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ハコモノ行政は、デザインで変えられる

建築家・谷尻誠と「ONOMICHI U2」の出会い

更新日 : 2015年09月09日 (水)

第2章 「ディスカバーリンクせとうち」のプロジェクト

出原昌直(株式会社ディスカバーリンクせとうち 代表取締役社長)
出原昌直(株式会社ディスカバーリンクせとうち 代表取締役社長)

 
まちの魅力を再発見し、未来につなぐ

高橋俊宏: 「ONOMICHI U2」につきましては、後ほど谷尻さんを交えて詳しくご紹介しますが、まずは現在、ディスカバーリンクせとうちが手掛けるプロジェクトについてご紹介いただけますか?

出原昌直: この社名には、まちに眠っている魅力を“再発見”し、それを次の世代に“つなぐ”という思いを込めています。その思いのもと、最初に手掛けたのが、「せとうち 湊のやど」です。尾道の名所・千光寺に続く坂道の途中にある、和洋の古民家をリノベーションした宿泊施設です。

1つは「島居邸(しまずいてい)洋館」。昭和初期に建てられた洋館で、外観は昭和モダンの面影を色濃く残しつつ、内部はくつろぎを感じさせる現代風のしつらえとなっています。デザインは、私の中学校の後輩であり、菊竹清訓建築設計事務所で10年間修業した後に独立した建築家・桐谷昌寛さんが手掛けてくれました。

もう1つは「出雲屋敷」です。かつては、出雲国松江藩のお役人が交易の際に立ち寄る出張所だったそうです。茶室や月見台など、古き良き日本文化を活かしたデザインとなっています。こちらは数寄屋造りの第一人者であり、京都工芸繊維大学名誉教授の中村昌生先生にお願いしました。尾道の古民家を次世代に受け継ぎたいとご依頼したところ、「ぜひ、やらせてほしい」と快諾いただきました。

共に宿泊のみのご提供で、食事のサービスはありません。地元の名店からの配達、瀬戸内の新鮮な食材をもとに備え付けのキッチンで腕を振るう、あるいは、尾道の街をゆっくりと散策しながらお店を選ぶなど、楽しみ方はお客様にお任せしています。

2つ目は「尾道デニムプロジェクト」です。尾道を含む備後地方は、世界有数のデニムの産地です。この伝統産業を「尾道デニム」として発信しようと、デニムデザイナー林芳亨氏とともに、尾道で働く270名に協力いただいたプロジェクトです。

1人につき2本のデニムを無償で提供して履いてもらい、週に1度回収して洗い、再び配布する。それを1年間続けました。最終的に回収した540本のデニムは、1本ごとに尾道の人々の物語が刻まれた、まさに一点物のリアル・ユーズド・デニムです。その後、地元の商店街にお店を出し、尾道デニムというブランドで販売しました。現在は全国での展示販売など、次のフェーズに進んでいます。

3つ目は、「尾道自由大学」です。東京で新しい大人の学び場として多彩な活動を展開する「自由大学」と連携したプロジェクトです。以前、その授業を拝見したところ、先生も学生も自由に学び合う風景に一目惚れしてしまい、同校を運営する株式会社スクーリング・パッドさんに「尾道でもやりたい!」とお願いし、実現しました。2013年7月に開校しましたが、現在は広島近辺だけでなく、東京や大阪からも講座を聴きに来られる方がいます。

4つ目は、「鞆 肥後屋」です。尾道市の隣、福山市鞆の浦で展開する鯛味噌の専門店です。鞘の浦は古くは万葉の時代から栄えた港で、現在も日本で唯一、江戸時代の港の風情が完全な形で残されています。最近では『崖の上のポニョ』の舞台になったことで脚光を浴びています。そのまちの一角に、江戸後期、薬草酒をつくっていた古い空き家がありました。それを活用し、かつて鞆の浦の名産だった鯛味噌の復活にチャレンジしました。現在は、地元で獲れた真鯛を、備後府中味噌とみりん、酒、醤油などで煮込んだ、こだわりの鯛味噌を販売しています。

このほか、備後畳表や備後絣など地元の伝統技術に光を当てるプロジェクトなど、「まちのため」を合い言葉に、地域を巻き込みながら様々な活動に取り組んでいます。

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六本木アートカレッジ ハコモノ行政はデザインで変えられる
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