…になりがちですが、本書のエクササイズを試してみると少しずつ世界が違って見えてくるかもしれません。
 

なぜ日本人は、それを選ぶのか?
データで読み解く時間とお金の使い方
株式会社インテージ/ 朝日新聞出版 
1960年創業のマーケティングリサーチ会社・インテージが、保有するデータを存分に活用し、日本の生活者の現在を分析。食卓に並ぶメニュー、テレビ・スマホなどメディアとの接触時間、街での人の動き、お金との付き合い方...調査テーマは幅広く、切り口も多岐にわたります。大規模な調査によるデータから、個人の生活実感ではとらえにくい私たちの暮らしの実態が見えてくることが本書の面白さの一つ。ビジネスシーンに限らず、日常の買い物や暮らし方にも参考になりそうです。
 

昭和のくらしはこんなだった
小泉 和子 / 平凡社 
生活史研究家であり昭和の暮らし博物館館長である著者による、昭和時代の暮らしの変遷や生活の工夫などの記録エッセイ。「戦前・戦中・戦後」と区分され、実際に大きな変化を経験してきた昭和の時代。ちゃぶ台で食事をし、自宅で子供を産み、プラスチック製品もなかった昭和のはじめ頃の暮らしを知ると、いかに短期間で環境が変化し、それに伴い生活観も変化してきたかを垣間見ることができます。2026年は「昭和100年」。何が忘れられつつあり、何が色濃く残っているのかを考えていくと、日本の「今」の一端が見えてくるかもしれません。
 
 

技術の思想史 哲学者は技術をどう考えてきたのか

中山元 
平凡社

僕たちは伝統とどう生きるか

小倉ヒラク 
講談社

超知能AIをつくれば人類は絶滅する

エリーザー・ユドコウスキー 
早川書房

日本文学の翻訳者たち

金原瑞人(編著) 
平凡社

女性たちのデザイン史

アン・マッシー 
ビー・エヌ・エヌ

人文知は武器になる

山口周、深井龍之介 
文藝春秋

歴史学者、ガザに潜入する

ジャン=ピエール・フィリユ 
河出書房新社

ふだんづかいの人類学 

ニコラ・ノヴァ 
世界文化社

なぜ日本人は、それを選ぶのか? 

株式会社インテージ 
朝日新聞出版

昭和のくらしはこんなだった 

小泉和子  
平凡社