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頑張れ、本屋さん! ~最近、街の書店が消えている

本屋さんは一番身近な文化の発信地

更新日 : 2019年10月10日 (木)

第1回 書店をめぐるビジネス環境の変化



街角の書店にふらりと立ち寄り、目についた本を手に取り、ページをめくる。それだけで、私たちは新しい世界への扉を開くことができます。しかしいま、本との出合いの場である書店が全国の街から消えつつあります。 社会が目まぐるしく変わる中で、書店もまた変化を求められているようです。今回は、あらためてその存在意義や未来を読み解くべく、「書店にまつわる本」を集めてみました。

<講師> 澁川雅俊(ライブラリー・フェロー)
※本文は、六本木ライブラリーのメンバーイベント『アペリティフ・ブックトーク 第47回『頑張れ!本屋さん~最近、街の書店が消えている』(2019年3月15日開催)のスピーチ原稿をもとに再構成しています。



現代人は本当に本を読まない?
澁川雅俊:いま、書店は〈斜陽〉の時代にあるといわれています。事実、1990年代後半に2万店以上あった書店は、2018年には約1万2,000店とほぼ半減しています。こうした状況を受けて、NHKは2019年春、「あの老舗書店も閉店 本屋さんどうしたら残せる?」とのテーマで、書店の現状に迫る特集を組んでいます。

通勤電車の中を眺めれば、いまや乗客の大半はスマートフォンに見入っています。新聞の電子版や電子書籍を読む人もいますが、多くはゲームに興じたり、SNSに熱中したり、動画を見たりしています。紙の本、すなわち文庫本や単行本を開く人も見かけるものの、それは大概、優先席に座る高齢者です。本を買うという面でも、利便性の高いオンラインの新刊・中古書店、通販会社などの隆盛が書店の減少に影響しているようです。

出版業界の売上は1990年代にピークを迎え、その後は長く出版不況に陥っていますが、その最たる要因は「人びとがかつてほど本を読まなくなったからだ」といわれています。しかし、毎日新聞社発行の『読書世論調査』では、日本の成人の約3割は最低月1冊の本を読んでいるという結果が出ており、しかもその割合は1947年の同調査の開始以来、ほぼ変わっていないともいいます。それなのになぜ、街から本屋さんが消えつつあるのでしょうか?

その理由を探るべく、まずは出版業界の全体像や経年変化を把握してみましょう。1999年に『出版社と書店はいかにして消えていくか』〔論創社/2008年復刊〕を著した小田光雄は、その後もビジネスの側面からこの問題を追い続け、『出版状況クロニクルV 2016.1~2017.12』〔論創社〕で直近の状況を詳しくレポートしています。


出版業界の「現場」を読む
澁川雅俊:苦境に立つ出版業界の〈現場〉はどうなっているのでしょうか。『本のエンドロール』〔安藤祐介/講談社〕は、印刷会社を舞台としたビジネス小説ですが、丹念な取材を通じて出版という複合産業が直面する窮状を描き出しています。同時に、作家や出版社、印刷会社、製本業者といった裏方たちの創意工夫や本づくりに懸ける想いも描写し、その未来が暗いだけではないことも示唆しています。


『拝啓、本が売れません』〔額賀澪/ベストセラーズ〕は、出版不況の真っただ中、文芸作家である著者が「売れる本の作り方」を求め、編集者や書店員、Webコンサルタント、映像プロデューサーなど出版業界の内外にいるキーパーソンを直撃取材し、現状打破への答えを見つけようとしています。


2018年6月、アート系書店として名を馳せた青山ブックセンター六本木店が閉店したことは、六本木人はもとより、読書家一般に衝撃を与えました。また、1970年代に開店し、池袋周辺の書店文化創成を担ったリブロ池袋本店も、2015年7月に惜しまれつつ閉店しています。『書店に恋して~リブロ池袋本店とわたし』〔菊池壮一/晶文社〕は、長く同店に勤めた著者が書店からの文化発信に尽力した日々を綴ったもので、名物書店ならではの型破りなエピソードとともに、書店の未来に向けた提言も示されています。


ちなみに、青山ブックセンター六本木店跡地には、2018年12月、大手取次店・日本出版販売株式会社が「本と出会うための本屋」をコンセプトとする入場料金制の書店「文喫 六本木」を開店しています。1,500円の入場料で長時間滞在できるシステムで、約3万冊の蔵書をじっくり楽しむことができ、企画展も定期的に開催。店内には喫茶室を併設するなど、新時代の書店の一形態を提案しています。

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