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戦後70年、その先を読む~ブックトークより

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2016年06月01日 (水)

第2章 戦後70年を俯瞰する

やりなおす戦後史

「戦後史」入門編

澁川雅俊: 『文藝春秋で読む戦後70年〈全4巻〉』は、月刊誌『文藝春秋』に掲載されてきた政治、経済、文化、スポーツなど、各界識者の諸小論をまとめたものです。第1巻は「終戦から高度成長期まで」、第2巻は「安定成長期から天皇崩御まで」、第3巻は「バブルからその崩壊へ」、そして最終巻は「『9.11』後の世界と日本」となっており、それぞれの時代を象徴する人物たちの生の声が多数登場します。

同様の発想で編まれた『岩波新書で「戦後」をよむ』〔岩波書店〕は、文学者・小森陽一ほかの編者によって、数ある新書の中から10年ごとに3点、合計21点が選ばれた“甦り本”です。こちらは、その時々の世相や思潮、政治・経済・文化・科学技術を論じてきた岩波新書を叩き台として、70年間の〈知の有り様〉を巡って議論しています。

「今起きていることの本当の意味がわかる」との副題が付けられた『戦後日本史』〔福井紳一/講談社〕も、戦後70年を考える前に、その推移をブラウズするのに適しています。本書は終戦から安保法制、辺野古基地建設までを扱った現代史ですが、予備校講師の著者が自身の講義録に加筆したもので、研究者の史観に基づいた歴史書ではなく、大学受験科目の参考書としてまとめられていることが特徴です。

『やりなおす戦後史』〔蔭山克秀/ダイヤモンド社〕も、同じく講義録をベースとしたものですが、こちらは副題に 「本当はよくわかっていない人の2時間で読む教養入門」とあります。「戦後」にまつわるさまざまな問題の背景について、語りかけるような文章で説明されており、読者に一般の人たち、とりわけ若い世代の社会人を期待しているようです。

子どもたちの戦後70年

「視点」を変えて見る

澁川雅俊: 2015年の秋、「一億総活躍社会」政策が発表されました。戦前・戦中・戦後を経験してきた70歳以上は人口の18.7%を占めていますが、その多くが先の標語に違和感を覚えたようです。なぜなら、その人たちの脳中にはいまもなお「一億総動員」「一億総玉砕」といったことばが刻み込まれているからでしょう。

その「一億」には、割合は些少ですが、200万人の在日朝鮮人やそれにつながる人たちも含まれていました。日本現代史学者・成田龍一の『戦後史入門』〔河出書房新社〕は、沖縄を含め、共に敗戦の憂き目に遭い、その後の悲惨な生活を経験した人々の“もうひとつ”の視点も加味しつつ、戦後のトピックを説き起こしています。

過去のことであれ、いま起っていることであれ、まず眼の先には出来事があり、それらは図像として私たちの頭の中に取り込まれます。社会的な事象は多くの場合、写真や映像として記録されます。『戦後70年~定点観測者としての通信社~』〔公益財団法人新聞通信調査会〕は、共同通信社が保有する各年の10大ニュースの写真素材などをもとに、70年間の出来事を絵解きしています。その姉妹編である『子どもたちの戦後70年~定点観測者としての通信社~』は、戦後の子どもたちの動向を、敗戦直後、学び、災害と祈り、祭りといったテーマに仕分け、現在の子どもの姿とも比較しながら紹介しています。

日本人のほぼ5人に4人は「戦後」のどこかの時代に生まれ、成長してきました。その人たちの記憶の中には、生まれた時点以降に見てきたリアルな図像がしまわれているはず。記憶された図像が一様ではないのなら、現代日本人の価値観や消費観、そして戦後70年観も一様ではないことは十分に理解できます。

『日本初! たった1冊で誰とでもうまく付き合える 世代論の教科書』〔阪本節郎&原田曜平/東洋経済新報社〕は、厳密には〈戦後70年本〉ではありませんが、図像を共有する人たちのグループ特性を、広告代理店のマーケッターの目線から解説しています。ここでは戦後生まれの人々を、団塊世、ポパイ・JJ世代、新人類世代、バブル世代、団塊ジュニア世代、さとり世代に分類し、それぞれの文化的背景なども交えつつ、世代の特徴をキーワード化して論じています。



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岩波新書で「戦後」をよむ

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子どもたちの戦後70年

新聞通信調査会 : 共同通信社(1972)
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阪本節郎 原田曜平
東洋経済新報社


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