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「水が足りない」~ビジネス戦略と地球環境~

朝日新聞GLOBE創刊1周年記念パネルディスカッション

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更新日 : 2010年06月02日 (水)

第1章 水が環境に与える好都合な真実と、今そこにある危機

2025年に100兆円を超える市場に成長すると予測されている世界の水ビジネス。「水メジャー」3社による寡占状態の中、国家戦略として自国企業の育成に取り組む国も現れました。食料自給率が低く、間接的に多くの水を海外に依存している日本がとるべき戦略とは?水を環境問題とビジネスチャンスの観点から議論します。

・プレゼンテーション
【水と地球】竹村真一(京都造形芸術大学教授/Earth Literacy Program代表)
【中国の環境と水問題】加藤千洋(朝日新聞編集委員)
・スピーチ
特別ゲスト:前原誠司(国土交通大臣)
・パネルディスカッション
【水ビジネスと国家戦略、環境とのかかわりは?】
前原誠司(国土交通大臣)
望月晴文(経済産業省事務次官)
桑原洋(日立製作所特別顧問・海外水循環システム協議会理事長)
竹村真一(京都造形芸術大学教授/Earth Literacy Program代表)
・コーディネーター:梶原みずほ(朝日新聞GLOBE記者)

~プレゼンテーション【水と地球】~

竹村真一氏

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竹村真一: 20世紀最大の発見は、水惑星としての地球の「有難さ」、つまり宇宙のなかで地球のような星がどれだけ稀であるかを知ったことです。液体の水のおかげで環境がどれほど安定しているか、月と比べればよくわかるでしょう。月では太陽の当たっている昼の側は+150度、夜の側は-150度になりますが、こんな極端な温度変化が地球で起こらないのは、地球が「水球」であり、水に環境を安定化させる働きがあるからです。

また水は空気中で雲や水蒸気として存在しますが、これが温室効果を発揮しています。「温室効果」にはマイナスイメージがあるかもしれませんが、この見えない布団のおかげで地球の平均気温は+15度という生物に好適な環境が保たれている。まさに「好都合な真実」です。

地球大の「水循環」として海流というのもあります。海流は、非常に巨大な熱のベルトコンベアです。赤道地域にたまった熱を高緯度地域まで分配し、地球全体をマイルドな気候に安定させる。これもまた、大変「好都合な真実」といえます。

我々は最近になって、水循環のメカニズムやバランスがいかにフラジャイルな(壊れやすい)ものであるかも学習してきました。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の「再生エネルギーも使っていくが、大方は化石燃料に依存したまま高度成長をしていく」という排出シナリオ(A1B)に基づく温暖化シミュレーションをこの「触れる地球」で見てみると、40~50年先にどこも3度以上温度上昇していくことがわかります。

特に極地、ヒマラヤなど氷に覆われた所は温暖化に対して脆弱で、北極海氷などはすでに大きく減少しています。グリーンランドの氷床融解によって、今世紀半ばにも1~2mの海面上昇が起こり得るという科学者も出てきました。ツバルやバングラデシュは海面上昇の影響を受けやすい場所ですが、実は東京もその点では非常に脆弱です。

ヒマラヤの氷河も急速に減っています。ここは黄河、揚子江、ガンジス川、インダス川、メコン川など、すべてのアジアの大河の水がめなので、この“水の銀行”がなくなると、下流では水不足になります。その兆候が黄河ではすでに「断流」という形で出ています。

また、海面温度の上昇によって、ハリケーンが大型化すると予測され、雨が降るところは激しく降り、降らないところはますます渇水化する両極化の傾向がさらに顕著になっていくと予測されています。こうした状況のなかで、どういう水のグローバル・ガバナンス戦略をとっていくのかが重要な課題になってきます。

私は単に危機感を煽っているわけではありません。問題にきちんと正面から向き合って、気候変動に対して備えある「ロバスト」(強靱)な社会をつくるために、いま未来への投資をしようではないか、ということを申し上げたいのです。

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前原誠司 (国土交通相)
加藤千洋 (朝日新聞編集委員)
望月晴文 (経済産業事務次官)
桑原洋 (日立製作所特別顧問/海外水循環システム協議会理事長)
竹村真一 (京都造形芸術大学教授 / Earth Literacy Program代表)
梶原みずほ (朝日新聞GLOBE記者)

世界的に不足している「水」について、ビジネスと環境の視点から議論します。


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