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創成のイノベーション「未来に継承するリベラル・アーツ」

VISIONARY INSTITUTE - 2010 Seminar

BIZセミナー
更新日 : 2011年07月08日 (金)

第7章 なぜ戦争はなくならないのか?

佐治晴夫氏

佐治晴夫: 心はどうしてできたのかというと、それはやはり「大きい脳」のおかげです。では、大きい脳はどのようにしてできたかというと、四足の時代から「立ち上がる」ことによってです。頭が背骨の上に乗ったから、脳を大きくすることができたのです。つまり、二本足で立ち上がって歩くことができる人間がほかの哺乳類と違うというのは、大きい脳を持ったということです。

ところが、心を持ったがゆえに我々は大変な宿命を負いました。立ち上がったことで、骨盤の間隔が75%狭くなってしまったのです。そのため、人間のお母さんは子どもを本来なら65週間お腹に入れておかなければいけないのに、40週間前後で出産をしなければならなくなりました。つまり、未熟児としてしか出産できなくなったのです。

だから生まれたばかりの赤ちゃんは、自分でお母さんのお乳も飲めないし、一人で歩くこともできません。これは人間だけです。人間のお母さんは乳飲み子を抱えて大変だから、誰かが寄って来て「お手伝いしましょうか?」と言うのです。するとそこに家庭や村のようなグループができて、一緒に暮らせるようになりました。動物は一匹だけでも何とか生き延びることができますが、人間はみんなで一緒に暮らさない限り生きていけないのです。それは、人間が未熟児として生まれてくるからです。

グループに入っていると、とても安心します。よそから敵が来ても、みんなで守ることができるので安全だからです。その半面、自分が属しているグループがどこからか侵略されそうになると、自分の命と引き換えに自分のグループを守るという行動に出ます。これは唯一人間だけがやる行動です。これがテロの構造です。

そういう意味では、人間の世界から戦争はなくなりません。じゃあ、どう考えたら戦争をなくせるのでしょうか。それは、「かわいらしい子どもを抱き締めることができるのも、両手で憎い相手の首を絞めることができるのも、あなたではないか。なにゆえにあなたは戦うのか。その理由はどこにあるのか」ということを科学の立場から理解し、そこを出発点にすることによって、どうしたらいいのかという答えが出てくるのです。それがリベラル・アーツです。

「戦争は悲劇だからやめよう!」と髪を振り乱して叫んでも、戦争は終わりません。そのようにして人類というのはできてきたのですから、その認識が必要です。我々は人間ですが、ある意味ではチンパンジーやゴリラの性質をそのまま持っているのです。

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第9回 創成のイノベーション 未来に継承するリベラルアーツ
佐治晴夫 (鈴鹿短期大学学長)

佐治 晴夫(鈴鹿短期大学学長)
「私たちはどこから来てどこに行くのか」という根本的な問題とともに、リベラルアーツ(教養や芸術)が我々にもたらす影響そして重要性についてお話いただきます。


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