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戦後70年、その先を読む~ブックトークより

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2016年06月08日 (水)

第3章 過去と現在をつなぐ、想いとことば

戦後七〇年史

戦後の日本、戦後の世界

澁川雅俊: 『終戦後史 1945-1955』〔井上寿一/講談社〕は、「戦前日本」と峻別される「戦後日本」の原型が形づくられた過程を、政治・外交などの重要事件を中心にしながら解説しています。占領下という特殊な状況にあったこの時期に、日本は敗戦後の混乱から新しい秩序への大転換が図られたわけですが、今日的課題である安保法制のことの起こりなどがわかりやすく書かれています。

色川大吉の『戦後七〇年史』〔講談社〕は、激動の70年を支えた「民衆」の覚悟が何であったのかを追究しています。1925年に生まれた著者は、「自分史」(『ある昭和史~自分史の試み』/中央公論新社、初出1975年、2010年に文庫化)を使い始めた人物で、近現代民衆思想史の研究家です。その歴史観は「色川史学」とも称され、一貫して「民衆」の生活動向から歴史を編纂しています。本書ではわが国の戦後だけではなく、世界中の戦後についても語られていますが、これも世界中の「民衆」の視点で歴史を捉えようとする著者の史観ゆえでしょう。

経済学者でありながら、今日的な国内問題にも鋭い評論を加えている佐伯啓思の『従属国家論』〔PHP研究所〕は、副題に「日米戦後史の欺瞞」を添え、日米の国策を対比しつつ論を進めています。彼は言います。私たち日本人は、そう意識するしないにかかわらず、70年にわたり、民主主義と経済成長を金科玉条とした米国の価値観と、伝統的な日本の価値観の狭間で苦悩してきたと。たしかに、憲法上は平和主義を標榜しながら、米国の軍事基地を抱えているのは、矛盾であり、苦悩です。

本書では日本の伝統的価値観について、あのカミカゼ特攻の精神を引き合いにし、「他者のための自己犠牲」、あるいは「諦観と覚悟」と表現していますが、平たく言えば、「あきらめ」「おもいきり」ということでしょう。私たちがどこかで米国流をあきらめ、追従型の流儀をおもいきって断ち切ることができなければ戦後は終わらないと、著者は強く主張しています。



私の「戦後70年談話」

“未来の他者”への遺言

澁川雅俊: 『私の「戦後70年談話」』〔岩波書店〕は、鬼籍に入った人物も含め、戦前・戦中・戦後を生き抜いた41名の著名人が、自身の体験に基づいた戦後70年への想いを寄稿しています。寄稿者はみな、戦争と敗戦をそれぞれの人生における最大の出来事と認識し、未来日本への“遺言”を書き記しています。なお、巻末には編集部がまとめた「戦後70年を考える」ためのさまざまな本が紹介されており、私たちが将来について思索する際の良きブックリストとして評価できます。

同系列の本に『遺言 日本の未来へ』〔日経BP社〕があります。こちらは、戦後日本を支えた各界のリーダーたちに「戦争とは何であったのか、戦後復興、高度成長とはどんな時代だったのかを語っていただく」というテーマでインタビューし、編纂しています。「日経ビジネス」「日経ビジネスオンライン」に掲載された記事の再編集ですが、ビジネス界から17名、政官界から5名(うち1名は台湾の元総統)、文化人6名、その他3名が登場します。戦後時代の生き証人たちが遺したことばを、「未来の経営者へ」「未来の創造者へ」「未来のリーダーへ」「未来の日本人へ」の4部に分けて掲載しています。

それに対し、『戦後思想の「巨人」たち』〔高澤秀次/筑摩書房〕は、日本近代史を踏まえ、戦後さまざまに移り変わる時代性を真摯に考察した思想家や評論家、文学者(吉本隆明、江藤淳、埴谷雄高、大西巨人、柄谷行人など、いずれも戦争体験者)たちの所見を通覧することで、戦後日本人のものの見方・考え方を確定しようと試みています。

著者自身は、世界の戦後70年を「戦争と革命」の時代と規定し、現在はそれが「テロとグローバリズム」に変容していると論じています。そうした視野が重要になるのは、「『未来の他者』はどこにいるか」と副題にあるように、著者が戦後体験しかない人たち、特に次代を担う若い世代が、この70年の時代性をどう捉えているのかに注目しているからです。



関連書籍

終戦後史1945−1955

井上寿一
講談社

朝日・毎日・読売社説総覧〈2015‐1〉1月〜3月

明文書房編集部【編】
明文書房

戦後七〇年史

色川大吉
講談社

従属国家論

佐伯啓思
PHP研究所

私の「戦後70年談話」

岩波書店
岩波書店

遺言 日本の未来へ

日経ビジネス編集部
日経BP社

戦後思想の「巨人」たち

高沢秀次
筑摩書房


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