記事・レポート

大人のための読書論

~書物語り、ブックトークより~

カフェブレイクブックトーク
更新日 : 2016年02月10日 (水)

第7章 ブックガイド(2)



 
澁川雅俊: それらの本に対して現代日本人のライフサイクルの一区切りを迎えた、‘ふつう’の人びとの日常を‘遊び化’して、機嫌良く軽やかに、伸びやかに生きる老後の心構えを築くための古典名著読書を薦めているのが『50歳からの名著入門』〔斎藤孝〕です。『奧の細道』と『平家物語』は村上の本と重なっていますが、少し違った視点から100点余りが、それぞれの‘さわり’の一文を交えながら、紹介されています。たとえば「人生の達人の声が聞こえる」兼行の『徒然草』、「まじめに遊ぶ」ことを勧めるホイジンガーの『ホモ・ルーデンス(人類文化と遊戯)』、「翳りを愛して生きる」潤一郎の『陰影礼賛』、「ゆったり、美的な生活に目覚める」漱石の『草枕』、「自然の中で自分を取り戻す」ソローの『ウォールデン(森の生活)』などなどです。



 日本の古典名著については『日本の書物』〔紀田順一郎著、宮田雅之画〕があります。これには古代の『古事記』から幕末の咸臨丸での『航米日録』までの82点の古典名著の成り立ち、特色、日本文化史上の重要性などが解説されています。取り上げられた一点々々に、「刀勢画」と呼ばれる独自の切り絵を確立し、世界の現代画家の中から日本人として初めて国連公認画家に選任されるなどの名声を博した宮田雅之の挿絵が飾られていますが、それを眺めると、また一段と個々の古典が愛おしく思われます。



 必ずしも古典名著ではありませんが、副題に「14歳の世渡り術」とあるように『ほかの誰も薦めなかったとしても今のうちに読んでおくべきだと思う本を紹介します。』〔河出書房新社〕も一連の本です。推薦者は角田光代、佐藤優、中江有里、村上陽一郎など、このブックトークで挙げられている人物を含め、作家や評論家や文筆家や学者などで30名です。その一人ひとりがそれぞれの‘読むなら、いまでしょ!’本をヤングアダルトに薦めている珍しいスタイルのブックガイドです。選ばれている本は話題性の豊かな本が多く、一見推薦者と推薦本とのミスマッチが面白いし、そのちぐはぐさを考えるのも興味深いものがあります。たとえば過日なくなった横丁の哲学者木田元が「波瀾万丈の痛快な小説を楽しもう」と吉川英治の『宮本武蔵』を挙げています。またヤングアダルト向けの典型的なブックガイドに『本へのとびら』〔宮崎駿〕があります。著者が自らの少年時代と、長じてからアニメーション監督としての作品に影響を与えた名作を『岩波少年文庫』の中の50点を選んで解説を加えています。映像作家らしく、これらの作品に掲載されている挿絵の魅力について、とりわけ熱く語っているのが印象的です。


関連書籍

50歳からの名著入門

斎藤孝
海竜社

日本の書物

紀田順一郎【著】宮田雅之【画】
勉誠出版

ほかの誰も薦めなかったとしても今のうちに読んでおくべきだと思う本を紹介します。

雨宮処凛,新井紀子,石原千秋,上野千鶴子,大澤真幸【ほか著】
河出書房新社

本へのとびら—岩波少年文庫を語る

宮崎駿
岩波書店

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