記事・レポート
日本発「無印良品」から世界の「MUJI」へ
~ケロッグ経営大学院 モーニングセッションより
地球規模で「消費の未来」を見通す
更新日 : 2015年10月21日
(水)
第7章 グローバル人材を育てる仕組み

無印良品の人材育成
鈴木啓: 当社では、会長を務める松井忠三が人事畑出身ということもあり、人材育成については早くから仕組みづくりに着手してきました。
例えば、異動・配置を検討する「人材委員会」は、年に一度、課長級以上の全スタッフが集まり、次世代リーダー育成プランを検討します。その上にある人材育成委員会では、全社・各部門で行う人材育成のための研修プログラムを計画しています。どの人材に、どのような経験を提供し、どのような点をポイントに成長を促していくのか。育成の結果を定期異動に反映させることで、全社最適を図ると共に、適材適所の人材配置を行っています。
その際に用いているのが「ファイブボックス」という評価ツールです。米国のGEが考案した「ナインブロック」に、ウォルマートが改良を加えたものですが、さらに当社向けにアレンジしています。横軸に潜在能力、縦軸にパフォーマンスを置き、双方の高低に合わせて5つのボックスがあり、この評価を踏まえ、次代の経営を担う可能性のある人材を見極めています。
一方、グローバル人材の育成については、2007年に米国第1号店を出店した際にスタートした「公募制研修」があります。海外に出店する際、社内で希望者を募って選抜し、現地での立ち上げに携わってもらうもので、毎年1、2名を派遣しています。
海外課長研修は2011年から始まった制度で、現職の課長について海外の現地法人で3カ月間研修してもらいます。その際は、自分なりの目標を設けてもらいます。例えば、私のチームの課長は中国の店舗に研修に行き、ステーショナリーに関する新規取引先の開拓、現地の最新ニーズに適う商品企画などについて具体的なテーマを設けていました。
課長が抜けてしまった国内のチームでは、代わりのスタッフは補充しません。課長不在の状態で何とか仕事を回さなければならないため、課長の成長と同時に、その部下の成長も促すことができる制度となっています。
海外においては、積極的に現地の人材を幹部に登用しています。優秀な人材については、東京本社に年間80名以上を受け入れて育てています。海外人材の新規採用についても、留学生を中心に積極的に受け入れています。2011年から現在まで、本社新卒採用の約2割が海外出身の人材です。また、海外の場合、文化や商習慣、法律も日本とはまったく異なるため、法律や会計など専門性の高い業務では現地での中途採用も行っています。
多様な人材を受け入れる上では、我々の考え方やビジョンを共有してもらうことも大切になります。例えば、『MUJIGRAM』(ムジグラム)という、社員やパート・アルバイトの方々が活用する店舗運営に関する内容を網羅したマニュアルがあります。すべての内容は無印良品のコンセプトに基づいて書かれており、行動の目的や意図まで明確に説明しています。これは業務別に全13冊で構成され、総ページ数は2,000ページありますが、スタッフの意見を積極的に取り入れながら毎月更新しています。
さらに、半年に1回、世界中から幹部を集めて商品に関する展示会を行っています。従来は世界中の幹部が一堂に会する仕組みがなかったため、私が商品企画部門に異動した際に始めてもらいました。東京本社にすべての関係者を集め、「皆さんはMUJI Global familyの一員だ」と語りかけています。
該当講座

日本発「無印良品」から世界の「MUJI」へ ~MUJIのグローバル展開に学ぶ~
鈴木 啓(株式会社 良品計画 取締役・執行役員/生活雑貨部長)8年半にわたる海外事業の第一線でのご経験を交えながら、良品計画のグローバル展開についてご紹介いただきます。
日本発「無印良品」から世界の「MUJI」へ
~ケロッグ経営大学院 モーニングセッションより
インデックス
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第1章 消費社会に対するアンチテーゼ
2015年10月07日 (水)
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第2章 「わけあって、安い」に込めた想い
2015年10月07日 (水)
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第3章 「木・金・土」でつくられた第1号店
2015年10月07日 (水)
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第4章 海外第1号店はロンドンに
2015年10月14日 (水)
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第5章 日本から世界の「MUJI」へ
2015年10月14日 (水)
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第6章 欧州で感じた日本との違い
2015年10月14日 (水)
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第7章 グローバル人材を育てる仕組み
2015年10月21日 (水)
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第8章 なぜ、グローバルを目指すのか?
2015年10月21日 (水)
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第9章 「商いを通じた社会貢献」を世界規模で
2015年10月21日 (水)
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