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私とは何か?~自分探しの立ち位置~

読みたい本が見つかる「カフェブレイク・ブックトーク」

更新日 : 2010年01月04日 (月)

第3章 「自分探し」は、「成功」、「生きがい」、「幸福」につながる

六本木ライブラリー カフェブレイクブックトーク 紹介書籍
澁川雅俊: 「自分探し」というキーワードは、ビジネスでの「成功」や「生きがい」探しと同義語であり、また人生の「幸せ」への希求と直結します。ただしそれらにまでテーマを広げるとおおごとになりますので、ここでは代表的なものを幾つか挙げておくに止めておきます。

●ビジネスで成功するには揺るぎなく〈自分軸〉が不可欠

例えば、いまビジネスの実践的世界のコンサルタントとして有名な勝間和代は最近著した『会社に人生を預けるな—リスク・リテラシーを磨く』(09年光文社新書)と『断る力』(09年文春新書)で、ビジネスでの成功の鍵は、揺るぎなき「自分軸」(思考・行動基準)を確立すること、それを基点として周囲に建設的な影響力を及ぼす努力を重ねること、さらにその自分軸を革新していくことだとし、それを提唱しています。またそうした考えの延長線上で彼女は、「成功」の要件を個人の資質だけでなく、周囲の環境や文化的な側面から考察した21世紀の成功論とされている『天才!—成功する人々の法則』(M・グラッドウェル著、勝間和代訳、09年講談社)を翻訳しています。

●「自分探し」は、「生きがい」論や「幸福」論につながる

『総解説 生きがいの創造』(飯田史彦著、09年PHP研究所)などのように、カウンセリングの観点からこれまでに多くの生きがいについて論じているものもあります。「生きがい」については神谷美恵子の『生きがいについて』(神谷美恵子著、04年みすず書房)がその代表でしょう。この本は神谷美恵子コレクション全5巻の一冊なのですが、その他にも『人間をみつめて』『こころの旅』など、根底で「自分探し」の遍歴を克明に記したものがあります。

先に挙げたヘッセも『幸福論〔改版〕』(H・ヘッセ著、高橋健二訳、04年新潮文庫)というエッセイを書いていますが、やはりここでも彼は強烈に「私は何か、どこから来たのか」を意識しています。

また『幸福論』といえば『アランの幸福論』(齋藤慎子訳、07年ディスカヴァー・トゥエンティワン)がよく知られていますが、昨年新装版が出されたヒルティの『幸福論〔新装版〕』(斎藤栄治編・他訳、08年白水社)も有名です。この本の中で、人間とは何だろう、どこから来て、どこへ行くのかを問うことが人を幸せにするとヒルティは言っています。