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Hack the Body~障がいを「可能性」に変える

遠藤謙がつくる、人間を進化させる義足

更新日 : 2015年04月15日 (水)

第4章 途上国の人々に安価な義足を


 
義足を欲する人は途上国にいる

遠藤謙: 日本で一般的に使われている義足は、1つ当たり数十万円単位。僕がMITで手掛けたロボット義足は、数百万円単位でした。現実的に考えれば、こうしたものを途上国の人達が購入することは難しいと思います。僕はMITで研究を続ける中で、「自分のつくった義足は、どれだけの人の手に渡るのか?」という疑問を抱えていました。

実は、足を失った人々の半数以上は途上国にいます。さらに、その半数以上は都市部ではなく、郊外や地方の貧しい農村部に暮らしています。足を失った理由は、戦争や紛争、それらの負の遺産である地雷、環境の未整備から起こる感染症や交通事故など、様々です。足を失えば働くことが難しくなります。そのため、都市部では物乞いやゴミ集め、農村部では農作業もできず、一日中家で過ごすしかない。ますます貧困が進み、時には人権を無視した扱いを受けることもあります。

例えば、インドの義足ユーザーは350万人とされていますが、潜在的なユーザーまで含めれば1,000万人を超えると言います。義足が高額すぎて買えない、あるいは、手に入れる方法が分からないため、すべての人に行き渡らないのです。

「ジャイプールフット」との出会い

遠藤謙: 2007年、インドを訪れたMITの友人が「ジャイプールフット」(Jaipur foot)という義足を持ち帰りました。現地のNGOが1970年代から製造し、無償で提供していたものです。ジャイプールフットの提供は寄付で賄われているため、現地で入手できる安価な材料でつくられ、1つ当たりのコストは2,000~3,000円程度。提供場所となるクリニックには、様々な境遇の人が毎日100人以上もやってきたそうです。

初めてこの義足を目にした時、長く抱えていた疑問の“答え”を見つけたように思いました。同時に「僕なら同じコストでもっと良い義足がつくれる」とも感じました。

そこで僕は、MITのD-Labを訪れました。D-Labは、発明家のエイミー・スミス(Amy Smith)教授により、2002年に設立されたコースです。そのミッションは、適正技術と持続可能性のあるソリューションを通じて、途上国の人々の生活の質を向上し、社会課題を解決すること。先頭にあるDは“Development through Dialogue, Design and Dissemination”(対話を通じた開発、デザイン、普及)を意味しています。

D-Labの合い言葉は、“Community involvement”(現地の人々を巻き込む)です。単純にMITで安い義足をつくり、そのまま提供しても意味はありません。現地の文化や宗教などを含め、彼らの生活にマッチした形態でなければ、本当に喜ばれる義足にはならないからです。同じく、単純にモノを提供するだけでは、コミュニティの発展や社会課題の根本的な解決にはつながりません。

現地の人々と対話を重ね、一緒に試行錯誤しながら、モノづくりを進めていく。さらに、現地で容易に入手できる安価な材料を使い、彼ら自身に様々な製造技術を身につけてもらい、持続可能な形で販売に至るまでのビジネスモデルを構築していく。こうしたCo-creation(共創)によるボトムアップのアプローチを通じて、途上国の様々な社会課題を解決していくことがD-Labの特長です。2008年夏、僕はD-Labのメンバーとしてインドを訪れ、義足の開発に取り組み始めました。


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