記事・レポート

マーケティング・クリエイティブ最前線「宝島社の女性誌マーケティング」

~出版の概念を覆すマーケティング戦略で部数はまだ伸びる~

更新日 : 2011年01月20日 (木)

第1章 マーケティングの重要性に気づいた3つの出来事

市場で新たな顧客価値を生み出すことをマーケティング・クリエイティブと呼んでいます。しかし従来の方法や価値観から抜け出すことは簡単ではありません。
そこでアカデミーヒルズでは、実際に価値を創出している方をゲストに迎え、そのエッセンスを学ぶ講座を開催しています。この講座の模様を宝島社の回でご紹介します。 

ゲスト講師 :桜田圭子 株式会社宝島社 マーケティング本部広報課長
モデレーター:西川英彦 法政大学 経営学部教授

西川英彦氏

西川英彦: 市場において、新たな顧客価値を生み出すことを「マーケティング・クリエイティブ」と呼んでいます。とはいえ、従来の方法や価値観から抜け出して、こうした新たな価値を創造することは、そう簡単にはいきません。そこで、この講座シリーズでは、実際に価値を創出している方をゲストに迎え、そのエッセンスを学ぶことにポイントを置いています。

では、何がマーケティング・クリエイティブに重要かというと、私は関西学院大学の石原先生のいう「創造的適応」ではないかと思っています。マーケティングにおいては、市場のニーズに適応することが大事だという考え方がありますが、創造的適応というのは市場のニーズに消極的に適応するというのではなく、市場のニーズあるいは需要に能動的に影響を与え、その需要基盤を自ら創り上げていくという意味になります。今日のお話は、その代表例になるのではないかと思いますので、皆さんには、ぜひ新たなヒントをつかんでいただけたらと思います。

桜田圭子: 本日はお集まりいただきありがとうございます。今日は宝島社の発行する雑誌についてご紹介させていただいたあと、マーケティングという発想に至った理由と、具体的なマーケティングの施策、今、力を入れていること、そして最後にマーケティングのポイントについてお話しさせていただきたいと思います。

宝島社は来年(2011年)、創業40周年を迎えます。企業理念は「人と社会を楽しく元気に」、社員数は200名です。かなりコンパクトな組織で、「人と社会を楽しく元気に」という企業理念をもとに、企業活動を行っています。私は主にマーケティング、PR全般を担当しています。宝島社では現在、ミステリー、ラブストーリー、マンガ、ライトノベルの4大エンタテインメント大賞を主催していて、新しい才能の発掘を積極的に行っています。現在発行している定期雑誌は11誌(2010年10月に『GLOW(グロー)』『リンネル』の2誌を創刊し、13誌に)。月刊誌だけで月に累計400万部発行しています。

簡単に各雑誌をご紹介させていただきます。89年に、日本初のストリートファッション誌として、ティーン向けに創刊したのが『CUTiE(キューティ)』です。そのお姉さん版として創刊し、現在“ナチュかわ”というコンセプトで40万部を発行しているのが『spring(スプリング)』です。『spring』で育った世代が30代になった時に読む雑誌として創刊したのが『InRed(インレッド)』で、70万部を発行して現在全ファッション誌のなかで2番目の部数になっています。2000年に創刊して、今再びブレイクしているのが『mini(ミニ)』です。宝島社の雑誌の中でも比較的コンサバティブで、OLさんの通勤服を取り上げているのが『steady.(ステディ.)』です。最後に、今年3度100万部を突破して、全ファッション誌のなかで部数トップのミリオンセラーマガジンが『sweet(スウィート)』です。また、この10月に40代向けの『GLOW』とナチュラル系の『リンネル』が創刊し、各30万部を発行します。宝島社は、新しい雑誌を創刊することで、それぞれの市場を作り上げてまいりました。

そんななかで、私がなぜマーケティングという発想に至ったのかというと、大きなきっかけは3つありました。1つ目は、流通の変化です。今まで、本や雑誌は、“書店で買うもの”と思われていましたが、インターネット書店やコンビニエンスストアでも本や雑誌が売られるようになり、良い本をつくってもなかなか読者の方に気づいていただけなくなったという実感がありました。

2つ目は、話題になると売れ行きに変化が起こるということです。あるとき、本や雑誌はPRが非常に効きやすい商品だとだということに気づきました。

3つ目は、書店員さんの応援で商品の売上がアップするということです。第1回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作『四日間の奇蹟』は、書店員さんにポップ用の白い紙とカラーペン3本をセットにして提供したところ、非常に反響があって、書店のみなさんが積極的にポップをつくってくださいました。おかげさまで、文庫も合わせて約150万部売れました。

入社前、出版社は緻密なマーケティングのもとに成り立っていると想像していましたが、個人個人にマーケティングの素質はあるものの、企業としての全社的なマーケティングは行われていませんでした。そこで、企業活動をバリューチェーンに落とし込んで、どうやったら全社的に統合できるかと考えました。そこで始まったのがマーケティング会議です。

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該当講座

宝島社の女性誌マーケティング

~出版の概念を覆すマーケティング戦略で部数はまだ伸びる~

宝島社の女性誌マーケティング
桜田圭子 (株式会社宝島社 マーケティング本部広報課長)
西川英彦 (法政大学 経営学部 教授)

桜田 圭子(㈱宝島社 マーケティング本部広報課長)
西川 英彦(法政大学教授)
今回のマーケティング・クリエイティブ最前線では、新しい発想で快進を続けて注目を集めている宝島社にクローズ・アップします。
付録付雑誌だけでなく、美顔器を書店で販売して大ヒットさせるなど、従来の常識を覆すマーケティング戦略で注目を集める同社の発想の源にあるものとは?進化を続ける宝島社の好調の秘密に迫ります。


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