記事・レポート

Quo Vadis, Iaponia?

戦後70年、その先を読む~ブックトークより

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2016年06月01日 (水)

第1章 我々はどこから来て、どこへ向かうのか?

2015年は数多くの〈戦後70年本〉が出版されました。先の戦争を境に、日本は国の根幹、とりわけ、私たち個人と国の関係に大変動がありました。すなわち、君主制であった国家が民主制へと転換したのです。それから70年が経ったいま、〈戦後70年本〉は私たちに何を訴えかけているのでしょうか? 六本木ライブラリーが所蔵するさまざまなジャンルの本を通じて、戦後70年をひもとき、未来に想いを馳せるブックトークです。

講師:澁川雅俊(ライブラリー・フェロー)
※本文は、六本木ライブラリーのメンバーイベント『アペリティフ・ブックトーク第38回 Quo Vadis, Iaponia? ~「戦後70年」さて、この後は?』(2016年2月19日開催)のスピーチ原稿をもとに再構成しています。

古稀を迎えた戦後日本

澁川雅俊: 今回のタイトルは、新約聖書外典・ペトロ行伝にある“Quo Vadis, Domine?”(主よ、何処に行き給う?)から借用しました。

1世紀半ば頃、ローマではキリスト教徒への迫害が日を追うごとに激しくなっていました。虐殺を恐れた者たちは国外へと脱出し、最後までとどまるつもりだった指導者ペトロも、ついにローマを去ることを決断します。そして、真夜中に出発し、アッピア街道を進んでいたペトロは、夜明けの光の先に突然現れたイエスを見て驚き、先のことばを口にしました。

それに対し、イエスは「汝、我が民を見捨てなば、我、ローマに行きて今一度十字架にかからん」と応えます。このことばによって悔心したペトロは、ローマへと引き返し、捕らえられ、十字架にかけられることになりますが、これがキリスト教発展の契機となり、彼はカトリック教会において初代ローマ法王として崇められることになったのです。ノーベル文学賞を受賞したポーランドの作家、ヘンリク・シェンキェヴィチは“Quo Vadis : Powieśćzczasów Nerona”(『クォ・ヴァディス:ネロ時代の物語』/岩波書店)を通じて、この問答を世界に広めました。

さて、2015年は数多くの〈戦後70年本〉が出版されました。「戦後」とはもちろん、1945年の太平洋戦争終結後のことです。この時を境に、日本は君主制から民主制へと転換したわけですが、国の根幹を揺るがす大変動も、新しいレジームの下で生まれた戦後世代の日本人にとっては、何ら変哲もないことかもしれません。しかし、戦前生まれの人たちにとっては格別の感慨があります。

生まれて70年目を良く生きながらえたと賞賛する意味で、「古稀」と銘打ちます。戦争という大きな悲しみを経て、日本(Iaponia)という国がその節目を迎えたいま、〈戦後70年本〉から私たちが向かう先を読み解いてみたいと思います。



戦後70年、ざっと読み

澁川雅俊: 戦後70年を考える前に、まずはその変遷を大まかにつかんでみましょう。

『読解 平和総合年表 日本と世界/1945-2014』〔長田正一&早乙女勝元/草土文化〕は、戦後の日本と世界の政治的な動向、戦争・紛争など、約6万項目もの事象をまとめた年表です。戦後70年前史として、年表は第一次世界大戦が終結した1918年から書き起こされており、重要な項目には解説も付けられています。民族問題や差別、環境など、取り上げるテーマは多岐にわたりますが、著者たちの視点は一貫して非暴力・非軍事力による平和の実現・維持を追求する思想に基づいています。70年という節目にあたり、現状を適正に評価し、将来に想いを馳せる時、座右に置くべき1冊と言えるでしょう。

『朝日・毎日・読売社説総覧』〔明文書房〕は、年4回の分冊として10年ほど前から定期的に刊行されています。2015年の第1部(1~3月)では、3紙ともに年初から戦後70年を意識した記事をさかんに書き立てており、「日本人と戦後70年—忘れてはならないこと」(朝日)、「戦後70年日本とアジア—脱・序列思考のすすめ」(毎日)、「戦後70年—未来志向で歴史と平和語ろう」(読売)などと大見出しを振っています。

社説はもとより、その時々の出来事に対する新聞社の時評であり、私たちの世相観形成のよすがとなっていますが、丸谷才一が小説『女ざかり』の中で「社説の読者の数より執筆者の数のほうが多い」と書いたように、新聞を購読しながらも気を入れて社説を読むことはないと、さめた見方をする識者もいます。


関連書籍

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