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創成のイノベーション「未来に継承するリベラル・アーツ」

VISIONARY INSTITUTE - 2010 Seminar

BIZセミナー
更新日 : 2011年07月07日 (木)

第6章 心とは何か?

佐治晴夫氏

佐治晴夫: 人間って本当に不思議ですよね。人間って一体何なのか? ほかの生き物と違う人間って一体何なのか?——これは、生き物の進化の過程を見ればわかります。京都大学の霊長類研究所にいる知人は「人間とは相手の気持ちがわかるチンパンジーである」と言っています。チンパンジーは相手の気持ちを理解することが人間のようにはできないんですね。それはつまり、心とは何かということです。そのことをお話ししたいと思います。

ここで、今から137億年前に宇宙はできたという証拠の音を聞いていただきましょう(※会場で放送)。この音は宇宙のあらゆる方向からやってくる電波雑音で、この会場の中にもみなぎっています。この電波の原因をいろいろ調べると、今から137億年前に、宇宙は確かに1粒の光から生まれたということがわかります。しかもそれは、原因がない始まりだったということがわかります。「原因がない始まり」と言われても、みなさん困るでしょうね。だからそれを私たちは「我々の認識を超えた状態というものが確かにあった」と言い換えますが、この電波雑音を解析するとそういうことがわかります。その理由を説明しましょう。

人間は、常にものごとの変化量で認識をしています。例えば同じ匂いをずっとかいでいると、匂いがわからなくなります。匂いが変わると、「あれっ」と気づきます。耳鳴りも一緒です。ずっと耳鳴りで同じ音がジーンとしていると、そのうちに聞こえなくなります。でもあるとき耳鳴りが突然しなくなると、逆に「あれっ」となります。これは脳の構造によるのですが、我々の感覚は変化量で認識するようにできているのです。

「変化していない状態」というのは、「認識できない状態」としか言いようがないのです。例えば、きれいに磨かれた、厚さが一様の窓ガラスがあるとします。ガラス越しに見える景色と、窓を開けたときに見える景色には差がつきません。したがって、ガラスがあるかどうかわかりません。しかしガラスが汚れていたり、厚さが不均一だったりすると、外側の景色が歪んで見えるので、ガラスがあることがわかります。均一で一様なものを我々は認識することができないのです。

電波雑音は、宇宙の始まりというのは均一で一様な状態だったということを示唆しています。この電波雑音が、宇宙ができた直後にゆらぎがあったときのものであると仮定して、37億年後にどのような星の配置になるかスパコンで計算すると、ハワイのマウナケアのすばる望遠鏡で見える100億光年彼方の星の配置とぴったり一致するのです。宇宙の誕生から37億年経つとこうなるという星の構造が、100億年前の星の構造と一致するということは、137億年前に宇宙はできたということがわかりますね。こういうことで、「宇宙には始まりがあった」ということがわかってくるわけです。

宇宙に始まりがあったということは、すべては1つから始まったということですね。その延長線上に、「人間だってお魚さんから生まれたんだよ。前の胸のところにあるヒレと尻尾のほうにあるヒレが両手両足になったんだよ」と、いろいろなことがわかってくるわけです。

宇宙が始まり、一足飛びにいきますが、水素、酸素、炭素、窒素、そして鉄ができ、そうしたものが集まって地球ができました。そして水素や酸素、窒素などが集まって、核酸という物質ができました。核酸には自分と同じ形のものを分裂してつくる、自分をコピーするという性質があります。これが命の始まりになります。しかし、まだ心は生まれません。
神経細胞のネットワークがつながって、そこに「熱い」とか「痛い」とかいう感覚の変化によって構造が変わると「記憶」が起こります。記憶が起こるということは、現在と過去を分けるということです。それはまた、現在と未来を分けるということになります。つまり「時間」の概念ができるわけです。この時間の概念をつくる大もとになるものが「心」です。

「心の定義とは何か?」と言えば、未来を想像する能力、あるいは過去を思い起こす能力です。それはつまり、「時間の概念を持つことができる」ということです。

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佐治晴夫 (鈴鹿短期大学学長)

佐治 晴夫(鈴鹿短期大学学長)
「私たちはどこから来てどこに行くのか」という根本的な問題とともに、リベラルアーツ(教養や芸術)が我々にもたらす影響そして重要性についてお話いただきます。


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