記事・レポート

ロボットクリエイター高橋智隆氏が描くサイエンスの可能性

夢のゴールは掃除ロボットや介護ロボット……じゃない!?

更新日 : 2010年07月28日 (水)

第1章 「ロボットのことを考えて、つくって、見せびらかす」のが仕事

「一家に一台ロボットの時代が来る」といっても掃除や介護ロボットのことではありません。電池2本でグランド・キャニオンを登ったエボルタ君の開発者である高橋智隆氏は、「将来、ロボットは携帯電話のように暮らしの必需品になる」と言います。それはどんなロボットなのでしょうか? ビジネスヒントが満載のトークです。

講師:高橋智隆 ロボットクリエーター/株式会社ロボ・ガレージ 代表取締役社長

高橋智隆氏

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高橋智隆: きょうは、ロボットと暮らす、そんな時代をつくりたいという思いで「ロボットが居る未来」についてお話したいと思います。

最初に、ロボットクリエーターというのはどんな仕事をしているのか、ご紹介します。簡単に言うと、「ロボットのことを考えて、つくって、見せびらかす」という仕事です。一通り全部やるというわけです。

今までのロボットは、どちらかというと研究のためのもので、偉い先生が研究室の中でつくって実験して学術論文を書く、というものでした。そういうロボットは鉄骨がむき出しで、配線はグチャグチャの無骨な感じなので、そのままでは我々の日常生活に似つかわしくないわけです。

私は、普通の人が普通にほしいと思うロボット、暮らしの中に居るイメージが持てるロボットをつくりたいと思っています。それで「CHROINO(クロイノ)」というロボットをつくりました。身長35cm、体重約1kg、自由度24のロボットです。

「自由度」というのはモーターの数だと思ってください。人間は腕が前後にも振れるし、左右にも開けるし、グリグリねじることもできますよね。1種類の動きを1自由度と数えます。大抵のロボットでは、1種類の動きに対して1個モーターを入れなければいけないので、モーターの数と自由度が一緒になります。

今の腕の動きをさせるには、肩の部分に3つのモーターが必要で、それを「3自由度」と数えます。このように全身のモーターを合計すると、「CHROINO」は24自由度あるというわけです。

このロボットは「SHIN-Walkによる自然な歩行」を実現しています。何のことかと言うと、今までの二足歩行ロボットは膝を曲げたまま中腰で歩いていたのですが、それを解消する新技術を開発して特許を取ったのです。その実証機として「CHROINO」つくりました。

2004年に完成すると、アメリカの雑誌『TIME』に「2004年の発明」として載り、それ以来、アメリカ、ヨーロッパはもちろん、インド、ブラジル、ドバイなど、世界中いろいろなところにロボットを持って行っています。

そうしてロボットを見せびらかしていると、企業さんから「そのロボットを量産して商品にしたい」「それに使っている特許技術を使いたい」「うちのロボットをデザインしてほしい」など、様々な依頼が舞い込みます。それをお受けすることで対価をいただいています。

「CHROINO」はどこかの企業から依頼を受けてつくったわけではなく、私が勝手に思いついて、勝手につくったものです。このビジネスモデルのメリットは、下請けにならないで済むことです。「こんなものがあったらいいんじゃないですか?」と先に提案することで、それに共感してくれた企業さんからしか依頼が来ないので、自分がイニシアティブをとれるのです。デメリットは、先に自分のお金と時間を使って物をつくらなければいけないことです。

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「最先端の知」シリーズ
高橋智隆 (ロボットクリエイター/(株)ロボ・ガレージ代表取締役)

高橋智隆(ロボットクリエイター)
単3電池2本でアメリカのグランドキャニオンを登り、過酷なル・マン24時間レースに挑戦した「エボルタ」の開発者である高橋智隆氏に、ロボット製作までの経緯や、今後のサイエンスの可能性についてお話いただきます。


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