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ハコモノ行政は、デザインで変えられる

建築家・谷尻誠と「ONOMICHI U2」の出会い

更新日 : 2015年09月09日 (水)

第3章 建築家・谷尻誠が考えていること

谷尻誠(建築家/Suppose design office 代表)
谷尻誠(建築家/Suppose design office 代表)

 
問題を疑う、当たり前を疑う

高橋俊宏: 日本初のサイクリスト向け複合施設「ONOMICHI U2」。その設計を手掛けられたのが建築家の谷尻誠さんです。あらためて、自己紹介をお願いできますか?

谷尻誠: 僕は広島県出身で、建築事務所勤務を経て、2000年にSUPPOSE DESIGN OFFICEを広島で設立しました。現在は広島を中心としつつ、東京でも活動しています。設立当初は住宅や小さな店舗の設計が中心でしたが、最近は「ONOMICHI U2」のような商業施設のほか、ランドスケープ、リノベーションやコンバージョン、プロダクトデザイン、インスタレーションアートなど、手掛けるプロジェクトは様々な領域に広がっています。

まずは、僕が普段から考えていることを少しご紹介します。

設計の仕事は、「問題と答え」を考えることに尽きます。設計を依頼される方は、必ず何らかの問題を抱えているからです。どのような人が、どのような状況で、どのように使うのか。それは千差万別であるため、考え得る答えは数学のように1つではありません。また、依頼者から提示された問題が、「本当の問題」ではないことも往々にしてあります。そのため、常に「問題そのものを疑う」ことから発想をスタートさせています。

もう1つは、「人間の意識」のようなもの。世の中には「これが当たり前」と言われるものがたくさんあります。誰もが当たり前だと言っているため、自分もそう思いがちです。しかし、何事も最初から当たり前ではなかったはずです。固定観念を取り払い、視野を自由に広げる意味でも、目の前にある当たり前を一度疑ってみることが大切だと考えています。

それは誰にとっても当たり前なのか? いつ当たり前になったのか? 例えば、なぜ、住宅には間取りが必要なのか? そもそも、住宅とは何なのか? 誰もが親しんでいる行為や状況の中にこそ、新しい価値につながる要素が隠れているように思います。

もう1つは、「違和感」です。人は自分なりの基準をもとに、ある程度の予測を持ちながら、ものを捉えています。例えば、見るからに重そうな石を持ち上げてみたら、思いのほか軽かった。その時に違和感が生じます。明るい、広い、軽い、高いという感覚も、その人なりの基準をもとに判断している。それは常識、既成概念と言い換えられるかもしれません。

例えば、ごく普通の駐車場に豪華なシャンデリアが飾られていたら、最初は「なぜ?」と違和感を覚えるはずです。シャンデリアは居室にあるものと思い込んでいるからです。しかし、中には「これは新しい!」と思う人も少なからずいるかもしれません。我々の中にある常識や既成概念がほんの少し破られた瞬間、驚きや感動といった良い意味での違和感が生まれ、視点がガラッと変わる。そのようなことを常に意識しています。



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