記事・レポート

ロボットクリエイター高橋智隆氏が描くサイエンスの可能性

夢のゴールは掃除ロボットや介護ロボット……じゃない!?

更新日 : 2010年09月14日 (火)

第7章 箱型の機械ではなく、ヒューマノイドロボットが必要な理由とは?

高橋智隆氏

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高橋智隆: 「一家に一台ロボットの時代が来る」と言われて久しいのですが、じゃあ、ロボットがどんなふうにして我々の暮らしの中に入ってくるのか、というお話をします。

私が考えているのはこんな感じです。ユーザーが小型のヒューマノイドロボットとコミュニケーションをとります。例えば、私がロボットとコミュニケーションをとることで、ロボットに、私の好みやライフスタイルなどの個人情報が集まります。するとその情報をもとにヒューマノイドロボットが、「高橋は金曜日の夜は飲み歩いて家に居ないから、その間に掃除ロボットに掃除をさせておこう」という指示を出して、掃除ロボットに掃除をさせるんです。

あるいは「夜中の2時ぐらいにヘベレケで帰ってくるだろうな。そのときにちゃんと家に入れるように、ホームセキュリティに指示を出しておこう」とか、「後で『見逃した』ってブツクサ言うだろうから、好きそうなテレビ番組をレコーダーに指示して撮っておこう」とか。あと、ロボットを介してほかの人とコミュニケーションをとることもあると思います。

ヒューマノイドロボットは何のために必要かというと、人間とコミュニケーションをとるためにあると私は思っています。人の形をした大きなロボットが掃除機をかけたり、皿を洗ったりすることは現実的ではありません。ヒューマノイドはあくまでも機械と人間の通訳を担当すると考えています。実際の作業は、それこそ掃除は掃除ロボットがやればいいし、皿洗いは食器洗い機と人間が共同作業でやればいいんです。わざわざ人の形をしたロボットが掃除をする必要はありません。

コミュニケーションだけを担うとなると、いいことがあります。それは小さくてすむことです。大きいとどうしても一人前の働きや賢さを期待してしまいます。だから人間大のロボットがボーッと家の中に立っていると「邪魔だからどいて!」と、それこそお母さんに掃除機で小突かれるのが落ちです。小さいと、もともとの期待が低いので、ちょっと何かするだけで「小さい割に賢いわね」「小さい割に役に立つじゃない」と評価されるんです。

では、なぜヒューマノイドなのか。簡単な会話ができる機械なら、今でもたくさんありますよね。カーナビには音声入力がありますし、電子レンジは「温めが終了しました」と言うし、切符の自動券売機は「ボタンを押してください」とか言います。でも、誰も返事なんてしないでしょ。「朝から電子レンジと会話が盛り上がって遅刻した」とかいう話は聞いたことがないですよね(笑)。四角い箱とはコミュニケーションがとれないんです。

でも、一人暮らしの女性で帰宅してクマのぬいぐるみに声をかける人って、結構たくさんいるはずです。それはクマが擬人化できるからで、感情移入できる、命を感じられるからです。ヒューマノイドロボットなら、様々な機械と人間の間に入れる、インターフェイスになれるのです。

今、機械は行き詰っています。難しくなり過ぎて、説明書は分厚いし、リモコンはボタンだらけだし。正直、私でも新しい製品を買うのが億劫になってきています。性能や機能は良くなったけど、みんな「もう、いいや」と思いはじめているんです。でもヒューマノイドロボットがインターフェイスになって間に入れば、買ってきた機械の使い方をよく知らなくても、ネットワークにつなぐだけで、いいようにしてくれるんです。

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高橋智隆 (ロボットクリエイター/(株)ロボ・ガレージ代表取締役)

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単3電池2本でアメリカのグランドキャニオンを登り、過酷なル・マン24時間レースに挑戦した「エボルタ」の開発者である高橋智隆氏に、ロボット製作までの経緯や、今後のサイエンスの可能性についてお話いただきます。


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