記事・レポート

六本木アートカレッジ・オープニングセッション
アートとスポーツの不思議な関係

競争の向こう側にあるもの:為末大×竹中平蔵

更新日 : 2015年07月29日 (水)

第6章 スポーツにも「目利き」の文化を


 
見抜く人、育てる人への評価

竹中平蔵: 私は2020年の東京オリンピック・パラリンピックこそ、スポーツを取り巻く様々な課題を根本から解決できるチャンスだと考えています。この点について、為末さんとしてご希望やお考えはありますか?

為末大: 1つは、「目利き」のような文化が生まれ、根づいてほしいと思います。以前、AKB48のファンと話した時、面白いと思ったことがあります。彼らは、いわゆる自分の“推しメン”に対して、「彼女のことは誰も注目していない頃から知っていた。俺が最初に見つけたんだ!」と誇らしく語っていました。

先のたとえが適当かどうかは分かりませんが(笑)、このような「目利き」のような文化を、スポーツやアートの世界にも取り入れたら面白いと感じています。

特にスポーツ界では、どのような分野のスーパースターにも、必ず才能の片鱗を見抜き、それを伸ばそうとした人がいると思います。しかし、現状では選手がオリンピックでメダルを獲ると、直接の担当コーチは表彰されても、その選手の成長に大きく貢献したであろう小・中学校時代のコーチまでは表彰されません。

こうした人達を評価するシステムができれば、「見抜く」「育てる」ことに対する社会的な認知が広がり、一般の方々のスポーツを見る目も大きく変わっていくはずだと考えています。さらに期待するのは、そこから経済的にも良い流れが生まれ、スポーツ、アート双方の活性化につながっていくことです。

竹中平蔵: なるほど。そのシステムはぜひ取り入れたいですね。水泳の北島康介選手は東京開催が決まった時、「これをきっかけに、ひとりでも多くの国民にスポーツに親しんでほしい」と答えていました。例えば、地域のスポーツクラブに参加する、スポーツ観戦に出掛ける、スポーツ大会にボランティアとして参加する。たとえ小さくとも、我々一人ひとりがアクションを起こすことが、とても重要になると思います。

また、2015年のダボス会議では、同会議を主催する世界経済フォーラムのクラウス・シュワブ会長と下村博文・文部科学大臣との間で、2016年秋に日本でスポーツ・文化に関する世界フォーラムを開くという覚書が交わされました。言うなれば、「スポーツ・文化版」のダボス会議です。

2020年の東京オリンピック・パラリンピックは、まさに従来の仕組みを変える絶好のチャンスです。スポーツ・文化版ダボス会議のような国家レベルのアクションとともに、一人ひとりの小さなアクションを通じて、ぜひ日本を変えていきましょう。


該当講座


六本木アートカレッジ 【オープニングトーク】 スポーツはアートか? ~“美しく走る”ということ~
六本木アートカレッジ 【オープニングトーク】 スポーツはアートか? ~“美しく走る”ということ~

スポーツには、勝敗が付きものですが、芸術性も重要な要素です。
「競争」と「美しさ」は共存するのか?今までとは違う視点でスポーツと
アートを読み解きます。


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