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カフェブレイク・ブックトーク『「天の川」の先の先』

更新日 : 2008年10月27日 (月)

第5章 宇宙は地球であふれている!?

『宇宙は地球であふれている—見えてきた系外惑星の素顔』

澁川雅俊: 新聞報道といえば、今年(2008年)の2月に「宇宙は生命に満ちている?」という見出しの新聞報道がありました。それは「太陽に似た銀河系の恒星のうち最大60%が地球と同様に岩石で出来た惑星を形成している可能性がある。岩石の惑星が多ければ、それだけ生命が存在する確率が高くなる、という研究結果が分かった」というものでした。

『宇宙は"地球"であふれている—見えてきた系外惑星の素顔』(井田茂他著、2008年技術評論社刊)は、太陽系の外の惑星(系外惑星)が次々と発見されるようになると、単なる妄想ではなく、宇宙の他の生命体の存在が科学的に推論されるようになりました。

『幸運な宇宙』、『多世界宇宙の探検—ほかの宇宙を探し求めて』

また『多世界宇宙の探検—ほかの宇宙を探し求めて』(アレックス・ビレンケン著、林田陽子訳、2007年日経BP社刊)や『幸運な宇宙』(ポール・デイヴィス著、吉田三知世訳、2008年日経BP社刊)では、地球とまったく同じ惑星が遠く離れたどこかの領域にあり、そこでは地球と同じ海岸線と地勢を持つ大陸があり、私たち人間を含めて地球と同じ生き物が住んでいる、などということをほのめかしています。

● 拡がる宇宙

『宇宙をプログラムする宇宙—いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?』
宇宙は見える範囲を超えて広がってきました。プラネタリウムは初・中等教育やエンターテインメントのため見える範囲の宇宙をモデル化したジオラマですが、宇宙物理学の進展により私たちが、宇宙線とか、ニュートリノとか、重力波など眼には見えない宇宙のさまざまな現象を見る眼を得たからです。そのことついては、科学読み物としては少し古いのですが、まず『宇宙を見る新しい目』(日本物理学会編、2004年日本評論社刊)に詳しく書かれており、その後の進展については最近刊行された『日本の天文学の百年』(日本天文学会百年史編纂委員会編、2008年恒星社厚生閣刊)に記されています。

またコンピュータがさまざまな物理学的測定法によって得られたデータを解析するのに大きな役割を果たしたこともその大きな理由です。その間のことは、『宇宙をプログラムする宇宙—いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?』(セス・ロイド著、水谷淳訳、2007年早川書房刊)に書かれています。

なおそれら3点は必ずしも専門研究書ではないのですが、私たち一般の読者にはやはり難解です。その難解さは、さまざまな技術の様子が専門的で分かりにくいところが原因なのですが、そんなときには『図解雑学 宇宙の不思議』(小谷太郎著、2007年ナツメ社刊)が役に立つかもしれません。

※書籍情報は、株式会社紀伊国屋書店の書籍データからの転載です。

関連書籍

宇宙は“地球”であふれている—見えてきた系外惑星の素顔

井田 茂, 佐藤 文衛, 田村 元秀, 須藤 靖
技術評論社

多世界宇宙の探検—ほかの宇宙を探し求めて

ビレンケン,アレックス, 林田 陽子【訳】
日経BP社

幸運な宇宙

デイヴィス,ポール, 吉田 三知世【訳】
日経BP社

宇宙を見る新しい目

日本物理学会【編】
日本評論社

日本の天文学の百年


恒星社厚生閣

宇宙をプログラムする宇宙—いかにして「計算する宇宙」は複雑な世界を創ったか?

ロイド,セス, 水谷 淳【訳】
早川書房

宇宙の不思議

小谷 太郎
ナツメ社

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