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勝間和代はなぜ国際貢献に尽力するのか?
身の回り1.5メートルで感じるグローバル・アジェンダ
注目のオピニオン
更新日 : 2010年05月06日
(木)
第4章 スーダン支援は、日本の経済成長のカギ

勝間和代: 「Chabo!」で集まったお金は、2008年に2カ所に使いました。スーダンの南部における井戸・トイレの設置と、スリランカの東部における自立支援、農業支援、漁業支援です。スーダンを選んだのは、JENさん(国際協力NGO)が支援をしている中で、一番お金が集まりにくい国だったからです。
スーダンでつくった井戸とトイレは、どちらも400万円ぐらいします。スーダンは内陸国なので、物資を遠くから運んでこなければならないからです。それに戦争が終ったばかりで、物資そのものがすごく高騰しています。それと、これが一番大きな問題なのですが、国内に産業がなく、コンクリートも労働者も全部輸入なのです。
井戸がない小学校がたくさんあって、汚い水を飲むので下痢をします。コレラが結構な罹患率で流行っていますし、寄生虫がお腹にいるケースもすごく多い。現地の人たちは、この水が危険だということをみんな知っています。知っていても、その水しかないから飲まざるを得ないんです。それがその地域の生産性をすごく下げているのです。
スーダンでは26年にわたる内戦があり、ようやく和平に至ったのが2005年で、今も地雷がたくさん残っている危険なところです。戦争が終り、避難した人たちが生まれ故郷にどんどん帰って、小学校をつくったり、農地を開拓したりしているのですが、水がないんです。
校舎を建てるにしても、セメントを溶かすのに水が要ります。もちろん、人が働くのにも水が要ります。だから、井戸を寄付することによって校舎が建てられるようになるのです。校舎が建つと給食プログラムが始まります。給食が食べられるようになって、子どもたちの成長が早まって、勉強もできるようになる。そういう形で、ちょっとずついろいろなことが始まるのです。
スーダンには帰還民が200万人から300万人いると言われていますが、帰ってきても産業がありません。こうした状況から、誰も援助しなくともちゃんと食料が回って、教育が回って、システムが回るようなところまで持っていかなければいけないので、コミュニティの再生に向かって、いろいろな国が支援しているのです。
スーダンはアフリカの中では一番面積が大きい国で、いろいろな国に囲まれているのですが、周りの6カ国といろいろな紛争をしています。結局、スーダンが安定しないと、中央アフリカ自身が安定しないのです。不安定なままだと、いつまでたっても私たちはPKOで事後にお金を払わなければいけません。
今後、私たちが経済成長を成し遂げようと思ったら、実はアフリカが一番ポテンシャルが大きいのです。問題になっているスーダンが平和になるということは、そういったアフリカのポテンシャルを解放するきっかけにもなります。
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該当講座
勝間和代 (経済評論家、公認会計士)
勝間 和代(経済評論家、公認会計士)
経済評論家として、またビジネス書のベストセラー著者としてご活躍されている勝間氏。最近の活動として注目されているアフリカやスリランカへの国際支援の取組みについてお伺いします。
勝間氏にとって今一番ホットな国際貢献について直接お話いただく貴重なセミナーとなります。是非この機会をご利用下さい。
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