石倉洋子のグローバル・ゼミ

「個の時代」に必要な課題意識と自分らしさ

2章 何事も実際に自分でやらなければ身につかない

2018年のテーマは「Learning by Doing」



谷本:
GASのアジェンダはどのように決めていますか。

石倉:
毎年新しいことに挑戦したいので、テーマもやり方も変えています。最初の年は期間が長かったんですが、国際組織で活動している若い日本人を呼んで、彼らがなぜその活動をしているのか、実際にどのようなことで困っているか、何が貢献できそうかなどを話してもらい、課題についてみんなで考えました。そのときに出てきたのが、食料や貧困、人権など5つのテーマでした。

第2期では3テーマに分けて3ヶ月ずつ実施。その後も同じことをやりたくないので、だんだんジャーナリズムや宇宙、社会投資、音楽などさまざまなテーマを扱うようになってきています。

直近3〜4年は2つのカテゴリーに分けて実施しています。
1つは、一般に広く公開するセミナー。ゲストに話してもらって、私と対談し質疑応答をするという形式。
もう1つはこれまでと同じように、固定のメンバーがあらかじめ決められた期間に、講義や実践のセッションを受講する形式です。ただ、内容は「いま一番必要なことで、どこでもやってなさそうなこと」を選ぶように変えました。

毎年のテーマは、その時々で何が必要なのかを私なりに考え、探して決めています。その背景には、世界経済フォーラムなどで課題として挙がることと、日本での議論の内容が全然違うという危機感があります。世界と比べると、日本では課題として取り上げられるのが数年遅いし、しかもその距離はどんどん開いてきているという印象を持っています。

谷本:
2018年のテーマはもう決まっていますか?

石倉: 「Learning by Doing 〜アウトプットを通じて成長する」です。 おそらくセミナーで「教えてもらう」ことを求める人は、このテーマでは全然満足できないかもしれません。しかし私は、物事は実際に自分でやらなければ身につかないと考えているので、やってみて、そこから学ぶという機会をしっかり作ろうと考えています。

自分の人生やキャリアの目的は何か

谷本:
先生がGASに所属する人たちに期待することはありますか?

石倉:
世の中は今、ものすごい勢いで変化しています。日本はまだ自分の価値を会社での評価に求めるような傾向が強いですが、そういう時代は過ぎ去りつつあります。
今いる狭い世界だけで考えるのではなく、情報はどこでも得られるという今のメリットを最大限活用し、世界中から情報を得て、自分なりのやりがいを見つけてほしい。いわゆる「Purpose」というか、自分の人生やキャリアの目的をしっかりと考え抜いてほしいと思っています。

今の若手は変化の激しい時代をこれからずっと生きていくことになります。そこで、自分の人生の原動力となる、自分が本当にやりたいことは何か? やりがいを感じることは何か? を考えてほしいと思います。

そして、自分の意見をしっかり発信できるようになってほしい。せっかくいろいろな場に行っても、何も発言しなければ名刺交換して終わってしまいます。自分はどんな人間で、何がやりたいのか、何に関心を持っていて、どんなアイデアがあるのかなど、どこに行ってもちゃんと話せるような人がたくさん出てくればと考えています。

谷本:
日本の授業は、聞いて学ぶのが基本ですが、GASに来る生徒たちには、コントリビューションやアクションを求めているところが大きな違いだと思います。

石倉:
そうですね。今年の「Learning by Doing」もそれを意識しています。日本の教育はアウトプットにあまりウェイトを置かず、インプット過多なので、それに風穴をあけようと考えているのです。英語ができても、どこかに行っても、何も言わなければ「いない」のと同じなので、常にどうアウトプットをするかがとても重要です。自分の意見を述べ、何らかの形で相手の記憶に残るかどうかで、次のステップは変わると思います。

貴重な資源である自分の時間を使ってGASに来ていただいているので、上手く活用してほしいと思っています。例えば、ある程度リスクを取ることが大事です。日本人は特に「正しい答え症候群」に陥りがちで、周りを気にしたり、正しいかどうかを気にしたりしすぎるように思います。 でも、GASでどんな意見を言ってもそれで評価されるわけではありません。今は同じ分野の専門家ですらそれぞれ違うことを言うわけですから、どんな意見でも言っていいんです。会社では発言を躊躇してしまうような意見でも、どんどん言ってほしいですね。


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