記事・レポート

頑張れ、本屋さん! ~最近、街の書店が消えている

本屋さんは一番身近な文化の発信地

更新日 : 2019年10月10日 (木)

第4回 多様性の時代に生まれる個性派本屋さん

書店にはまだまだ可能性がある
澁川雅俊:大型書店や昔ながらの書店が消えつつある一方、最近はちょっと変わった書店がじわじわと増えています。旅や食など1テーマの本だけを扱うお店、顧客体験にとことんこだわるお店、地域住民に集いの場を提供するお店など、これらの書店は新たな本との出合い、本の楽しみ方を創り出しています。

『ニジノ絵本屋さんの本~本屋さんで、出版社で、絵本パフォーマー』〔いしいあや、小林由季/西日本出版社〕の著者は、広さ一坪余という小さな絵本屋の店主です。出版業界のイロハも知らずに絵本屋となり、仕入れもままならなかった店主は、自ら作家を探して絵本の出版事業を始めてしまいます。現在はお店を飛び出し、「絵本と音楽」「絵本と食」などをテーマにしたライブパフォーマンス、ワークショップを国内外で開催しています。


東京・三軒茶屋のCat’s Meow Booksという本屋さんにあるのは、全て「猫本」です。店主は人間ですが、里親を待つ保護猫が店員(店猫?)として常駐しています。開店資金の一部はクラウドファンディングで集め、内装工事も猫好きのボランティアが参加。開店後は収益の一部を保護猫団体へ寄付しています。『夢の猫本屋ができるまで』〔井上理津子/ホーム社〕は、この猫本屋が誕生するまでの顛末をルポライターが追った本です。


『本の本 夢眠書店、はじめます』〔夢眠ねむ/新潮社〕の著者は、元アキバ系アイドルです。彼女は「いつか自分の本屋を開店する」ため、個性が光る書店を訪ね歩き、読者に本を届けるためのテクニックを探りつつ、出版取次、編集・校閲、装丁デザインなど書籍の制作・販売の裏側をつぶさに調べ挙げています。


(注)夢眠ねむは2019年3月に芸能界を引退、同年7月に「これからの本好きを育てる書店」をコンセプトとする「夢眠書店」を開店し、自らの夢を叶えています。

街の本屋さんを応援する本
澁川雅俊:今度は、頑張る街の本屋さんを〈応援〉している本に目を向けてみましょう。『これからの本屋』〔北田博充/書肆汽水域〕ではまず、本屋の実体を定義した後、新しい本屋のかたちを求めて多種多様な書店・書店員を取材し、未来の本屋論を展開しています。著者は出版取次会社に勤務し、本×雑貨×カフェの複合店舗などを立ち上げた後、現在はひとり出版社を運営するかたわら、街の本屋さんを応援する活動を行っています。

『「本を売る」という仕事 書店を歩く』〔長岡義幸/潮出版社〕は、フリーランス・ジャーナリストが東日本大震災や熊本地震で被災した本屋を含め、全国の100書店を徹底取材し、本を売る現場で頑張る人びとの声をまとめたものです。この過程で著者は、「これからの本屋のかたち」を垣間見たようで、それは「良く耕された書棚」を持つ書店だとしています。


耕すとは、「農作物がよく育つよう土を掘り返して柔らかくし、肥沃な田畑にすること」。英語では〈cultivate〉となり、主意こそ耕すですが、「ものの見方や考え方を深め、会話や行動を向上させる」との意味も含んでいます。この延長線上で「書棚を耕す」を解釈すれば、書棚はもとより、バックヤードを含む全商品を日々吟味し、足らざるを補う行為となるでしょう。この行為が本の拡販とともに、人びとを〈cultivated〉することにつながっていく、との確信が本書からは読み取れます。

出版業界の専門紙『新文化』の元編集長による『本屋な日々~青春篇』〔石橋毅史/トランスビュー〕も、全国の街の本屋さんを応援する一冊です。本が売れない時代に本屋を営むという矛盾に葛藤しつつ、情熱と信念を抱いてたくましく商売を続ける書店を取材しています。


『これからの本屋読本』〔内沼晋太郎/NHK出版〕は、本にまつわるイベントや書店のプロデュースなどを手掛ける著者が、街の書店のコンセプトづくりから経営のノウハウまでを網羅した一冊です。ビールの飲める本屋を運営するなど、実体験も豊富な著者の言説は机上の空論ではないようです。


『日本の小さな本屋さん』〔和氣正幸/エクスナレッジ〕の著者は、全国各地にある小さな本屋の魅力を伝える「BOOKSHOP LOVER」という活動を行っています。新刊書店や古書店はもとより、本屋カフェ、本屋ギャラリーなど、五感を刺激する街の本屋23店を紹介しています。


ブック・ツーリズムに特化した旅行案内『旅する本の雑誌』〔本の雑誌社〕は、全国の名物書店、文学館や小説に登場したブックカフェなどを巡るエッセイを中心に、〈本好き〉が求める旅を提案しています。『ニッポンの本屋』〔本の雑誌社〕は、首都圏にある34の個性的な書店を取り上げた写真集。こだわりが窺える書棚や店内レイアウトの他、各店のブックカバーも紹介されており、それらの違いを見比べるのも一興です。

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